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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
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紅葉さんのプレースタイル

 イベントが開催されました。

 紅葉さんと僕は、子供達と初心者の方々を相手にレッスンをすることになりました。

 一方、ゲストの四季折夫プロと、冬木雪乃プロは主に中級者以上の方々と打ち合う事となっていました。


 僕はレッスンをしつつも、紅葉さんのレッスンも気にしていました。

 それは何故かというと・・・・・・・。

 紅葉さんのテニスのプレースタイルは大変少数派な感じがするからでした。

 前にも述べましたが、紅葉さんはボレー(※注釈)を非常に得意としています。


※注釈

 ボレー・・・ボールをバウンドさせずに打つプレー。


 紅葉さんはストローク(※注釈)をできる状況であっても、ボレーを選択することが多いです。

 明らかにストローク(※注釈)を選択したほうが、確実性が高い場合であってもです。

 何故ストロークの方が、ボレーよりも確実なのか・・・・・・。

 それはストロークは、ボールをワンバウンドする分、反応する時間があるからです。

 (勿論ボールがイレギュラーのバウンドをするという、危険性はあるのですが・・・。)


※注釈

ストローク・・・ボールをワンバウンドさせて打つプレー。


 僕は今日、紅葉さんの側でテニスをプレーしていて、彼女のプレースタイルについて何故そうなのかだんだんとわかってきました。

 普段はそんなことを感じないのですが、紅葉さんは内臓の働きが弱いのでスタミナに自信がありません。

 テニスはとても激しい競技なのに、紅葉さんは大きなハンディを背負っています。

 しかし紅葉さんの武器である、バリエーションの豊かなボレーは彼女の弱さの裏返しでは無いのかと思えてきたのです。

 なぜなら、その理由は・・・・・。


 角度を変えてみてみますと、ボレーはストロークと比較してスタミナの消費を大幅に押さえられるプレート言えるからなのです。

 ストロークは、腕をスイングするという大きな動作が必要とされます。

 加えて、腰や下半身にも大きな負担がかかります。


 それに比べると紅葉さんのボレーは、とても動きがしなやかです。

 ボレーにも腕の動きや、腰・下半身への負担はかかります。

 しかし僕が紅葉さんを観察するに、彼女は体の負担を最小限に抑えるフォームを身につけているようなのです。


 紅葉さんはボールを打つと言うよりも、ボールをキャッチするようなイメージでプレーしているのです。

 下手をすると、全く腕を動かしていないのではないのかと思うときもあります。


 紅葉さんは試合をしているときは、少しでもネットに近づこうとしています。

 なぜそのようなことをするのか・・・・・。

 それは紅葉さんが前に出ることによって、対戦相手が紅葉さんに対してショットを打つコースを狭める作用があるからでしょう・・・・・。


 そして対戦相手が紅葉さんの頭上を抜こうとしたら・・・・・・。

 紅葉さんは、ジャンプしてスマッシュ(※注釈)で相手のコートを射抜くでしょう。

 紅葉さんは176センチの大女なのですが、実はジャンプ力もあるのです。


※注釈

スマッシュ・・・テニスで、高く上がったボールを相手のコートに強く打ち込むこと。


 そんな動きを最小限に抑えた、紅葉さんのプレースタイルもあって・・・・・。

 紅葉さんは、テニスをプレーしているときは、とても華麗かれいです。

 まるで両手を広げて、天女が舞っているようです。

 まあ・・・・・、本来の天女はもっと華奢きゃしゃで上品な感じだと思うのですが・・・・・。


 「あいたっ!!!!!」

 紅葉さんに見とれていた僕の頭に、レッスン生の打ってきたボールが直撃しました。

 ああ・・・・・、とんだ失態です・・・・・・。


 「巳波くん、大丈夫??」

 紅葉さんが、僕を心配して声をかけてくれました。

 でも、しかし・・・・・・・・。


 「あいた!!!!!」

 僕に気を取られていた紅葉さんの頭にレッスン生の打ってきたボールが直撃しました。

 ああ・・・・・、紅葉さんも失態です・・・・・・。

 「タ、タハハ・・・・・。いてて・・・。」

 紅葉さんはバツが悪そうに、右目をつぶってチョッピリ舌を出して、頭を右手で掻いていました。


 (猿も木から落ちると言うことか・・・・・。)

 僕は心の中で、そう呟きました。



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