奇襲!!オーストラリアン・フォーメーション☆
なかなか、暖かくなりませんね。でも、お花見が、長くできるから良いかな・・・・・?
長い前置きでしたが、ついに本日のメインイベント、四季・冬木組vs夏目・秋原組のミックスダブルスが始まりました。ちなみにミックスダブルスとは、男女混合のダブルスの試合を指します。
「サーブ権はアタシ達が取ったから、巳波くんからのサーブでお願いね!!」
大抵、ミックスダブルスでは男子選手からのサーブがほとんどです。
その理由は、早くサーブを打つ順番の人ほど、自然とサーブを打つ回数が多くなるからです。
・・・・もっとも男子選手の僕が、女子選手の紅葉さんよりもサーブの力があるとは言えないのですが・・・。
ともあれ、僕はサーブを打つポジションに立ちました。
観衆から若干のどよめきが起こりました。
それもそのはず・・・・。
「オーストラリアン・フォーメーションだ!!」
誰かが言いました。
そうです。紅葉さんとの作戦会議通りに僕たちは、オーストラリアン・フォーメーションを布いたのでした。
この陣形になじみのない方は、多くいることでしょう・・・。
なぜなら、このオーストラリアン・フォーメーションは、知名度に反して実際に使っている選手はほとんどいないのですから・・・・。
このオーストラリアンフォーメーションは、サーブを打つ選手と同じサイドのネット際に前衛の選手が立つ陣形です。
オーストラリアの選手が始めて用いたのでこの名がついたそうです。
この陣形の大きな弱点は、反対側のサイドがガラ空きになることです。
この陣形の戦い方としては、コート半面が空いてしまいますので、サーブ打つ選手も前衛の選手もセンター寄りに立つことで、まずは相手からのクロスのショットを打ちにくくします。
サーブを打つ選手は、サーブを打ったらすぐにガラ空きの逆サイドに移動します。
相手からのリターンがクロスに返ってきたら前衛の選手が決めるのが狙いです。
クロスに返ってきたリターンには強いのですが、それ以外のコースは難易度の高い陣形です。
オーストラリアン・フォーメーションはメリットはありますが、デメリットが目立ちます。
しかし、なぜ紅葉さんがこの陣形を提案したのか、その理由を僕はこの後に知ることとなります。
「ようし!!!」
僕は開き直って、思いっきりにフラットのサーブを折夫さんのバックサイドにたたき込みました。
折尾さんの深いリターンがクロスに帰ってきました。
ーーーーーーーーーーーーーーバシッ!!!!!!!!!!!!!!!ーーーーーーーーーーーーー
紅葉さんのスマッシュが綺麗に決まりました。
紅葉さんは、簡単に決めたように見えますが、決して容易な状況ではありませんでした。
折夫さんのリターンは深い弾道で、そうそう攻撃されるような甘いものとは言えません。
それでも紅葉さんは、まるでバレーのバックアタックの如く攻撃をたたき込んだのです。
僕は納得しました。
この紅葉さんの前衛の働きなら、オーストラリアン・フォーメーションの意味は理解できます。
僕は、紅葉さんが並以上の選手であることを改めて思い知らされました。
紅葉さんは、チラッと僕の方を振り返り、軽くうなずきました。
彼女の僕に対する、オッケーの確認のサインでしょう・・・・。
しかし、読者の皆様・・・・。
ここで、事件が起こるのです・・・・・。
それは・・・・。
「そうか・・・・。水色か・・・・。」
突拍子もなく、四季さんが呟いきました。
「へ?」
先ほどスマッシュを決めた紅葉さんは、キョトンとしています。
「いや、紅葉の袖口からブラがな・・・。」
・・・・・・どうやら、四季さんは先ほどスマッシュを決めた紅葉さんの振り上げた右腕の袖口から、ブラジャーをのぞき込んだようでした。
「水色・・・・?」
「み、みずいろ?」
ギャラリーから、ヒソヒソと声が聞こえてきました。
僕に背中を見せている紅葉さんはうつむいて、肩を小刻みに震わせています。
(紅葉さん・・・・・・・!?)
紅葉さんが動き出しました。
紅葉さんは顔を真っ赤にさせて、ネットの向こうにいる折夫さんの向かって、ツカツカと早足で歩み寄って行きました。
「人のどこをみてんのよ!!このエロ魔神!!」
紅葉さんは、ガシッと折夫さんの胸ぐらを掴みました。
そして、両腕の力で折夫さんを持ち上げました。
やはり、紅葉さんは腕っ節が強いようでした。
紅葉さんよりも背の低い折夫さんは、両足ともつま先立ちです。
「ぐ・・・、ぐぐるじい・・・・・・・」
四季さんは顔を引きつらせ、今にも泡を吹き出すのではないかという苦しそうな形相でした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーピッピピピーーーーーーーーーーーーーー!!
ホイッスルが鳴り響きました。
そのホイッスルの主である日向コーチが、紅葉さんと折夫さんの間に割って入りました。
そして日向コーチは、紅葉さんと折夫さんの襟首をつかみ、説教部屋(?)に連行していきました。
(なんだか、体育教師に注意されている中学生みたいだなあ・・・。)
何故か、僕はホッとした気分になりました。
「私、もう帰ろうかな・・・。」
雪乃さんが呆れ気味に、ボソっと呟いていたのを僕は聞き逃しませんでした・・・・。




