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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
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レッドリーフ・テニススク-ル支配人 千山万水

 「渡米への準備は大丈夫かな、夏目君?」

 支配人が、僕に声をかけてきました。


 紹介します。

 この人は、僕が勤めるテニススクール、レッドリーフの支配人、千山万水せんざんばんすい氏です。

 なかなかダンディーな、50代の知的な男性です。

 今はそんな雰囲気は全く感じられませんが、若いときはプロを目指し渡米していたこともあったそうです。

 そして、テニスの裾野を広げる仕事がしたいということで、このテニススクールを開業したそうです。

 そんなレッドリーフ・テニススクールは今、創業22年目に突入しております。

 人間でいえば、21歳です。(あれ・・・・。なんだか、誰かとかぶる気がするな・・・。)

 とにかく、これだけ長期にわたって問題なくテニススクールを運営して来られてのだから、経営手腕は高いのでしょう。

 千山支配人は、誰にでも分け隔てなく接してくれます。

 僕のような、入社して4ヶ月、しかももうすぐ退社してしまうような人間にも優しく言葉をかけてくれます。


 「巳波君、唐突だけどね・・・・。」

 「はい?なんでしょうか、支配人・・・・」

 「うーん、巳波君。巳波君は彼女とかいるのかな?」

 「えっ・・・・・・。」

 あまりに意外な支配人の言葉に。僕は言葉に詰まりました。

 「最近、彼女とかできたりしてないかな・・・。」

 (もしかして、僕と紅葉さんが交際していると思ってるのかな・・・。

 うーん、僕と紅葉さんは一言で言い表せないような微妙な関係だと思うのですが・・・。)

 「いえ、僕に交際していると言える女性は今のところいませんね・・・・。」

 僕は、ちょっと答えにくそうに言葉を返しました。


 「そうなんだね・・・・。」

 支配人は若干、残念そうな表情で答えていました。

 「・・・・・・・・。」

 ぼくは、支配人にどうゆう言葉をかけて良いのか全く検討がつきませんでした。


 支配人は、小さなため息をつき話を続けました。

 「私には、一人息子と、可愛い姪っ子が二人いるんだけどね。

 本当に可愛い姪っ子なんだけどね・・・・・。 

 一人息子と、姪っ子の上の方が年頃なんだけど・・・。

 どうやら二人とも交際相手がいそうにないんだなあ・・・・。

 まあ、ふたりとも20代だから、私が干渉するべきではないのかもしれないけどね・・・・・。」

 (支配人には、一人息子がいたんだ・・・。

 それに、なんだか今の口調だと、姪っ子の事をとても可愛がっているんだなあ・・・。)


 「明日は、スクールのイベントだけど、宜しくたのむよ、巳波君。」

 支配人は、この話に区切りをつけるようにいいました。


 そう、明日はこのレッドリーフ・テニススクールの<年に一度のスクール生感謝イベント>が開催されるのです。

 具体的には、このテニススクールの生徒を対象に集めるイベントです。

 そしてゲストを招き、様々なレッスンやミニゲームを行いレッスン生に楽しんでいただこうという趣旨で行われます。

 さらに、メインイベントはゲストを含めた※エキシビジョン試合の観戦です。


 ※注釈・・・エキシビションとは、公式記録としない模範試合を意味する。 エキシビションマッチ、エキシビションゲームなどと呼ばれたりする。


 「はい、精一杯頑張ります!!!」

 僕は最初で最後の、このイベントを手を抜かずにやりきるつもりです。

 「うん、期待しているよ・・・・。」

 支配人は、僕の肩をポンと叩き部屋に戻っていきました。


 僕は、やる気満々で当日を迎える事になりました。

 ・・・・・・しかし、当日は想像を遙かに超えるエキセントリックなイベントとなることを、僕は知る由もありませんでした。


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