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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第6章 甦る記憶
321/326

「素晴らしい考察だな。」

 つまり紅葉さんがサーブのときは、サーブとリターンだけでほぼ決まってしまうのです。そしてこれによって、一体何が起こるのでしょうか・・・。その答えは、どちらかにポイント入るまでの時間が極端に短いと言うことなのです。その理由は、ほぼラリーの応酬が皆無であるためなのです。そして結果として、紅葉さんは自分のサーブのゲームは全てをキープしていたのでした。ちなみにキープとは、その自分がサーブをするゲームのカウントを取る、と言うことなのです。

 ・・・とまあここまでは考察をしたのでしたが、まだ全ての解析は述べていません。というのも逆の立場ではどうなるのかと言う事を、説明できなければいけないのです。その結果のみを述べると、紅葉さんはリターンのゲームも殆どブレイクしていたのでした。因みにブレイクとは、自分がリターンをするゲームのカウントを取る、と言うことなのです。どうしてそんな芸当が可能となるのか・・・。これも理論的に説明はつきます。

 ここでも紅葉さんはサーブをする場合と同じ状況になるようにする戦略を取っていたのです。彼女はリターン後も直ぐ様ネットの近くに詰めていたのでした。しかしここで大きな疑問が生じるのです。それはどうやってリターンの後に、ネットの前に詰める時間を確保するのか・・・・。しかしそこにも紅葉さんは明確な戦略を用いているのでした。

 その解決策とは・・・・。紅葉さんはリターンで緩く高い球を返していたのでした。それも大きな反撃を食らわないようになるべく深い、つまり相手の後ろに返すのです。これによって緩い球でも強烈なストロークを返しにくくなるのでした。それでも理屈で言うのは簡単ですが、実際にそれを行うのは非常に高等な技術が必要となるはずです。だからこれをやってのける紅葉さんは、実力のあるプレーヤーである事は異論をはさむ余地はありません。

 この場合でも、要するにサーブの時と同じ状況になるのです。後は紅葉さんがサーブをした場合の手順となります。紅葉さんが相手のリターンをボレーで捩じ伏せるのか、はたまたシード選手が上手く返せるか・・・。

 少なくともこの時点で、紅葉さんかシード選手の何れかにポイントが入るのです。

 即ちサーブとリターンだけで決まってしまうのです。

 これにより何が起こるのか・・・。

 それは極端に短い試合時間の成立です。


 「素晴らしい考察だな。」

 「はっ!?」

 この男性は誰なのでしょうか。漆黒のサングラスに厳つい鬚、この暑い中に黒尽くめのスーツに身を固めたこの人は・・・。

 「まあ心配ない。紅葉は優勝争いに絡んでいけるだろう。」

 「は、はあ。」

 その男性は親しげに、僕に語りかけてきました。

 「こうやって考えるのは良いことだ。」

 「は、はい。」

 急によく知らない人に話しかけられて、僕はシドロモドロだったのでした。

 「まあこれは勉強だ。しっかり観てな。」

 そう言うとサングラスの男性はポンと僕の右肩を軽く叩いて、立ち去って行ったのでした。そんな彼を僕は無言で見送る他ありませんでした。

 「はっ!?」

 自分1人になると、気がついたのです。何であの男性は僕の考察が分かったのでしょうか。そうなんです。彼はまるで僕が現在置かれている状況を、全て把握しているかのような口振りなのでした。

 そしてもう1つ・・・。あのサングラスの男性に対して自分は、何やら懐かしいという気持ちを抱いていたのです。それは上手く具体的に表現しかねるのですが、とても深い感情のような気がします。

 ですが・・・その気持ちの理由が分かるのは、今思い返せばそう遠い未来では無かったのでした。


 こちらのコートでの1試合目は終わりました。順当にシード選手が勝ち抜きました。しばらく待ちましたが、これがだいたい普通の試合時間なのでしょう。

 ===== ワアアア =====

 いよいよ次の試合です。これも女子シングルスなのです。僕がそこにいるのは勿論、注目の選手が出場するからなのです。

 両選手の入場です。体格の良い黒人の選手が来ました。彼女は今大会の優勝候補にも目されているのです。

 一方は予選から勝ち上がってきた選手なのです。そして、またまた僕の目当ては予選から勝ち上がってきた選手の方だったのでした。

 ウォーミングアップとトスも終わり、試合開始なのです。

 ===== パカン =====

 今にも弾けそうにボールを叩く音が、しました。

 ===== ドカッ =====

 そしてそのリターンは、サーブよりも数段重そうなのでした。

 その威力の高そうな球足に負けずに彼女は追い付き、的確にラケットに当てたのです。それは自身のスイングの力のみでなく、相手の球威を利用するスイングでした。そしてただ返すのみではなく、十分にコースをついています。黒人の選手は素早く動き、また更にするどいショットを返すのです。

 そして彼女達の対照的なラリーは、一進一退の攻防となったのでした。時には粘りのショットで相手のミスを誘う。そして時には自らの勢いで相手のリターンを許さない・・・。

 その結果、まずは第1ゲームは彼女が取りました。

 その予選から勝ち上がってきた選手の名は、冬木雪乃・・・・。

 この僕の従姉・・・・。

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