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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第5章 変化
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そしてその悲観論はには、間もなく拍車がかかることになるのでした。

 

 ===== ジャッ =====

 こちらのリターンもまた、ガットでボールを擦る音がしました。しかし同じ擦ると言っても、これは似て非なるもの・・・。クライミトのサーブは本人自身の動作から繰り出されるという、あくまでも能動的な力です。それに対して僕のリターンは、彼のサーブの力を利用しての受動的な力なのです。つまりスライスサーブの軌道に合わせる事によって、それに相反するリターンが生まれるのです。つまり僕の動作のタイミングと、ラケットの握り具合でほとんどの結果が決まってしまうのです。

 ===== シャッ =====

 ===== ジャッ =====

 クライミトのスライスサーブと、僕のリターンの応酬が続きます。こちらも段々とタイミングが合ってきました。僕のリターンの確率は上がってきました。

 「よし、そろそろだ。」

 彼が呟きました。それにあわせて僕はゴクリと唾を飲み込むのです。そしてクライミトのサーブはチェンジしたのでした。

 ===== シュバッ =====

 ===== バジャッ =====

 さらにボールを擂り潰すような音に、彼のスライスサーブは変化したのでした。勿論良く曲がったのですが、尚且つ重さを感じました。そして僕のラケットはボールにヒットしたものの、相手コートの枠からはみ出てしまったのでした。

 これが今のクライミト チェンジの本気のスライスサーブ・・・。彼も進化を続けているのです。

 しかし彼もまた、プロのレベルに達していません。だからこの僕と2人で練習をしているのです。クライミトも生き残る為に必死なのです。


 こうして彼との練習会はお昼に終わりました。

 「今日も有り難う。」

 「こちらこそミナミ。俺は人一倍に練習しないといけないんだ。」

 「うん。またお願いするよ。」

 「ああ、またな。」

 僕たちは握手をして別れました。

 そして更衣室で服を着替えることにしました。

 「どうだったかな。」

 「あっ。」

 この練習会を許可してくれた人が声を掛けてきました。

 「顔色は良さそうだな。」

 「は、そうでしょうか。」

 僕は頭を掻きながら、この人の顔を見つめるのでした。未だにこの人には頭があがらないのです

 「今でもお前は私の生徒だ。プロを目指すんだ。」

 「はい。」

 この人の僕に対する態度は、何も変わっていません。勿論、僕にとってのコーチは、今もこの人なのです。

 サンダー・ライトコーチ。まだこの僕に手心を加えてくれています。別れも告げずに急にアカデミーを離れたにも関わらずにです。

 「頑張ります。」

 「うむ。」

 自分なりに感謝の意を示し、サンダー・ライトコーチと別れました。そしてお昼にすることにしたのです。

 

 「お待ち遠様!」

 「有り難う。」

 彼女も全く変わりないのです。ここはアカデミーのレストラン。日曜日も営業しています。

 「どう?最近は。」

 「うん。もう慣れたよ。」

 「じゃあ、大丈夫ね!」

 多分それは本当に思っているのでしょう。彼女はハッキリとした正確なのですから。

 練習会は終わったのですが、あえてこのアカデミー内で食事をとるのは理由があります。それは心の平穏を保つためなのです。週末だけでも僕はアカデミーに戻れるから・・・。


 もう休日は終わります。また明日から工場内テニスコートとアルバイトの日々が始まります。

 ここまで僕は努力してきたつもりです。しかし・・・、正直に言います。もう気づかないふりをして、我慢するのは限界になってきました。ハッキリ言って・・・。

 このままではプロテニス選手にはなれません。

 当たり前なのです。今の状況はただの現状維持でしかありません。サニーと練習しているときにわかるのです。確実に彼から差をつけられている事を・・・。もはや僕はサニーにとっての練習台なのです。

 そして言っては悪いのですが、クライミトは僕と同じくなかなかプロになれずに足掻いているのです。

 悲観的と言われるかも知れませんが、これが自分の置かれている状況なんです。

 そしてその悲観論はには、間もなく拍車がかかることになるのでした。

 

 また一生懸命に過ごし、一週間は過ぎていったのでした。

 ~~~~~ そしてまた次の日曜日 ~~~~~

 僕はアカデミーに行きました。そして彼と約束した時間を待ちました。

 「あれ。」

 僕は腕時計をみやりました。

 (・・・・。)

 自分の感覚が正しいとすれば、腕時計は正常に動いています。 

 もう練習会の時間は過ぎています。

 今までこの休日の練習会のクライミトの遅刻はありません。勿論、この僕もです。これは異変である、と言うことに気がついたのです。僕とクライミトは、それ程深い付き合いではありません。しかしそれでも、この自分にはわかるのです。彼が訳もなく遅刻するような人間ではないと言うことを・・・。そして僕と練習するのを、とても楽しみにしていたであろうと言うことを・・・。

 「ミナミ。」

 その野太い声はクライミトではありません。

 「コーチ・・・。」

 そうです。そこにはサンダー・ライトコーチがいたのでした。

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