プロテニス選手への道
僕は、努力を続けていた。高校でもインターハイに出場し全国レベルの選手になりました。ただ、全国レベルではいけないんです。僕はプロテニス選手になるという目標があるのだから・・・・・。いや、正確に言うと、僕にテニスを教えてくれたあの、女の子と話がしたいだけなのだが・・・・。その未練もあってか、僕は今でも河原の堤防でのラケットの素振りを継続しているのでした。
この休日も堤防で素振りです。いつもならば、一人のストイックな練習です。しかし、本日は違っていました。そこにあの人は、いたのです。
「久しぶりね。」彼女は僕に対して、以前と変わらない優しい口調と表情で声をかけてきました。
「あ、あの・・・・。」自分は何を話して良いのか、なかなか言葉が出ませんでした。本当は彼女の正体が知りたいのに、まさか本人がいきなり目の前に現れてくるなんて思いもしませんでした。
しかし、いざその女の子と話をすると、僕の今のテニスの状況についての会話になりました。自分自身がプロテニス選手になりたくなった事を彼女に伝えました。
「本気になりたいならアカデミーに留学すべきだと思うよ。はっきり言うけど、プロテニス選手になる人は君の年齢ならすでに世間に注目されているよ。だから今の現状からプロになりたければ、背伸びをした武者修行をしないといけないよ。 私はアメリカでやってたけどね。プロになるための具体的なプランを立てて、行動を起こそうよ。」女の子の熱い語りに、僕は圧倒されました。
結局のところ久々に彼女と再会ができたのに、彼女が今なにをしたいるのか(プロテニス選手なのか)確認することが叶いませんでした。その女の子にあえた嬉しさと、旨く喋れなかった残念さが半々で一日は終わりました。
その後、僕は高校テニスのトッププレーヤーとして学業を終えることができました。それでも、プロのレベルに達していないと自分では分かっていました。
僕はプロになす事をあきらめていません。アメリカのテニスアカデミーに留学することを決意していました。しかし、そのことに対して大きな問題が立ちはだかっていました。
僕の家は母子家庭です。とても母に、テニスで海外留学をするなどいえません。では、どうやってテニス留学をするのか?自分なりの方法を考えてみました。それは、テニススクールのコーチになって留学の費用を貯める事です。コーチをすることによって、テニスの勉強もできて、一石二鳥の成果をねらっているのです。早速実行に移すことにしました。
県内のテニススクールのコーチ募集に応募しました。採用テストと面接が同日に実施されることになりました。自分なりに、志望動機・熱意・テニス技術の再チェックなど、準備は行いました。
採用試験の当日になりました。その試験には僕含めて二名の受験者が参加しておりました。そのもう一人の受験者は、二十歳そこそこな感じに女性でした。
僕は採用試験は集中して望めたと思いますが、ただそれ以外に一点が気になりました。(その時点で集中できているといえないのかもしれませんが・・・。)
もう一人の受験者の女性になんか見覚えがあるのでした。そのぼんやりした思いを抱きながら、無事に採用試験を終えることができました。
そして、結局今回の採用試験は受験者二人とも合格しました。小さな前進をしたと、自分自信で勝手に納得していました。
テニススクールのコーチ見習いとして、僕は毎日忙しい日々を送っていました。テニスレッスンの補助は勿論の事、雑用的な仕事も多くありました。働くと言うことは地道な作業があっての事だと思い知りました。これも自分のテニスをやりながら留学資金を貯めるという、目標のためなので体力的に苦しいとは思いましたが精神的につらいとは感じませんでした。仕事の日々において、新しい発見もありました。他のコーチのプレイを見ていると大変参考になるのです。それぞれのコーチは生徒に教えるだけのことはあって、基本に忠実なそして理にかなったフォームであるのです。高校テニスで全国レベルになったからといっても、まだまだ自分の知らないテニスプレーヤーが多くいることが分かりました。それと同時にもっと謙虚な気持ちでテニスに取り組もうと気持ちを新たにしました。
「どう、仕事にはもう慣れましたか?」僕と同時に採用された女性コーチが声をかけてきました。
「はい、仕事はやりがいがありますよ。」正直な気持ちで、答えました。
「確かにとても頑張ってるけど、なにか別の目標があるようにみえますね。」女性コーチ図星をつかれました。
「なんだか、君は私と同じ種類の人間に見えるんだよね。今度のシフトのお休みはなにか予定とかはいっていますか?」急に女性にお誘いがありました。
「いや、特に大事な用はありませんけど・・・・・。」重要な用事などありません。
「じゃあ、こんどのお休みに私とどっかに行きましょう!いっぱい、お話したいんだ。」
突然の脱線的な展開に僕は断ることができませんでした。一抹も三末もの不安を抱えつつ、彼女とのデート(?)の当日を迎えることになりました。僕はどうなるのでしょうか??