グリグリ折夫さん
桜さんに励まされた僕ですが、ちょっとサーブにたいして自信がないです。
というのも僕の得意とするサーブは、フラットサーブ(※注釈)です。
※フラットサーブ・・・横回転の極めて少ないサーブの事。
横回転が少ないために、スピードが速いサーブとなる。
回転が少ない故に、スピードは出るのですが、まっすぐな軌道故にネットにかかりやすいです。
スライスサーブ(※注釈)や、スピンサーブ(※注釈)などの回転をかけるサーブは、弾の弾道は落ちて気安いのでネットを越してなおかつサービスコート(※注釈)に入りやすい傾向にあります。
※スライスサーブ・・・横回転のかかっているサーブ。
※スピンサーブ・・・縦回転のかかっているサーブ。
※サービスコート・・・打ったサーブが入ったと見なされるエリア(領域)。
僕が思うに、この的当てはスピードを競うものではありません。
つまりサーブが、サービスコートに入りやすいサーブが有利なのではないかという結論に達したのです。
だから今回は、フラットサーブを得意とする僕には不利ではないのかと思うのです。
しかし桜さんは、先ほど異なる見解をしました。
その根拠は何なのでしょうか?
(うーん。桜さんはそれは何であるのか、教えてくれなかったなあ・・・。)
僕は悩んだのですが、仕方がありません・・・・!!
とにかく、やってみよう!!と自分自身に言い聞かせました。
結果が全てを物語るんじゃないでしょうか。
サーブの的当てイベントが始まりました。
スクール生の腕に覚えがある方々から、始まりました。
ほとんどの方のサーブの球種はスライスでした。
やはり比較的楽に回転のかけられる、スライスサーブが得意な人が多い様でした。
先ほどのストロークの的当てに比べて、若干ヒット率が低いように思いました。
結局、トップの成績は10球中5球でした。
僕の順番が回ってきました。
開き直ったつもりなのでしたが、やはり不安は隠しきれませんでした。
でも、やるしかありません。
僕は、自分の得意なフラットサーブで勝負します。
確率が良いからと言って、スライスサーブやスピンサーブなどの入りやすい球種を選べません。
よそ行きの球種を選んでも、良い結果が得られるとは思えません。
普段の自分で勝負する・・・・。
その結末なら僕自身も納得がいくと思うのです。
ようし、僕は自分の大得意なフラットサーブを放った。
バシンッ!!!
僕の放った、サーブが的にヒットしたのです。
(あ、当たった!!!)
僕は球にテンションが上がって、サーブを打ち続けました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「こ、こんな・・・・・。」
僕は驚愕した・・・・。
10球中7球のヒット!!!
堂々の暫定1位の成績です。
なぜなんでしょうか・・・・。
僕は、まっすぐのフラットサーブで、ただ単に的に当てることのみ・・・・・。
方向を定める以外は考えずに、サーブを放ったのです。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!
そうか、そうだったんだ!!
僕は少数派の、フラットサーブを放った。
ただ方向を定めて・・・・。
だた方向を定めたから、これだけの成績を収める事ができたのだ・・・。)
くどいですが、フラットサーブは、回転をほとんどかけずに打つサーブです。
言い方を変えれば、回転の事を考えなくても良いのです。
これは逆転の発想で、おおきなメリットです。
何故かというと、スライスサーブやスピンサーブなどの回転系のサーブは回転の度合いでコースが変わってしまうのです。
つまり回転系のサーブは、方向と回転量を考えないとコース決められないのです。
要するに、必要な要素が2つもあるのです。
これは或意味確率的に、不利なことになるのです。
的当てというピンポイントの勝負であると、フラットサーブの方が有利になるかもしれないのです。
「さあ!!全部当てちゃうぞ!!」
今度は紅葉さんのサーブの番でした。
紅葉さんの得意はスライスサーブです。
紅葉さんのスライスサーブは緩やかな軌道を描きます。
スピードもそれほど早くありません。
しかし癖のない綺麗なフォームで、入る確率の高いサーブといえます。
もっともサーブがサービスコートにはいっても、的に入らなければいけないのですが・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うーん・・・・・。悔しいなあ・・・・。」
紅葉さんの成績は10球中7球でした。
「もっと、当てる自信あったんだけどなあ・・・・。」
紅葉さんは、人差し指にラケットを乗せてクルクル回していました。
そして、フッと空中にラケットを飛ばし・・・・。
左手で、ガシッとラケットをつかみ取りました。
「おおーーーー。」
ギャラリーが紅葉さんの曲芸に、反応していました。
(紅葉さん、器用だなあ・・・・。
紅葉さん、こんなのだったら優勝したかもな・・・・。)
続いて雪乃さんの出番だった。
雪乃さんは、僕と同じくフラットサーブが得意でした。
やはり、スナイパー雪乃さん!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雪乃さんの成績は、10球中8球のヒットでした。
さすが、スナイパー・・・・・。
でも、雪乃さんは相変わらず、ポーカーフェイスでした。
この成績に満足なのか、不満なのか良く分かりません。
僕はあえて雪乃さんに、今の気持ちは聞くつもりはありません。
だって、雪乃さんは秘密主義だから・・・・・。
そして、今回のラストチャレンジャーの登場です。
四季折夫さんです。
折夫さんのサーブは、スピンサーブがメインです。
回転量がすさまじく多く、スピードはそれほどではありません。
しかし、その凄い縦の回転故に、まるで空から降ってくるのでないかというようなサーブなのです。
そう、ひと呼んで{グリグリサーブ}です。
でも、僕は思ったのです。
これほど特殊感のある凄い回転故に、的にヒットさせるのは困難なのではないかと推測できるのです。
僕は勝手に、折夫さんを心配してしまいました。
「折夫、失敗しちゃえ!!」
隣で紅葉さんが、力強く呟いていました。
(紅葉さん・・・・・・・。)
「みんな、みていろよ・・・・・!!」
そう台詞を吐いて、折夫さんはサーブを放ちました。
グリグリグリ・・・・・ゴンッ!!
(あ、当たった・・・・。)
初球から見事に、折夫さんのサーブは的に当たりました。
そして・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なんと、折夫さんの成績は10球中9球のヒットでした。
しかも、回転の多いグリグリのスピンサーブにもかかわらずです。
抜群のコントロールでした。
(す、凄いあんな激しい変化のするサーブで、これほどのコントロールができるとは・・・・。
流石、世界レベルの男子プロだ・・・・。)
「くっそお!!はずしちまった!!!」
折夫さんは最後に、1球だけ外していたのでした。
「アタシの呪いが通じたようね・・・・・。」
紅葉さんは、一人で納得していました。
「折夫、外したわね。」
どうやら、雪乃さんは折夫さんのサーブのすごさをよく知っている様でした。
とてもすごい男です。四季折夫プロ。
そのセクハラの数々を、差し引いたとしても・・・・・・!!




