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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
48/312

もみじ100%

今回は100%で書ききりました。

 今すぐでも、試合に入っていきたい勢いでしたが、そうは問屋が卸さないでした。

 試合前の儀式は、トスだけではないのでした。

 或意味、必要不可欠な助走が存在するのでした。

 そう、それは・・・・・・


 「巳波くんは、リターンはバックサイドで良いよね!!」

 「は、はあ・・・・。」

 紅葉さんが半ば強制的に、リターンのポジションを決めてきました。

 ちなみに、テニスでいうフォアサイドは、自分のコートでは右半分のエリアを意味します。

 反対に、バックサイドは自分のコートの左半分です。

 まあ、僕はバックハンドのストロークは得意であるので、紅葉さんの強制は特に問題は無いのでしたが。

 紅葉さんは、リターンの時に僕たちがフォア・バックのどちらでするのかを決めていたのです。

 

 残る試合前の儀式は、サーブ練習なのです。 

 各々で、サーブをフォア・バックそれぞれ2球ずつ練習するのです。(ちなみにリターンは対戦相手が行います。)

 つまり試合直前に、サーブが打てるのと同時に、対戦相手のサーブをリターンできるのです。

 数少ない対戦相手の情報を得るチャンスなのです・・・・・。

 ただし、裏を返せば対戦相手に十分な手の内をみせない、とも言えます。

 サーブは、いくら速いサーブでも凄い変化のサーブでも何球も繰り返すと慣れてきます。

 だから、対戦相手とのサーブ練習では、本気で打たずに温存することが定石です。

 だから大概の選手は、肩慣らしな感じでサーブ練習は行うでしょう。

 下手に全力で、サーブを打つと自分自身の首を絞めかねません。


 サーブ練習が始まりました。

 僕は最初、雪野さんのサーブをリターンしました。

 綺麗な軌道のフラットサーブが放たれてきました。

 やはり・・・・・・・・・。

 僕は難なくと、その雪乃さんのサーブをリターンしました。

 やはり、微妙に雪乃さんのサーブはスピード・威力とも意図的に押さえられています。

 だから僕は、労せずにリターンできたのです。

 雪乃さんも、手の内は見せてくれないのですか・・・・。

 

 隣の紅葉さんも、折夫さんのスピンサーブを上手くリターンできているようでした。

 折尾さんの、エグいスピンサーブでも本気で打たないと、紅葉さんのはリターンされてしまうのでした。


 続いて、僕は折夫さんのサーブをリターンする番になりました。

 折尾さんの、変化するサーブが飛んできました。

 僕は、何とか折夫さんのスピンサーブをリターンすることに成功しました。

 見た目は、凄い変化をしているのですが、やはりスピード押さえられています。

 しかも、おそらく折夫さんのスピンサーブは、本気を出すともっとハイレベルの変化を生み出すと思います。

 (うむむ・・・・・。折尾さんの底知れぬスペックが、試合の時に解放されるのか?否か?気になる。)

 

 折夫さんと、雪乃さんは、おそらく肩慣らし程度の力しかだしていない。

 そして・・・・、そして僕たちがサーブを練習する番が巡ってきました。

 僕もそれなりのパワーセーブで、サーブを打つことにしましょう。

 それが無難な選択です。

 しかし・・・・・・・。

 

 「さーあ!!!やっとアタシのスーパーサーブのお披露目ね!!」

 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 も、紅葉さんは、なにを言っているのでしょうか・・・・・。

 まるで自分自身の、特技を披露するかのような勢いが感じられます。


 最初は、僕が雪乃さんに対して、紅葉さんが折夫さんに対してサーブを打つことになりました。

 僕は正直、隣の紅葉さんが気になって仕方がありません。

 「オ・リオ・・・・・・。オ・リオ・・・・・。」

 なにやら紅葉さんがブツブツ言っています。

 僕が少しサーブを打つのを躊躇していると、紅葉さんが早々とスライスサーブを放ちました。


 「や、やったあ・・・・!!!」

 紅葉さんのスライスサーブを折夫さんはリターンに失敗したのです。

 僕は、少し遅れてフラットサーブを打ちました。

 雪乃さんは、お約束のごとくリターンしてきました。


 「ああー!!フォールトしちゃったあ・・・!!!」

 紅葉さんは、折夫さんに対する2球目のサーブは、サービスエリアをはずれてフォールトになりました。

 フォールトとは、サーブが不成立で失敗となることです。

 僕は、2球目のサーブも無難に打ち、雪乃さんも無難にリターンしました。


 そして最後は、今度は僕が折夫さん、紅葉さんが雪乃さんにサーブ練習する番です。

 僕は、折夫さんに対してのサーブも無難にこなし、折夫さんも難なくリターンしました。

 しかし、紅葉さんは・・・・。


 「雪乃!!まいったかー!!」

 紅葉さんは、右腕を高々と挙げ、勝ち誇っていました。

 おそらく、紅葉さん100%のサーブを雪乃さんに放ったのでしょう・・・。

 

 「おおー!!女性であれだけの切れのある、スライスサーブが打てるのか!!」

 「凄い!!秋原コーチのあんなサーブみたのはじめて!」

 周りのギャラリーの反応は、紅葉さんのサーブの出し惜しみのなさを物語っていました。


 「えっへん・・・。」

 紅葉さんは、右手の人差し指で鼻を擦り、とても得意げでした。


 対戦相手に、手の内を見せてもいいのでしょうか・・・・・。

 まあ、そこが紅葉さんらしいところなのですが。


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