四季折夫様、冬木雪乃様、ご来校!
レッドリーフ・テニススクールのイベントの当日の朝が訪れました。
残り少ないテニススクールの仕事を。、僕は悔いが残らないようにしたい・・・・。
心の底からの純粋な気持ちを、僕は胸に抱いているつもりでした。
しかし僕の志は、出鼻から無惨にも打ち砕かれることになります。
ゲストは日本一の男子シングルスプレーヤー四季折夫選手。
そして、若手女子シングルスプレーヤー、冬木雪乃選手。
ハッキリ言って、一民間のテニススクールが単独でこんなハイレベルな選手を呼べるのは凄いことだそうです。
おそらく、レッドリーフ・テニススクールと、プロテニス界とは太いパイプがあるのでしょう。
僕なりに、ゲストの方々の紹介をさせていただきたいと思います。
四季折夫さんは、言わずと知れた日本トップの男子テニスシングルスのスペシャリストです。
テニス四大大会(※注釈)の、全仏オープン・全英オープンのシングルスではそれぞれ一回ずつ準優勝の経験を持ちます。
世界ランキングでも、現在10位に入っている強豪選手です。
割と気さくなキャラクターで、テレビのバラエティー番組でたまに見かけたりします。
身長171cmと、男子テニス選手としては小柄ですが、脚は早くスタミナもあります。
癖のある回転のサーブと、球質の重いストロークを武器に活躍しています。
冬木雪乃さんは、日本女子テニス界では五本の指に入る有力選手です。
(改めまして紹介しますが、僕の従姉でもあります。)
雪乃さんも、四季折夫さんと同じくシングルスをメインとするプレーヤーです。
世界レベルでは中堅クラスの実力で、コンスタントに成績を残しています。
身長は164cmで、細身の体格です。
ポーカーフェイスなので、対戦相手(特に外国人選手)には不気味がられる事もあるそうです。
とても正確なストロークで、相手の弱いポイントを突いて試合を組み立てていくのが特徴です。
※注釈・・・テニス四大大会
テニスのプロフェッショナルトーナメントにおいて、世界最高峰に位置づけられる四つの国際大会の総称。全豪オープン、全仏オープン、全英オープン、全米オープンの4大会をさす。
※注釈・・・ストローク
ボールをワンバウンドさせて打つプレー。
(ふう・・・・・。)僕は、慣れない読者様に対する説明で緊張していました。
しかし僕は、この小説の語り部であるという事を忘れてはいけません。
もう一人のプロ選手の説明も必要だと思います。
その人とは・・・・・。
秋原紅葉さん、です。現在レッドリーフ・テニススクールのコーチ業を営んでいますが、三月に活動休止宣言をするまでは、プロの試合で活躍していました。
(今、僕の身近にいる人ですが、日本でもトップレベルの凄い女子テニス選手なんです。)
四大大会(※注釈)での、上位進出こそありませんが大物外国人選手を何度も破っており、その実力は誰もが認めるところです。
身長176cmと、女子テニス選手としては高身長です。体型は、雪乃さんの様なスレンダーな人とくらべると・・・・、細くはありません・・・・。(紅葉さん、ごめんなさい!)
紅葉さんはボレー(※注釈)の名手であり、その特性上シングルス・ダブルス両方こなせる器用さを持ちます。
多くのバリエーションのボレーを駆使して、自分の有利な状況に持って行くスタイルです。
紅葉さんはボレー(※注釈)のしやすい、ネットに近い場所にポジションが取れるか、どうかが試合の勝敗を決める生命線だと思います。
※注釈・・・ボレー
ボールをバウンドさせずに打つプレー。
(よしよし、これだけやればちゃんと紹介できたかなあ・・・・。)
僕は早朝から頭をフル回転させて、しゃっきり目が覚めていました。
(ようし四季さんと、雪乃さんを出迎えねば・・・・。)
僕はそろそろ現れるであろう、二人のプロ選手を心待ちにしていました。
「おはよう。」
(・・・・・・・・!!!!)
「も、紅葉さん・・・・!」
急に紅葉さんが、挨拶してきたから僕はビックリしました。
・・・・・しかし・・・・・・。
いつも紅葉さんは、元気に挨拶してくるのになんだか元気がありません・・・・。
「あ、あの・・・・。紅葉さん、いつから僕の側にいたんですか?」
「さっきから、ずっといたわよ。」
「・・・・・そ、そうですか・」
「悪かったわね・・・・。」
紅葉さんは、良く分からない台詞を出しました。
「はい??」
僕は、わからないまま相づちを打ちました。
「雪乃みたいに、スレンダーじゃなくて悪かったわね・・・・。」
「・・・・・!!!!ええ!?」
僕は、急な紅葉さんの追求に慌てました。
「だって、さっきから巳波くん、ブツブツ独り言をしゃべっているんだもん・・・。」
(紅葉さん、全部聞いていたんだ・・・・。
ひ、非常にまずい流れだ・・・・。)
「アタシ、ボレー(※注釈)の達人だから・・・・。」
「は、はい・・・。」
「アタシ、シングルスだけじゃなくて、ダブルスも得意だから・・・・。」
「は、は、はい・・・・。」
「だから、今日のイベントはアタシに任せて・・・・。」
「・・・・わかりました・・・、紅葉さん。」
僕は、内容がわからないままに、とにかく紅葉さんに対して相づちをひたすら打ち続けました。
この紅葉さんの言葉の意味は、後に明らかになることになります。
(よ、よかった・・・・・。紅葉さん、怒っていない・・・。)
でも紅葉さんは相変わらず、浮かない表情をしています。
どうしたのでしょうか・・・。
気になるところですが、推測で紅葉さんに問うことはできませんでした。
「四季折夫さんと、雪乃さんがもうすぐ来ますね!!」
僕はなんとか、間を持たせようとしました。
「おりお・・・・・。」
紅葉さんは、唇を強く噛みしめているように見えました。
(ま、まさか・・・・・。ひょっとして紅葉さんと、四季折夫さんとはなにか因縁があるのだろうか・・・?)
紅葉さんの醸し出す雰囲気に、なにやらただならぬものを感じ取れました。
ガー・・・・・
テニススクールの玄関の自動ドアが開きました。
四季折夫様、冬木雪乃様、ご来校ー。
・・・・・・・・次話、波乱必至です・・・・・・。




