~~~~~ 話は一週間前に遡ります。 ~~~~~(5)
「うん。なんとか。」
そこで当たり障りのない相槌を打つ僕なのですが、心中は懐かしさで一杯です。彼の顔を見るだけで最近の悩みを緩和することができました。
(はっ。)
しかしそこで僕は我に返ったのです。
どうしてサニーがここに来たのか。
この屋内のテニスコートは一体誰が何のために作ったのか。
それに未だに分からないのです。シオンさんの正体が・・・。
しかし自発的にそれを知る術を、この僕は持ち合わせていないのでした。
「調子は如何ですか。」
「うん。絶好調。来週には試合が控えてるよ。」
「じゃあ、今日は無理は出来ませんね。」
何故かシオンさんは、少し残念そうな顔に見えたのでした。そんな彼女を見て、ちょっと僕は不思議な気分なのでした。
「そんなことないよ!」
そこでサニーは元気良く否定しました。
「そうなんですか?」
するとシオンさんは、何だかちょっと安心したような表情を浮かべていたのです。
そしてサニーは僕の方を見やりました。
「じゃあミナミ。準備してよ。」
そう言いながらサニーは屈伸をするのです。その動きが何を意味するのか、自分にとっては明白なのでした。
「分かった。ちょっと待って。」
僕は着用していた私服を上着から脱ぎ始めました、が・・・。
(はっ・・・!)
勿論、直ぐに我に返ったのでした。
そして僕は二人の顔を見回したのです。すると・・・。
「こちらです。」
「こっち!」
同じ方向を2人は指差していました。
どうやらテレパシーの様なものは、この3人で共有されている様子です。
「すいません。着替えてきます。」
バツの悪い僕は頭を掻きながら、その出入り口に向かったのでした。
===== ガチャ =====
すると薄暗い廊下に出ました。
(えーと。)
たちまち僕は迷いました。
「こちらですよ。」
直ぐにシオンさんがついてきて、場所を教えてくれました。
===== カチッ =====
入室すると同時に照明がつきました。どうやらここもセンサーが導入されていた様です。
「では、ごゆっくり。」
「は、はい。」
そのシオンさんの気遣いが、何だか自分には恥ずかしく感じられました。
===== サー =====
(はっ。)
これは何の音なのでしょうか。
緩やかな空気が流れを感じます。
(これもセンサーか。)
今までのこともあり、直ぐに僕は理解できたのでした。この更衣室は空調も管理されているのです。
(・・・・・。)
確かに最先端です。そのシオンさんの言葉に、嘘偽りはありませんでした。でも同時に別の考えが起こったのでした。
(まさか・・・。)
ここまで徹底的に空調が管理されているのです。その中にいる自分自体も管理されているのではないか、という疑問が沸いてきたのでした。
僕は想像したのです。監視カメラで僕の着替えを眺めている、シオンさんとサニーの姿を・・・。
さて冗談はさておき、僕はテニスウェアに着替えてテニスコートに戻ったのでした。
「お待たせ。」
「おう。来たな。じゃあ準備ができたら、やろうか。」
「うん、分かったよ。サニー。」
いつものストレッチをこなした僕は、速やかにコートに入りました。
「さあ。」
「うん。」
===== ポンポン =====
軽い打球音が響きます。僕とサニーはお互いに(※)サービスラインの前でクロスの方向に立ち、ゆっくりとしたスイングで打ち合うのでした。これは恒例のウォーミングアップというべきものです。
(※)サービスライン・・・テニスコートにおけるサービスラインとは、ネットより約6.40mの位置に横に引かれた線のことです。サービスラインとネット、そしてシングルスコートのサイドラインで囲まれた四角いエリアが、サーブを打つ際にボールを入れなければならない領域です。
===== サッサッ =====
実際にその様なスイング音がしていたのかは、果たして定かではありません。でもそれだけ自分は緊張感をもってして、彼と向き合っていたのは確かなのです。その気持ちが彼にも伝わっていたのでしょうか鋭い、しかし正確な打球が返ってくるのです。
流石はプロ。彼に対しては率直にそう思ったのです。
そしてこの僕はまだアマチュア。
冷静に考えると、この状況を有難い、と思わなければいけないのです。
「今度はボレーをしようか。」
そのサニーの声掛けに、益々の感謝を心に抱いた僕なのでした。
そして二人きりの貴重な練習の時間は経過していきました。
「ふう。」
「はあっ。」
僕達2人とも息が上がっていました。
その時間にしては1時間位でしょうか。それでも密度の濃いメニューをこなし、僕は大満足なのでした。
もう細かい会話は必要ありません。僕とサニーはテニスボールを介して、再会の喜びを分かち合ったのですから。そしてその状況を彼女は察したのでしょう。
「では今後の事について、お話し合いを致しましょうか。」




