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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
22/312

何故か、懐かしい味・・・・

 僕は、頭が真っ白になっていました。

というより、頭が真っ白になるとはこのことだと、理解しました。

 僕は紅葉さんに対して、抵抗しようという気持ち全く湧いてきませんでした。

 紅葉さんには、今までとても優しくしてもらいました。

 そんな自分が、紅葉さんと争う事などできるであろうか?いや、できるはずがない。

 僕は今の紅葉さんが、薬物に侵された女性であろうと、あるいは悪魔であろうと、彼女の存在を批准する覚悟です。

 僕は・・・・。紅葉さんになら・・・・、殺されても文句は言わない・・・・・!

 僕は、腹を決め目をつぶって下にうつむきました。


 -----------------------------------------。

 しばしの・・・・、沈黙が続きました。


 ザッザッツ!ザッ、ザッツ!・・・・ザッ、ザザッツ!!

(・・・・・・・!?)


 ザッ、ザザッ!!ザザザッ!!

(ええっ?何の音なんだろう・・・・?)


 -----------------------。

(ん??なんだろうこの香りは・・・?僕は、この香りをおそらく知っている。)


 僕は・・・・。僕は、恐る恐ると薄目を開け始めました。

すると僕の目の前に現れたのは------。


 「巳波くん、落ち着いてよ。」

紅葉さんは、小さなナイフを使ってパンにバターを塗っていました。

 ・・・・・・・・・・・え!!

(なんだ、紅葉さんが握っていたのはバターナイフだったのか。)

どうやら、僕の勘違いでありました・・・。

 

米注釈・・・・バターナイフとは、パンにバターもしくはマーガリンを塗るための道具である。夏目は、これを小さなナイフと思っていたのであろう。


 「巳波君、お食べ・・・。」

紅葉さんは、とても優しい表情で僕にパンを差し出してきました。

僕はガクッと拍子抜けしましたが、素直に紅葉さんのパンを受け取り食しました。

「あ・・・・。このパンおいしいですね。」

本当にこのパンは、とても美味しかったです。

しかも、このパンの味は、僕にとってなんだか・・・・・。


「巳波君、とってもおいしいでしょ?アタシの実家は、老舗のパン屋さんなのよ。」

紅葉さんの実家がパン屋さんとは、意外や意外でした。


 でも、きっと紅葉さんも実家にいるときは、パン屋さんの手伝いをしていたんでしょう。

僕は勝手に紅葉さんが、三角巾とエプロンを着用した姿を想像してしました。

(なかなか、可愛いじゃないか・・・。)

僕は、おそらく小声でブツブツ呟いていました。

しかし、僕はあることに気がつきました。

(あれ?僕は、このパンの味を知っている。間違いなく以前に、僕はこのパンを食べていた。僕はどうして紅葉さんの実家の、パンの味を知っているのだろう。どうして・・・・・?)


 「うふふ、巳波くんは前から、アタシん家のパン大好きだったもんねー。」

紅葉さんは、右耳に人差し指を添えて、ニコニコしていました。

「・・・・・・・・!!え!?」

まるで紅葉さんは、僕を以前から知っているかの様な台詞を出しました。


 「ううん、独り言だから・・・・。忘れて、忘れて・・・・。」

紅葉さんは、それ以上の事は言おうとはしませんでした。


 「ーって、ごまかさないでくださいよ、紅葉さーん!!」

僕は、危うく紅葉さんに話を、脱線させられていたことに気がつきました。

 「タハハ、ばれちゃったか!」

紅葉さんは、右目をつぶって、ちょっとベロを出していました。

そして紅葉さんは、両目ともつぶって、とても深いため息をつきました。


 「巳波君には、どうしても話さないといけないようだね・・・。」

紅葉さんは、急に改まった様に神妙な顔つきに変わりました。

 僕は、おそらく深い訳があるのでないかという、わずかな望みが沸いてきました。


 「巳波くんが、アタシから聞きたいことは、この雑誌の記事のことだよね?」

紅葉さんは、昨日に僕が見た雑誌を持っていた。

(紅葉さんもこの雑誌を持っていたのか・・・・。)

「巳波君、心配させてごめんね・・・・。実はこの雑誌の記事で書いていることは、本当の事なの・・・・」

 僕の目の前は、シャッターが閉じられたように真っ暗になりました。

(そ、そんな・・・・。紅葉さん、それはないよ・・・。)

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