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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
41/312

グリグリ折夫さん

 桜さんに励まされた僕ですが、ちょっとサーブにたいして自信がないです。

 というのも僕の得意とするサーブは、フラットサーブ(※注釈)です。


※フラットサーブ・・・横回転の極めて少ないサーブの事。

横回転が少ないために、スピードが速いサーブとなる。


 回転が少ない故に、スピードは出るのですが、まっすぐな軌道故にネットにかかりやすいです。

 スライスサーブ(※注釈)や、スピンサーブ(※注釈)などの回転をかけるサーブは、弾の弾道は落ちて気安いのでネットを越してなおかつサービスコート(※注釈)に入りやすい傾向にあります。


 ※スライスサーブ・・・横回転のかかっているサーブ。

 ※スピンサーブ・・・縦回転のかかっているサーブ。

 ※サービスコート・・・打ったサーブが入ったと見なされるエリア(領域)。


 僕が思うに、この的当てはスピードを競うものではありません。

 つまりサーブが、サービスコートに入りやすいサーブが有利なのではないかという結論に達したのです。


 だから今回は、フラットサーブを得意とする僕には不利ではないのかと思うのです。

 しかし桜さんは、先ほど異なる見解をしました。

 その根拠は何なのでしょうか?


 (うーん。桜さんはそれは何であるのか、教えてくれなかったなあ・・・。)

 僕は悩んだのですが、仕方がありません・・・・!!

 とにかく、やってみよう!!と自分自身に言い聞かせました。

 結果が全てを物語るんじゃないでしょうか。

 

 サーブの的当てイベントが始まりました。

 スクール生の腕に覚えがある方々から、始まりました。

 ほとんどの方のサーブの球種はスライスでした。

 やはり比較的楽に回転のかけられる、スライスサーブが得意な人が多い様でした。

 先ほどのストロークの的当てに比べて、若干ヒット率が低いように思いました。

 結局、トップの成績は10球中5球でした。

 

 僕の順番が回ってきました。

 開き直ったつもりなのでしたが、やはり不安は隠しきれませんでした。

  

 でも、やるしかありません。

 僕は、自分の得意なフラットサーブで勝負します。


 確率が良いからと言って、スライスサーブやスピンサーブなどの入りやすい球種を選べません。

 よそ行きの球種を選んでも、良い結果が得られるとは思えません。

 普段の自分で勝負する・・・・。

 その結末なら僕自身も納得がいくと思うのです。 


 ようし、僕は自分の大得意なフラットサーブを放った。

 バシンッ!!!

 僕の放った、サーブが的にヒットしたのです。


 (あ、当たった!!!)

 僕は球にテンションが上がって、サーブを打ち続けました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「こ、こんな・・・・・。」

 僕は驚愕した・・・・。

 10球中7球のヒット!!!

 堂々の暫定1位の成績です。


 なぜなんでしょうか・・・・。

 僕は、まっすぐのフラットサーブで、ただ単に的に当てることのみ・・・・・。

 方向を定める以外は考えずに、サーブを放ったのです。


 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!

 そうか、そうだったんだ!!

 僕は少数派の、フラットサーブを放った。

 ただ方向を定めて・・・・。

 だた方向を定めたから、これだけの成績を収める事ができたのだ・・・。)


 くどいですが、フラットサーブは、回転をほとんどかけずに打つサーブです。

 言い方を変えれば、回転の事を考えなくても良いのです。

 これは逆転の発想で、おおきなメリットです。

 何故かというと、スライスサーブやスピンサーブなどの回転系のサーブは回転の度合いでコースが変わってしまうのです。

 つまり回転系のサーブは、方向と回転量を考えないとコース決められないのです。

 要するに、必要な要素が2つもあるのです。

 これは或意味確率的に、不利なことになるのです。

 的当てというピンポイントの勝負であると、フラットサーブの方が有利になるかもしれないのです。


 「さあ!!全部当てちゃうぞ!!」

 今度は紅葉さんのサーブの番でした。

 紅葉さんの得意はスライスサーブです。

 紅葉さんのスライスサーブは緩やかな軌道を描きます。

 スピードもそれほど早くありません。

 しかし癖のない綺麗なフォームで、入る確率の高いサーブといえます。

 もっともサーブがサービスコートにはいっても、的に入らなければいけないのですが・・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「うーん・・・・・。悔しいなあ・・・・。」

 紅葉さんの成績は10球中7球でした。

 「もっと、当てる自信あったんだけどなあ・・・・。」

 紅葉さんは、人差し指にラケットを乗せてクルクル回していました。

 そして、フッと空中にラケットを飛ばし・・・・。

 左手で、ガシッとラケットをつかみ取りました。

 「おおーーーー。」

 ギャラリーが紅葉さんの曲芸に、反応していました。

 (紅葉さん、器用だなあ・・・・。

 紅葉さん、こんなのだったら優勝したかもな・・・・。)

 

 続いて雪乃さんの出番だった。

 雪乃さんは、僕と同じくフラットサーブが得意でした。

 やはり、スナイパー雪乃さん!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 雪乃さんの成績は、10球中8球のヒットでした。

 さすが、スナイパー・・・・・。

 でも、雪乃さんは相変わらず、ポーカーフェイスでした。

 この成績に満足なのか、不満なのか良く分かりません。

 僕はあえて雪乃さんに、今の気持ちは聞くつもりはありません。

 だって、雪乃さんは秘密主義だから・・・・・。


 そして、今回のラストチャレンジャーの登場です。

 四季折夫さんです。

 折夫さんのサーブは、スピンサーブがメインです。

 回転量がすさまじく多く、スピードはそれほどではありません。

 しかし、その凄い縦の回転故に、まるで空から降ってくるのでないかというようなサーブなのです。

 そう、ひと呼んで{グリグリサーブ}です。

 でも、僕は思ったのです。

 これほど特殊感のある凄い回転故に、的にヒットさせるのは困難なのではないかと推測できるのです。

 僕は勝手に、折夫さんを心配してしまいました。


 「折夫、失敗しちゃえ!!」

 隣で紅葉さんが、力強く呟いていました。

 (紅葉さん・・・・・・・。)


 「みんな、みていろよ・・・・・!!」

 そう台詞を吐いて、折夫さんはサーブを放ちました。

 グリグリグリ・・・・・ゴンッ!!

 (あ、当たった・・・・。)

 初球から見事に、折夫さんのサーブは的に当たりました。

 そして・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 なんと、折夫さんの成績は10球中9球のヒットでした。

 しかも、回転の多いグリグリのスピンサーブにもかかわらずです。

 抜群のコントロールでした。

 

 (す、凄いあんな激しい変化のするサーブで、これほどのコントロールができるとは・・・・。

 流石、世界レベルの男子プロだ・・・・。)


 「くっそお!!はずしちまった!!!」

 折夫さんは最後に、1球だけ外していたのでした。


 「アタシの呪いが通じたようね・・・・・。」

 紅葉さんは、一人で納得していました。


 「折夫、外したわね。」

 どうやら、雪乃さんは折夫さんのサーブのすごさをよく知っている様でした。


 とてもすごい男です。四季折夫プロ。

 そのセクハラの数々を、差し引いたとしても・・・・・・!!




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