もみじ100%
今回は100%で書ききりました。
今すぐでも、試合に入っていきたい勢いでしたが、そうは問屋が卸さないでした。
試合前の儀式は、トスだけではないのでした。
或意味、必要不可欠な助走が存在するのでした。
そう、それは・・・・・・
「巳波くんは、リターンはバックサイドで良いよね!!」
「は、はあ・・・・。」
紅葉さんが半ば強制的に、リターンのポジションを決めてきました。
ちなみに、テニスでいうフォアサイドは、自分のコートでは右半分のエリアを意味します。
反対に、バックサイドは自分のコートの左半分です。
まあ、僕はバックハンドのストロークは得意であるので、紅葉さんの強制は特に問題は無いのでしたが。
紅葉さんは、リターンの時に僕たちがフォア・バックのどちらでするのかを決めていたのです。
残る試合前の儀式は、サーブ練習なのです。
各々で、サーブをフォア・バックそれぞれ2球ずつ練習するのです。(ちなみにリターンは対戦相手が行います。)
つまり試合直前に、サーブが打てるのと同時に、対戦相手のサーブをリターンできるのです。
数少ない対戦相手の情報を得るチャンスなのです・・・・・。
ただし、裏を返せば対戦相手に十分な手の内をみせない、とも言えます。
サーブは、いくら速いサーブでも凄い変化のサーブでも何球も繰り返すと慣れてきます。
だから、対戦相手とのサーブ練習では、本気で打たずに温存することが定石です。
だから大概の選手は、肩慣らしな感じでサーブ練習は行うでしょう。
下手に全力で、サーブを打つと自分自身の首を絞めかねません。
サーブ練習が始まりました。
僕は最初、雪野さんのサーブをリターンしました。
綺麗な軌道のフラットサーブが放たれてきました。
やはり・・・・・・・・・。
僕は難なくと、その雪乃さんのサーブをリターンしました。
やはり、微妙に雪乃さんのサーブはスピード・威力とも意図的に押さえられています。
だから僕は、労せずにリターンできたのです。
雪乃さんも、手の内は見せてくれないのですか・・・・。
隣の紅葉さんも、折夫さんのスピンサーブを上手くリターンできているようでした。
折尾さんの、エグいスピンサーブでも本気で打たないと、紅葉さんのはリターンされてしまうのでした。
続いて、僕は折夫さんのサーブをリターンする番になりました。
折尾さんの、変化するサーブが飛んできました。
僕は、何とか折夫さんのスピンサーブをリターンすることに成功しました。
見た目は、凄い変化をしているのですが、やはりスピード押さえられています。
しかも、おそらく折夫さんのスピンサーブは、本気を出すともっとハイレベルの変化を生み出すと思います。
(うむむ・・・・・。折尾さんの底知れぬスペックが、試合の時に解放されるのか?否か?気になる。)
折夫さんと、雪乃さんは、おそらく肩慣らし程度の力しかだしていない。
そして・・・・、そして僕たちがサーブを練習する番が巡ってきました。
僕もそれなりのパワーセーブで、サーブを打つことにしましょう。
それが無難な選択です。
しかし・・・・・・・。
「さーあ!!!やっとアタシのスーパーサーブのお披露目ね!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
も、紅葉さんは、なにを言っているのでしょうか・・・・・。
まるで自分自身の、特技を披露するかのような勢いが感じられます。
最初は、僕が雪乃さんに対して、紅葉さんが折夫さんに対してサーブを打つことになりました。
僕は正直、隣の紅葉さんが気になって仕方がありません。
「オ・リオ・・・・・・。オ・リオ・・・・・。」
なにやら紅葉さんがブツブツ言っています。
僕が少しサーブを打つのを躊躇していると、紅葉さんが早々とスライスサーブを放ちました。
「や、やったあ・・・・!!!」
紅葉さんのスライスサーブを折夫さんはリターンに失敗したのです。
僕は、少し遅れてフラットサーブを打ちました。
雪乃さんは、お約束のごとくリターンしてきました。
「ああー!!フォールトしちゃったあ・・・!!!」
紅葉さんは、折夫さんに対する2球目のサーブは、サービスエリアをはずれてフォールトになりました。
フォールトとは、サーブが不成立で失敗となることです。
僕は、2球目のサーブも無難に打ち、雪乃さんも無難にリターンしました。
そして最後は、今度は僕が折夫さん、紅葉さんが雪乃さんにサーブ練習する番です。
僕は、折夫さんに対してのサーブも無難にこなし、折夫さんも難なくリターンしました。
しかし、紅葉さんは・・・・。
「雪乃!!まいったかー!!」
紅葉さんは、右腕を高々と挙げ、勝ち誇っていました。
おそらく、紅葉さん100%のサーブを雪乃さんに放ったのでしょう・・・。
「おおー!!女性であれだけの切れのある、スライスサーブが打てるのか!!」
「凄い!!秋原コーチのあんなサーブみたのはじめて!」
周りのギャラリーの反応は、紅葉さんのサーブの出し惜しみのなさを物語っていました。
「えっへん・・・。」
紅葉さんは、右手の人差し指で鼻を擦り、とても得意げでした。
対戦相手に、手の内を見せてもいいのでしょうか・・・・・。
まあ、そこが紅葉さんらしいところなのですが。




