テキパキと・・・
病院での診察の結果、紅葉さんは普通の風邪でした。おそらく、疲れが疲労性のものであろうということでした。薬を飲んで寝ていれば、問題なく回復するとのことです。僕はホッと胸をなで下ろしました。
紅葉さんをアパートに送り届けました。(考えてみたら、若い女性の部屋に入るなんて初めてだなあ・・・)僕は、紅葉さんに肩を貸しながら部屋に入りました。
「おやっ・・・」僕は思わず声を出しました。
(紅葉さんのイメージと違うなあ・・・。)
目についたのは、ヌイグルミでした。カニとか、犬とかその他、とても可愛らしい感じのものでした。きっと子供の頃から、これらを大事にしているのではないかという感じがします。
(紅葉さんって、意外と女の子っぽい一面もあるんだなあ。)僕はある意味、紅葉さんに対して安心感を持ちました。
紅葉さんを慎重にベットに寝かせて、薬を側に置きました。僕は長居をせずに帰ろうと考えました。
いくらなんでも、男女二人きりはまずいと思います。しかも紅葉さんは、体調不良でぐったりとしています。しかし診察の通り、風邪だから寝ていれば大事には至らないはずです。
「巳波君、帰るの・・・?」紅葉さんは、薄目をあけながら呟くように言いました。
「はい、申し訳ないんですけど・・・・。僕は帰ろうかと思います。」僕はとても言いにくいけど、はっきりと言いました。
「巳波くんに、風邪をうつしてもいけないよね・・・。でも・・・」紅葉さんは、少しためらいがちに言いかけました。
(でも・・・。なんでしょうか。)僕は、若干不安を抱えていました。
「あたしをパジャマに着替えさせてくれないかな・・・。お願い・・・。」紅葉さんは、残り少ない声を振り絞るような様子で僕に訴えかけました。
「う・・・」僕は、紅葉さんのお願いに思わずたじろぎました。
確かに、汗をかいたテニスウェアを着用したままでは、余計に体調を悪化させるかも知れません。
しかし、若い女性をを着替えさせるなんて、僕にはハードルが余りにも高すぎます。
「それは、ちょっと紅葉さん、ごめんなさい・・・。」ぼくは、力なく断ろうとしました。
その反面、そのまま紅葉さんの元を去るのは可愛そうになってきました。
その瞬間に、僕の心の中に(それは違うぞ!)という声が響きました。
(そうだ、僕が勝手にいやらしく考えているだけなんだ。紅葉さんは本当に僕に助けを求めている。)
「分かりました!!紅葉さん。」僕はテキパキと、紅葉さんを着替えさせてあげる決心をしました。
「あの、紅葉さんパジャマはどこにありますか?」
「あの衣装ケースの引き出し、一番下・・・・・」紅葉さんは、意識がもうろうとしている様子でした。
「了解しました!紅葉さん。」僕は早速に、衣装ケースの一番下の引き出しをあけました。しかし・・・。
「なっ・・・・。」僕は、絶句とともに体が硬直しました。それもそのはず・・・・。
僕が開けた引き出しには、紅葉さんの下着が敷き詰められていました。
「ん・・・。一番下から、二番目の引き出しだよ・・・・」どうやら、紅葉さんに悪気はなさそうでした。僕がテキパキしようとしたことが、逆に仇になってしまったようです。
(うわああ!!今のは忘れる、忘れる!!)僕はブンブンと頭を振りながら、気を取り直そうとしました。
僕は紅葉さんのテニスウェアを脱がしました。
そして、お湯で濡らしたタオルで紅葉さんの体を拭きました。
僕は何とか無事に(?)紅葉さんをパジャマに着替えさせることができました。
「巳波くん、ありがとう・・・体まで拭いてくれて、ありがとう・・・」
本当に紅葉さんは、心から僕に感謝している事が伝わって来ました。
「じゃあ、僕は帰りますね。明日また来ますからね。」
(スヤスヤ)紅葉さんは、完全眠ってしました。隠さずに寝顔を見せるときの紅葉さんは、ちょっと可愛いな、と思いました。
僕は、まだ心配な感じもしましたが、帰ることにしました。と今日はまだ、これで話は終わりませんでした。
僕は、帰りのコンビニでとある雑誌を手にとって動揺しました。
この雑誌の記事が、僕にとって大きな出来事に発展することになるのでした・・・・。




