僕の頭が、整理つかない
・・・・。僕は、紅葉さんのアパートから家路につくことになりました。
・・・・・・・・。短い時間で、いろんな事がありすぎて、頭の整理がつきません。
僕の頭の、処理能力を超えてしまっています。
紅葉さんの、禁止薬物使用の心配は確かになくなりました。
でも・・・・・。でもです・・・・・。
僕は、紅葉さん本人が心配になってきました。
おそらく、紅葉さんの体では、プロテニス選手に復帰するのは難しいかも知れません。
本来は、紅葉さん激しい運動ができる体ではありません。
しかし、紅葉さんの内臓をサポートする薬が手に入った。
そして、紅葉さんにはテニスの才能があった。
紅葉さんは、テニスの才能に恵まれすぎている故に、無理をしてでもプロテニスの選手になった。
結果、紅葉さんは激しいテニスの試合を重ねているうちに、内臓に負担を強いてしまい痛めていったのだろう・・・・。
ひょっとしたら、紅葉さんは特に才能のない平凡な女の子に生まれた方が、幸せだったんじゃないだろうか・・・・。
無理をして、テニスを続けられるのは、若いときだけだろう・・・・・・。
だとしたら、紅葉さんの将来って・・・・・・・。
気がつくと、僕は帰路途中の公園のベンチに座っていた。
(・・・・・・・・。僕はこのまま、アメリカにいっていいのだろうか?
紅葉さんが心配で、仕方がない・・・。)
僕は、しばらく思考停止してたたずんでいました。
そして、僕の隣に人が座ってしました。
久しぶりに、あの人が現れました。
「巳波くん、元気ないね・・・・。大丈夫かな・・・・。」
桜さんは、心配そうに僕の顔をのぞき込みました。
僕は、振り向いて桜さんの姿を確認しました。
桜さんは珍しく、カンカン帽をかぶっていました。
まるで、どこかに買い物を行ってきた帰りみたいな服装でした。
「ああ、今日はお買い者の帰りなの・・・・。北部デパートとかでね・・・・。」
僕の推測は、本当に当たっていました。
誰と、お買い物に行ってきたのだろう、という質問は野暮なのでやめておきます。
「僕が言うのも何ですけど、桜さん帰りが遅いですね。」
桜さんは、お買い物だけにしては、帰りが遅いと思いました。
「巳波くんに会おうと思ったら、この時間になっちゃったのよ。」
桜さんは、いつも突然と現れる。
考えてみたら、桜さんは時間・場所を問わずに現れる。
(僕の部屋に現れたり、夢の中にも出てくるもんな・・・・。)
僕は、昨日今日のあった出来事を、全て桜さんに話しました。
桜さんには、何もかも隠し立てしなくて話す事ができます。
だって、僕がプロテニス選手を志すきっかけは、桜さんとの出会いだったから・・・。
桜さんは、僕の話を粘り強く、うなずきながら聞いてくれました。
「巳波君・・・・・・。」
桜さんは、僕の体に穴が開くのではないか、という位の強い視線を送りました。
「・・・・・はい?」
僕は、なにを桜さんに何を言われるのか、グっと緊張しました。
「悩んでも、何も変わらないよ・・・・。
何かをしないと、何も変わらないよ・・・・。」
桜さんは真顔で、とても思い言葉を、僕に与えてくれました。
「自分がやりたいことを、躊躇する理由を、無理矢理に作っちゃ駄目だよ。
巳波君は自分がプロになる勇気が揺らいでいるのを、紅葉さんのせいにしようとしているよ。」
(・・・・・・・・!)
確かに、桜さんの言うとおりです。
僕が、今ここで悩んだところで、紅葉さんの病気が治るわけではありません。
紅葉さんが、せっかく僕のことを応援してくれているのに、僕はその気持ちを裏切っていた・・・。
「わかった・・・!僕は、僕のやるべき事をやめちゃいけない・・・・・!」
僕は、自分の気持ちを再確認できました。
(・・・・・・・・・・・・。)
今回も、例によって桜さんは、いつの間にかいなくなっていました。
僕は、若干しっかりとした足取りで帰宅しました。




