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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第5章 変化
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有り難うサニー




 「どうぞお入りください。」

 「失礼いたします。」

 最初から僕は、彼を自分の部屋に招き入れるつもりなのでした。それは勿論、自分のペースで話を進めたいからなのです。

 「お掛けください。」

 「有り難うございます。」

 予め並べて用意したテーブルと2つの椅子。彼を上座で、自分は下座です。この常識的な対応は、相手に舐められないための予防線です。

 戦いはこれからなのでした。


 「もうお返事は、お聞かせ願いますか。」

 「はい。自分としては現状維持ということで。」

 刻露清秀さんは怪訝そうな表情を浮かべました。

 「現状維持とは?」

 刻露清秀さんは表情を変えていませんが、内面では苛立っている事でしょう。その証拠、右の眉が大きく動いたのが確認できました。それは彼が感情を押し殺している事の証明なのではないでしょうか。

 「ですからこれまで通りに、アカデミーの練習に取り組みたいということなんです。」

 「・・・・。」

 刻露清秀さんは沈黙しました。気まずい雰囲気が流れます。その沈滞した壁を崩そうとしたのは、僕の方なのでした。

 「そう言うわけで、これからも宜しくお願いします。」

 僕はペコリとお辞儀をしました。全く悪びれるつもりはありませんでした。

 「・・・・。」

 なおも彼は無言を貫いていました。


 「刻露さん・・・。」

 やむを得ず彼の名を呼び掛けました。

 「・・・・。」

 さらに沈黙です。

 「刻露さん!」

 たまらなくなり、僕は強い口調となりました。

 すると刻露清秀さんは少しだけ両目を閉じてから、漸く口を開いたのでした。

 「残念です。」

 「え?」

 「夏目様なら冷静な判断を下してくださる、と思っていたのですが・・・。」

 「・・・・。」

 今度は僕の方が沈黙しました。そして刻露清秀さんは続けました。

 「仕方がありませんね。」

 その彼の眼は、とても冷たく感じられるものなのでした。


 「では夏目様には、本日をもってアカデミーを退校していただきます。」

 「なっ・・・。」

 余りの急な話に僕は言葉に窮しました。その刻露清秀さんは極めて冷静な表情でした。

 「話を進めましょう。夏目様はテニスを止めていただき、私どもの提案に沿ったご努力をお願いしたいのです。」

 「・・・そんな一方的にいわれても・・・。」

 最初から僕の意思は関係なかったのです。実際に刻露清秀さんは僕の反応などお構い無しなのでした。

 「それでは手続きを私どもでさせていただきますので宜しくお願い致します。それからまた明日の朝、迎えに参ります。」

 「・・・・。」

 最早自分には、返す言葉はありませんでした。

 「今日のうちにお荷物を整理してくださいませ。それでは失礼致します。」

 彼は白々しい捨て台詞を残し、僕の見送りも気にせずに退室したのでした。

 「・・・ふう。」

 僕は溜め息をつき、椅子に深く腰を掛けました。

 (ここまでは予想通りだ・・・)

 僕は一人納得して呟いているのです。そこには、とある裏付けが存在していたのでした。


 ===== その翌日 ====

 僕はとある施設で、一人練習に取り組んでいるでした。

 「よし。」

 一人納得するボクなのでした。

 (ここの設備は素晴らしい・・・。)

 筋力トレーニングの設備も素晴らしいのでした。これほどの環境を整えるとは、真に感心すべく事なのです。

 「ふう・・・・。」

 一区切りつけたボクは、ベンチに腰を掛けてスポーツドリンクを飲んでくつろいでいたのでした。

 本当に遥か昔の事だったのではないか、と言う錯覚に陥りそうになるのです。

 ===== テニスアカデミーに在籍していたのが =====

 そうなんです。このボクは刻露清秀さんが言ったとおりに、アカデミーを退校してしまっていたのでした。

 しかし・・・しかしなんです。

 刻露清秀さんの思い通りには、決してなってはいないのです。

 恐らく今頃は、刻露さんは地団太を踏んでいる事でしょう。すでに僕が部屋を片付けて、いなくなってしまったのですから・・・。何故なら彼が昨日、僕の部屋に尋ねてきた時には、既に自分の退校は決まっていたのでした。つまりこの自分が、自主的に退校したのです。そしてそれは自分にとっての受け皿が、存在していたからなのでした。

 本当に彼に対しては、感謝の気持ちしか浮かんでこないのです。そして彼は僕の前に現れたのでした。

 「待ったか?」

 「いやそれそ程でも・・・。」

 「じゃあ相手してくれるか?」

 「勿論だとも。」

 僕と彼はストロークを打ち合いました。それは力と力のぶつかり合い・・・。。小細工の入りゆく余地も無い・・・。真剣勝負なのでした


 「どうだった?」

 僕と彼は練習を終え、クールダウンをしているのです。

 「いつも練習に付き合ってくれて。有難う。」

 「ううん。こちらこそ。」

 僕達はお互いを称えていました。それが当然の事でした。かつての好敵手。そして今では自分よりも前を走っている。プロテニス選手と言う道を・・・。そしてその道は止まることはありません。本人が限界と感じるその日まで・・・。

 繰り返しますが、感謝してもしきれないのです。

 =====有り難うサニー

 

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