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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第5章 変化
309/317

~~~~~ 話は一週間前に遡ります。 ~~~~~(4)

 シオンさんは右人差し指を口に当てて、まるで重大な秘密を述べているような仕草をしていました。でもそれはなんだかおふざけが入っている、気がするのです・・・。

 「最先端ですよ。うふふ。」

 「えっ?」

 「センサーですよ。」

 「セ、センサー?」

 最先端、センサー・・・、僕には理解が出来ません。

 そんな僕の心中を察したのか、彼女は言いました。

 「じゃあ、試しに部屋を出ましょう。」

 「え?」

 訳が分からないままに、僕はシオンさんの言う通り部屋を出ました。

 ===== カチッ =====

 「あっ!」

 僕たちが部屋を出た瞬間に照明は消えました。そこには薄暗く不気味な空間が広がっていたのです。

 でもそれで話が終わる訳ではありません。

 シオンさんは右掌を部屋の方に向けて差し出していました。

 「またお入りになって。」

 「え?」

 出たとも思ったら、また戻る・・・。

 すぐにまた僕たちは入室しました。

 ===== カチッ =====

 再び照明が灯りました。

 「お分かりになりましたね。」

 シオンさんは顔を左に10度程傾けて、スッキリとした表情をしていました。

 

 そこで僕は正直に答えました。

 「いや、分かりません。」

 ===== ガクッ =====

 そんな擬音が聴こえてきそうです。

 そしてシオンさんはスーツの襟を正して、気を取り直そうとしている様子でした。

 ===== コホン =====

 そんな咳払いを彼女はしたのか、しなかったのか・・・。

 「夏目さん。この部屋にはセンサーが設置されています。そして人、つまり私達が入室したことによってセンサーが反応して照明が入るのです。」

 「なあるほどー!!」

 そこで即座に納得した僕は、ポンと手をグーにして掌を叩いたのです。

 そんな僕をみてシオンさんは、安堵感の滲み出た表情をしているのでした。

 確かに最先端です。恐らくこの機能が一般化するのは、昭和から次の元号に代わってからではないでしょうか。


 「いかがですか?」

 「ん?」

 彼女に言われて僕は改めて今、自分がどこにいるのか気がついたのでした。

 「こ、これは・・・。」

 そうこれは紛れもない、間違いない・・・、テニスコートなのです。


 「な、何故・・・。」

 「うふふ。驚いたでしょう。」

 確かにシオンさんの言う通りでした。今頃になって、この僕は気がついたのです。

 工場の中にテニスコートが設けられている、と言うことを。


 「テ、テニスコートが、、、。」

 それは四角い、しかし広い空間にあったのでした。そして気がついたのです。自分の足元の感触に・・・。柔らかいのです。これはやはり芝なのでしょうか。だとしたらここは室内。芝の手入れは大丈夫なのでしょうか。

 「気になるでしょうね。」

 シオンさんは僕が何を考えているのか、全て分かっている様子でした。

 「大丈夫なんですか。これ。」

 その足下の芝と思われし緑色を見下ろし、僕はポツリと呟くくらいの声で言いました。でもそんなことは、心配ご無用なのでした。

 「最先端ですよ。」

 シオンさんが繰り返し、この単語を出してきました。


 「やはりそういうことですか。」

 ここにも自分の知らないものが隠されている様です。

 「これは芝であって、芝ではない無いのです。」

 「は?」

 シオンさんは何をいっているのでしょうか。何かの謎かけ、かトンチの類いなのでしょうか。

 「ご安心ください。これは人工芝といって、文字通り作り物なのですよ。」

 「人工芝?」

 そうです。流石に本物の芝と全く同じとはいきませんが。完成度の高さは保証します。

 改めてその場にしゃがみ、それを確認した僕は思いました。

 (言われないと分からない・・・。)


 凄いです。こんな施設があるとは・・・。しかもカムフラージュの為に工場の中にあるとは。

 そしてコートを見回しました。すぐに分かりました。

 新しい・・・。恐らく全てが新しいのです。

 その人工芝を初めて目にする僕でも分かります。これはほぼ使い込まれていない状態です。

 しかし、ここである疑問が生じたのです。

 なんでここまでの施設が作れたのでしょうか。こんな素晴らしい設備は、巨額の予算がないと実現できないでしょう。

 果たしてそれには、明確な答えはあったのでした。

 「そろそろ来られる頃です。」

 「え?」

 一体、誰がくるというのでしょうか・・・。

 ガチャ

 反対側からの出入口が開きました。

 勿論、そこから誰かが出てきました。

 それは誰かと訊ねたら・・・。

 「ああっ!!」

 もう僕はビックリする他、無いのでした。


 「やあ。」

 恐らく話はついていたのでしょう。匂やかな表情で、彼は語りかけてきたのでした。

 「お世話になります。」

 そこでシオンさんは彼に対して、感謝の意を表したのでした。

 「うん。困ったときは助け合うものだから。」

 どうやら今回の件は、彼の好意によるものだった様です。

 もう暫く彼とは会うことはない、と思っていたのですが・・・。

 「元気かい?ミナミ。」

 彼は右手を挙げて、屈託のない笑顔を浮かべていたのでした。

 サニー。彼は嘘のない男なのです。

 

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