紅葉さんの走馬燈
僕は紅葉さんの部屋で、注射器と粉状の薬・錠剤を発見しました。
(これは、これは何なんだろう・・・・)
ハッキリ言って、悪いことしか僕の頭には思い浮かばないです。
やはり紅葉さんは薬に頼ってテニスをしていたのでしょうか。
実際そうだったとしたら、全ての疑問に説明がつきます。
紅葉さんが、国内の試合で圧倒的強さを誇っていた理由。
紅葉さんが国内の試合を優先させて、海外の試合の出場回数が他のプロよりも著しく少なかった理由。
紅葉さんが特に大きな怪我をしているように見えないのに、プロ活動を休止している理由。
今プロ活動を休止しているのは、やはり薬物の使用が原因なのだろうか・・・。
(こんな馬鹿な・・・・。これは何かの間違いだ・・・・。)
紅葉さんが、薬物を投与している姿・・・。
僕の今までの、紅葉さんに対する感情からは、あまりにギャップが大きすぎます。
本当に紅葉さんは、薬物に依存しているのだろうか・・・・。
今までの、紅葉さんとの思い出が走馬燈のように頭をグルグルまわる。
テニススクールでは、僕に対してお姉さんぶっていた紅葉さん。
ときたま、無邪気で子供っぽいところのある紅葉さん。
僕の事を、いつも気にかけてくれた紅葉さん。
僕がプロテニス選手になるのを、本気で応援してくれた紅葉さん。
ちょっとエッチな悪ふざけをしてくる紅葉さん。
僕は、気まぐれにいろんな顔を見せる紅葉さんが大好きでした。
でも、僕は全ての紅葉さん像が否定されたような・・・。
そんな決定を下されたような気分でした。
(そうだこれは夢なんだ。今回も夢オチなんだ・・・・!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
でも、この悪夢から覚めるような兆候は全く見られないです。
これは、冷酷なまでの現実の状況です。
今の僕の頭の中で、紅葉さんは{自由の女神像}の姿をしていました。
そして、その紅葉さんの自由の女神が、容赦なくガラガラと崩れていきました。
紅葉さんの形は粉々に砕け散りました。ほぼ、彼女の原型をとどめないように・・・・・。
ハッ・・・・!!
僕は、とある時突然に我に返りました。
(ああ・・・・。)
僕は背後に、あの女性の気配を感じました。
気がついたら、背後に紅葉さんが立っていました。
紅葉さんの顔を見るのがとても怖かったです。
それでも、紅葉さんは普通に口を開けました。
「あーあ。ばれちゃったら、仕方がないなあ。」
紅葉さんは腕を組み、悪びれもないような様子で僕に話しかけてきました。




