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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
39/313

スナイパー雪乃さん

 イベントは次のステージに進みました。

 今度は、的当てゲームです。

 参加希望者を募って、ストローク(※注釈)による的当てで特典を競います。

 10回のチャンスが与えられて、何回的に当てられるかで特典が決まります。


※注釈

ストローク・・・ボールをワンバウンドさせて打つプレー。


 しかも、レッドリーフテニススクールのコーチ陣も参加します。

 そして、四季折夫プロ・冬木雪乃プロも参加するのです。

 つまり僕も参加するわけで、ある意味とても緊張しています。

 これは、僕たちのプライドをかけた戦いとなるのです。

 (テニスで生計を立てている人間としては、イベントとはいえ恥ずかしい結果を残すのは屈辱です。)


 「楽しみだね!!巳波くん!」

 例によって、紅葉さんが僕に声をかけてきました。

 紅葉さんは、全く緊張した様子もありません・・・・・。

 この人はプレッシャーというものを感じないのでしょうか・・・・。

 「さあー。アタシ絶対優勝するよー。」

 紅葉さんは、テニスラケットをクルクルと回しながらご機嫌な様子でした。


 おそらく10球のチャンスがあるので、ストロークの技術のある人が優勝する可能性が高いでしょう。

 一発勝負であれば、フロックでの優勝もあり得るのですが・・・・・。


 そうこう言っているうちに、ストロークの的当てイベントが始まりました。

 腕に自信のある、スクール生がまずトップバッターでした。

 イベントの補助のスタッフが、スクール生にボールを打てるように球出しをしました。

 バン!!

 勢いのよいストロークの音がコートに響きました。

 バシン!

 放たれたボールは、的から外れ壁に当たりました。

 「くそっ!」

 参加者の男性は、的を外して悔しそうでした。

 連続で、参加者の男性はストロークが放たれました。

 結局的にヒットしたのは、一回だけでした・・・・・。

 

 (・・・・・・・!!!!!!!!!!)

 その的当ての見かけ以上の難易度の高さに、僕は驚愕しました。

 (えええー!?そんなに的に当たらないのか!?

 今の人だって、結構綺麗なフォームでストロークを打っていたのに・・・・。)

 僕の不安が、一気に増していきました。


 そして次から次へと、参加者が的当てに挑戦していきました。

 スクール生の参加者が全員打ち終わりました・・・・。

 その時点での的当ての最高記録は、10球中5球のヒットでした・・・・・。

 

 (やはり、この的当ては難易度がとても高いんだ・・・・。)

 

 そしていよいよ、レッドリーフテニススクールのスタッフと、本日のゲストが的当てに挑戦する順番になりました。

 しかも、今年入社の僕がトップバッターです。

 (ひいい・・・・・!)

 僕の緊張感が、今まさにマックスに達しようとしていました。

 そのとき・・・・・!

 

 「これは、巳波君の得意種目よ・・・・・。」

 (え・・・・!)

 いつも間にか、僕の隣に桜さんが立っていました。

 「思い出してみて・・・・。

 わたしとの堤防での、練習を・・・・。

 巳波君は、ひたすら素振りを文句の一つも言わずに続けていたよね。

 あれだけの回数を、同じフォームでスイングできるのなら、たった10回の的当てなんて平気じゃないのかな?

 単純に自分の打ちたい方向をイメージして、スイングすればいいんだよ。」

 「そ、そんな簡単にできないですよ・・・。」

 僕は、桜さんに自信のなさを隠すことができませんでした。

 「ボールはイメージ通りに、飛ぶよ・・・・」

 (えっ・・・・。)

 僕が桜さんの方を振り向いた時には、桜さんの姿はもう見えませんでした。


 僕の不安は、完全には消えていませんでした。

 しかし僕は、イメージすることにしたのです。

 僕の放つストロークが、的に当たる瞬間を・・・・。


 1球目の球出しが来ました。

 バッシッ! 

 僕は的に当たるイメージを込めて、渾身の気持ちのストロークを放ちました。

 ドカッ!

 僕の放ったストロークは、的から外れボールは壁に当たりました。

 しかし・・・・、僕は悲観しませんでした。

 なぜなら、もう少しでボールは的に当たりそうだったからです。

 (いける・・・・。同じようなスイングで調整したら、僕のストロークは的に当たる・・・・。)


 そして2球目・・・・。

 ドカッ・・・・! 

 またしても、僕のストロークは的を外しました・・・・。

 しかし・・・・、しかし・・・・僕のストロークは的に当たるという希望が生まれました。


 そして・・・3球目!

 ドンッ!!

 僕の放ったストロークは、見事に的にヒットしたのです!!

 「おおー!!」

 ギャラリーが、どよめきました。

 僕の心の内に芽生えた自信は、この瞬間に確信へと進化したのでした。


 そして・・・・。、僕のストロークの的当てのチャレンジが終了しました。

 その結果は・・・・・。

 10球中7球のヒットでした。

 勿論、これまでの参加者の中では最高記録です。

 (ほっ・・・・・・・。)

 僕は安堵感と充実感で、胸を撫で下ろしその場にへたり込みました。

 「よく頑張ったわね・・・・」

 桜さんの言葉が、僕に聞こえてきました。

 僕はその場を見渡しましたが、桜さんに姿は見えませんでした。

 (桜さん・・・。桜さんは、どうしていつも僕を励ましてくれるんだろうか・・・。)


 「よっし!!全球当てちゃうぞ!!!」

 紅葉さんの順番が回ってきました。

 紅葉さんは、やる気満々でした。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「タハハッ、難しいなあ・・・・・。」

 的当てのチャレンジを終えた紅葉さんは、自分のラケットを右肩に当てて、首をちょっとかしげていました。

 紅葉さんのストロークの的当ての結果は、10球中8球のヒットでした。

 (紅葉さんでも、2球外したんだ・・・・。)

 やはりこのイベントの難易度は、かなり高かったのでした。


 そして・・・・・。

 今回のイベントのゲスト、冬木雪乃プロの順番になりました。

 相変わらず、雪乃さんはすまし込んだ表情でした。

 紅葉さんとはまた違った意味で、雪乃さんもプレッシャーを感じていないよう見えるのでした。

 (ううん。確かに雪乃さんはストロークを得意としている。

 高スコアが期待できるなあ・・・・。)

 そう思った僕の、目の前の視界に異変が起こりました。


 (はあ・・・・!?)

 今までテニスウェアを身につけて、ラケットを持っていた雪乃さんの姿が変わっていました。

 なんと・・・・。

 雪乃さんは、迷彩服にライフルを抱えているのでした。

 (・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 えええー!!!?)

 一体何が起こったのでしょうか・・・・!!

 

 ライフルを構えた、雪乃さんは姿勢をとりトリガーをためらいもなく引きました。

 ズガーン!!!!

 バチッ!!

 的はライフルの放った弾で、破壊されました。

 僕が周りを見渡すと・・・・。

 なんと周りのギャラリーも、迷彩服やら戦闘服に身を包んでいました。

 「雪乃やっぱり、上手いなあー。」

 何故か紅葉さんは、半袖・半ズボンのまるでジャングルの探検隊のメンバーみたいな服装で、双眼鏡を覗いていました。


 凄腕のスナイパーと化した雪乃さんは、続けざまに引き金を引いていきました。

 しかも、体を地面に回転させながら非常にトリッキーなポーズで銃弾を放っていきます。

 (す、すごい・・・・・・。雪乃さん格好いい・・・・・!!)

 僕は、凛々しい雪乃さんの射撃に魅入られていました。


 (はっ・・・・・・!!!!)

 僕は我に帰りました・・・・。

 雪乃さんは、ストロークの的当てを終えていました。

 そして、その結果は・・・・・・!!!!


 10球中10球のヒット・・・・・!!!的中率100%だったのです!!

 (す、すごい・・・・・。雪乃さん・・・・。)

 ギャラリーがどよめくのをよそに、雪乃さんは何事もなかったかのようにスタスタと歩いてその場を下がりました。

 (雪乃さん、クールだなあ・・・・。)


 でも、まだ優勝は決まっていないのです。

 なぜなら・・・・・。

 「ついに俺の番じゃん!!」

 そう、最後は四季折夫プロの順番だったのです。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「チッキショー!!

 つまんねえ・・・・・・!」

 四季さんは、メチャメチャ悔しがっていました。

 四季折夫プロの、ストロークの的当ての結果は・・・・。

 10球中9球のヒット、でした。


 1球外したとはいえ、四季さんもストロークの精度は凄かったのです。

 四季さん、雪乃さん、紅葉さん・・・・。

 この3人に続く記録を出せたことに、僕は自信を深めることができました。


 「さずがだな・・・・。」

 日向コーチから、優勝した雪乃さんに景品が手渡されました。

 雪乃さんは、ちょっと景品を持って立ちつくしていました。

 雪乃さんのすぐ横で、小さな女の子が指をくわえて雪乃さんを見上げて立っていました。

 そして、雪乃さんは・・・・。

 「これあげるね・・・。」

 その小さな女の子に、景品を手渡したのでした。


 (雪乃さん、優しいんだな・・・・・。)

 僕は雪乃さんの意外な一面を、かいま見ることができました。

 その景品の中身が何であれ、その小さな女の子にとって大事な思い出の品になる事でしょう。


 「ああー。アタシも欲しかったな・・・・。」

 僕の真横で、紅葉さんが指をくわえて呟いていました。

 (紅葉さん・・・・・・・・・・。)



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