僕の盟友・・・・。
そのポイントの取り合いで競り勝った雪乃さんは、その後もマメにボールを拾いました。
そして見事に6-4で第1セットを取ったのでした。流石は粘りの雪乃さんです。実際あの紅葉さんも、彼女のことは苦手としていました。あ、それは勿論、テニスの事ですよ。
このまま試合は雪乃さんのペースで進むかに見えました。しかし・・・。
第2セットが始まりました。
今度は黒人の選手がトスを上げました。
===== ドン =====
「うっ。」
そこで思わず、僕は呻き声に近いものを出しました。それほどに、その衝撃音が自分の胸元に響いたのでした。恐らく自分だけではなく、観客席の皆も同じように感じているのではないでしょうか。そのサーブが第1セットとは全く異なる正に異質のものである、と言うことを・・・。
===== ダッ =====
それはとても鈍い音でした。そしてそれはコートの枠からはみ出ていたのです。リターンした雪乃さんは一瞬、固まっているように見えました。そしてその仕草から、彼女は決してミスショットをしたわけではない、と言うことが伺えたのでした。即ちそれは対戦相手の実力から導きだされた結果なのです。その時に僕は有ることを確信しました。今までこの黒人の選手は、全力を出して試合に望んでいなかった、と言うことを・・・。それから会場の雰囲気は緊張で引き締まりまったのでした。
もうこれからは、攻防ではなくなりました。黒人選手のするどい攻撃・・・。それをしのごうとする雪乃さん・・・。しかし彼女の必死の抵抗は、黒人選手の本気サーブを防ぎきるには達していませんでした。そしてあの紅葉さんも凌駕した事のある粘りのテニスは、黒人選手の超攻撃の前に屈する事となるのでした。なんと2セット目は6-0で黒人選手が取ったのでした。そしてその流れには、もはや雪乃さんも逆らえず、3セット目も大差で落としたのです。
観客席の皆は思った事でしょう。勝利した彼女は今大会の台風の目になるであろうと・・・。
その彼女の名は、ストーミー・デイズ。地元アメリカの急成長の若手女子テニス選手・・・。
凄い試合でした。一見してその攻守のバランスを持ってして、対戦相手と互角以上に渡り合っていた雪乃さん。彼女は日本国内ではトップを争う選手なのです。そんな彼女がこの試合も持ち前の守備力を発揮していました。だから調子が良いのか悪いのか問われると、間違いなく良かったと言えるでしょう。それだけ世界のレベルは高かったのです。
はっきり言ってしまうと、試合運びの問題では無かった・・・。悲しい言い方になりますが、これは純粋な実力差だった・・・。その事実が残酷としても・・・。敗れはしましたが、紛れもなく冬木雪乃は日本を代表するテニスプレーヤーの1人であることは間違いありません。この大会に敗北したとしても、戦ったことを誇るべきだと思うのです。
さてさて僕は気を取り直すことにしました。何故ならこの後も大切な試合が控えているからなのです。
(さあ、行こう。)
そそくさと足早に人込みを通り抜けて、目的のコートに辿り着きました。
(丁度良いタイミングだ・・・。)
自分の普段の行いが良かったのでしょうか、それともこれは運命だったのでしょうか。この試合が丁度、始まるところだったのでした。そしてこれが先ほどの2試合以上に激しい内容になることを、その時の自分には知る由がありませんでした。
どうやら試合前の練習も、コイントスも終了していました。そしてゲーム開始なのでした。そして彼はトスを上げ、サーブを放つのでした。
===== ダン =====
そのサーブは大きな弧を描き、尚且つサービスエリアの隅に入ったのでした。そして相手選手のリターンは、ネットを揺らしたのでした。彼は見事に(※)サービスエースを決めたのでした。
(※)サービスエース・・・テニスのサーブだけでポイントを取る事。相手選手のリターンがコートに入らずに失敗する事である。
(すごい・・・・。)
たった1球のサーブなのですが、ボクは衝撃を受けました。あのサーブが全米オープンで、完璧な結果をだした・・・。それだけで十分なのです。この僕にとっても・・・。
2球目のサーブも期待通りだったのでした。相手選手のリターンはコートに入りました。しかし・・・・、その球は甘いモノでした。うまい具合に彼は回り込み、強烈なフラットショットを叩きこんだのです。これは彼のサーブで相手をねじ伏せた事を意味するのでした。
そのサーブは決してスピードのあるものではありませんでした。しかしボールを摺り上げる事によって、質の重いサーブを完成させていたのです。加えてコントロールも抜群でした。このサーブをもってすれば、後の展開で大きなアドバンテージを得られるのです。そもそも相手と同じ土俵に立たせないつもりなのでした。
もうボクは喜びと、今後の試合展開にワクワクだったのでした。喜びの部分は何かって・・・・?
それは彼の練習に僕が付き合っていたからなのです。
そんな彼の名は、サニー・ファイン。僕の盟友・・・・。




