恋する乙女、紅葉さん
あの男性と、紅葉さんのツーショットを確認した僕は、とっさに柱の影に隠れました。
そして、遠目に二人を見守ることにしました。
「大丈夫かなあ・・・・・。紅葉さん・・・・・。」
僕は、心配度MAXの状態で紅葉さんを見つめていました。
しかし、だんだんとその不安は払拭されていくことなっていきます。
あの男性は身長は178cmくらいあるでしょうか・・・・・。
よく見ると、彼は意外と長身でした。
176cmの紅葉さんよりも若干背が高いです。
しかし、紅葉さんに対する僕の心配は、ご無用でした。
賢明な読者様なら、もうお気づきになられているかと、僕は推測しています。
だって・・・・だって紅葉さんは・・・・・。
紅葉さんは、腕っ節がとても強そうだから・・・・・。
おそらく、紅葉さんの戦闘力はあの男性よりも上回っているでしょう・・・・・。
(こんなことは、紅葉さんには口が裂けても言えないのですが・・・・。)
僕は、勝手に一安心しておりました。
僕は、引き続き紅葉さんと男性を観察しました。
なんだか、別の意味で僕は不安になってきたのです。
何故かって?
それは紅葉さんの様子が、僕の予想と大きくかけ離れていたからです。
紅葉さんは、とても朗らかな表情をしていました。
(え・・・・・。)
紅葉さんのあまり見たことのない表情に、僕は狼狽を覚えました。
(紅葉さん、年上の男性にはあんな感じなんだ・・・・・。)
今の紅葉さんは、頼れる男性に身をゆだねている女性のようでした。
こんな言い方をすると、紅葉さんが女性でないみたいで大変失礼なのですが・・・・。
あの男性に対する僕の印象も、大きく変化していきました。
(あの、男の人・・・・・。
無邪気な少女に対して、優しく接する・・・・。
包容力のある大人の紳士だ・・・・・。)
はっきりいって、一人の男として僕は{負けた}と素直に認めたいです・・・・。
さっき、男性を「怪しすぎる」といった僕がとても恥ずかしい・・・・。
僕は、紅葉さんを再び柱の影から凝視しました。
(ああ・・・・・!!)
もはや、紅葉さんは女性と呼ぶべきではありません・・・・・。
これは・・・・・。紅葉さんはいわゆる・・・・・。
「恋する乙女」となっていました。
(クラッ・・・)目眩がしてきた・・・・・・。
僕は、ショックで頭が混乱していました。
僕は、状況を整理してみました。
僕がショックをうけた理由・・・・。
それは、僕のイメージとは違う男性と紅葉さんが仲がよいから・・・・・!?
でも、それはハッキリ言って単純な僕のエゴです。
紅葉さんがどんな人と深い仲になろうと、僕が介入する権利はないのですから・・・。
そう考えると、だんだん僕は冷静さを取り戻してきました。
(それと、紅葉さんはえらく歳の離れた男性が好みなんだなあ・・・・。)
紅葉さんは、僕よりも3歳年上の21歳です。
(ちなみに紅葉さんは雪乃さんにタメ口をきいていますが、雪乃さんよりも一学年下です。)
そうなると、あの男性は40歳くらいとして、20歳、二回りも年上と言うことになります。
あの男性と紅葉さんは、挨拶をして分かれたようです。
そして・・・・、ズンズンと紅葉さんは柱の方に向かって来ました。
「巳波くーん!!お・ま・た・せ!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!紅葉・・・・さん・・」
「最初から、巳波君がのぞき見していたのは気がついていたわよ。」
紅葉さんは腕を組みながら、柱の影でしゃがんでいる僕を見下ろしています。
「アタシが、あの人と話してるのがそんなに気になってたの?」
紅葉さんは単刀直入に、僕の行動に対して問いただしてきました。
「え・・・・・。ま、まあ・・・・・。」
僕は、煮え切らないまま相づちを打ちました。
「うふふっ・・・。あの人はとてもいい人よ。」
紅葉さんは、とてもニコニコしています。
僕は、勇気をだして紅葉さんに聞いてみました・・・・・。
「紅葉さんは、あの人が好きなんですか??」
(言ってしまった・・・・・。もう後戻りできない・・・・・。)
「うん、大好きよ!!」
紅葉さんは、何の臆面もなく答えてきました。
僕は、紅葉さんの元気な返事にガッカリしました・・・・。
「だって・・・、だってね・・・。あの人は・・・・。」
紅葉さんは多少もったいぶった様子で話し出しました。
「あの人はアタシのカラダを、とてもよく知っているんだもん・・・・。」
(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
僕は、思いもよらない紅葉さんの告白に声が出なかった。
「いつ頃から、紅葉さんが何歳くらいからの関係なんですか・・・?」
ここまできたら、僕はもうとことん紅葉さんを問い詰めてしまう覚悟ができました。
(僕と紅葉さんの仲は、もう終わりだ・・・・・。)
「うーん、あの人とはアタシが7,8歳くらいの頃からの付き合いかなあ・・・。」
(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
そ、それはもはや犯罪ではないのですか・・・・・。
7,8歳の頃の紅葉さんと、あの男性が27歳くらのとき・・・・・・・。
紅葉さんは、幼いときに性被害にあっていたのか・・・・・。
僕はハラを決めていたとはいえ、意外すぎる紅葉さんの重い告白を受け止めきれる自身がなくなっていきました。
(ああ・・・・。紅葉さん・・・・・。僕と仲良くしてくれた紅葉さん・・・・・・。
サヨナラ・・・・・・・・。)
「巳波君・・・。」
「はい・・・・。
「本当に・・・・。あの人は、とても立派なお医者さんなんだから・・・・。」
「え・・・・・・・・・・・。」
「だから、あの人はアタシを小さい頃から診てくれたお医者さんなの!!」
僕の完全な早とちりでした。
「じゃあ、紅葉さんが服用している薬を開発したのも・・・・?」
「そう、あのひとはその薬の開発者の一人なのよ!」
(な、なんだあ・・・・・。ほっ・・・・・。)
僕は安心して、ホッと胸を何回も撫で下ろしました。
そして僕の拍子抜けした表情を、紅葉さんは見逃しませんでした。
「巳波君さあ・・・・・。」
「は、はい・・・・?」
「巳波くん、ひょっとしてアタシにヤキモチ焼いてくれてたのかなあ?」
紅葉さんは横目で僕を見て、ちょっと意地悪そうな笑みを浮かべていました。
「そんなわけないでしょう!!」
僕は焦って、つい強い口調で反論してしまいました。
「・・・・ふーん・・・・・・。」
紅葉さんは、廊下の側の手すりにもたれかかって相変わらず小悪魔的な微笑を浮かべていました。
ガシッ!!背後から僕の首根っこを誰かにつかまれました。
「おい!もうレッスン始まるぞ!いくぞ、夏目!!」
僕は、日向コーチに連行されていきました。
「巳波君、頑張ってね!」
紅葉さんは、ほんの少しの笑顔で手を振って僕を見送っていました。




