来たようね!
午後のアカデミーの練習が再開しました、が・・・。
僕は有ることに、気がついたのでした。
それは今までとは違うオーラというものを、広い範囲で発されていることを感じたことなのです。
要するに、自分に対するサニーの態度の異変だけではないのでした。
コートの中にいる、ほぼ全員の雰囲気がピリピリしていたのです。
そんな全体の雰囲気を見て、僕は不安を感じることを禁じ得ないのでした。
「あのさ、サニー・・。」
僕は側にいたサニーに、なにかを言おうとしました。
「なに?」
やはりサニーは、素っ気ない相づちを打ってきました。
そんな彼の横顔は、練習中に話しかけられる事に、煩わしさを感じていることを物語っていたのです。
「ごめん、なんでもない・・・。」
僕は、自ら会話を打ち切ってしまいました。
今はサニーにも、核心に触れる事を聞きずらい雰囲気だったのでした。
そこで僕は、この雰囲気を忘れるために、練習に打ち込むことにしました。
が、しかしスッキリしないものを抱えたままに、充実感のある練習とはいきませんでした。
(本当にみんな、どうしちゃったんだろうか・・・。)
一日の練習を終えた僕は、アカデミーのレストランに夕食を取りに行きました。
「いらっしゃい!」
いつも通り、ウェイトレスのムーンが接客をしてきました。
「何か?」
ムーンは僕の顔見て、問いかけてきました。
どうやら彼女は、僕が何か疑問に思っていることを見抜いているようでした。
しかし本当に世の女性は、相手の表情から変化を読み取ることには、非常に長けているものだ、と感じます。
恐らくその理由は、太古の時代から自分が育てる子供の体調の変化を読み取ることが、命を繋いでいく上で必須なものであった、とどこかで聞いた記憶があります。
それが、いわゆる母性本能とも言うべきものなのでしょうか・・・・。
「心配しなくても、そのうち分かるよ!」
彼女は元気に、僕を励まし(?)てきました。
その言葉には、一切の根拠は有りません。
だから元気な彼女の言葉が、余計に僕の疑問を増幅してしまうのでした。
僕は悶々とした気持ちを抱きながら、夕食を取ったのでした。
そして、このままでは、身も心も消化不良に陥ってしまいそうなのでした。
「今日も、有り難うございました!!」
ニッコリと会計を対応したムーンの笑顔に、僕の心はトドメをさせられたのでした。
(・・・・・・。)
自分は今夜、まともに眠りにつく事が出来るのでしょうか?
そのまま僕はスタスタと、アカデミーのレストランを後にすることになりました。
勿論、モヤモヤとした鬱憤を抱えながら・・・・。
しかし、そのタイミングで・・・。
================ お待ちになって!! ====================
「えっ!?」
突然の呼び止めに、僕は驚愕の表情を隠し得なかったのでした。
振り向くとウェイトレスのムーンが、そこに立っていました。
「ん!?
ワタシが呼び止めたのが、そんなにビックリしたの?」
ムーンの方も、少々僕の反応に面食らった様な表情をしていました。
「いや・・・。
その事じゃなくて、君の言葉遣いが・・・・・。」
「言葉使い!?」
一体、彼女はいきなり何で、そんな言葉を使ったのでしょうか・・・。
まあ、それはさして重要な問題ではないのですが・・・・。
だから僕は、ムーンの謎の台詞には、これ以上触れないで起きました。
「今夜は、時間は開いているの?」
ムーンは、そのサラサラとした金髪を右手で書き上げながら、僕に質問をしてきました。
自分はゴクッと、唾を飲み込んだのでした。
「ま、特に用事は無いけど・・・。」
「じゃあ、前と同じところで、待ち合わせしようよ!」
ムーンは、顔をちょっとだけ右に傾けてウインクしていました。
「今日は前よりも、可愛い格好していくからね!」
「は、はあ・・・・。」
勢いのある彼女に、僕は待ち合わせの約束をしました。
(うーん、ムーンは一体どうゆうつもりなんだろうか。)
ますます腑に落ちない僕は、外出の服装の着替えながら彼女が何を考えているのか想像していました。
ひょっとしたら、本当にデートのつもりなのかも知れません。
なにせ前回の外出の時も冗談っぽくとはいえ、そう言っていたのですから。
そして急に胸に引っかかるものが、もう一本増えたのでした。
(ま、まさか・・・、これは・・・・。)
================ お兄さんは、女難の相があるわね・・・・ ==========
(・・・・・・!!!!!)
前回の外出の時に、いきなり占ってきたサニーのお姉さんの走馬燈が自分の脳裏をよぎったのでした。
(くっ、くわっ・・・・、僕はムーンに振り回せれるのか?)
自分は、あまり占い等の類は信じたりはしない主義なのですが、状況的にこのように推察した方が自然な気がするのでした。
と、言うことは・・・・。
=============== 下手に逆らわないことね ==================
サニーのお姉さんの言葉が、続けて思い起こされたのです。
(そうか、流れに身を任せたらいいのかな・・・。)
僕はそのように考えることにしました。
だって、その方が気が楽なのですから・・・。
そして僕は時間をおいて、その約束の場所に行きました。
ムーンはまだ来ていませんでした。
「お待ちどう様!」
1分も待たずに、彼女は僕のもとに現れました。
(おっ・・・・。)
現れたムーンをみて、僕は思いました。
(有言実行だな。)
彼女は、青いリボンの付いたカンカン帽に、白と青のチェックのシャツにクリーム色のカーディガン、水色基調のマキシスカートを身につけていました。
靴も、いつものスニーカーではなく、少しだけヒールの上がったスマートなものでした。
こうしてみると、ムーンはまるで女の子の様でした(失礼!)。
「言ったじゃないの!」
僕の視線を感じているのか、感じていないのか、彼女は得意満面に両拳を腰に据えていました。
(僕はこれからどうなるのだろうか・・・。)
ムーンに対して不安と期待が、大きく入り混じっている自分なのでした。
しかし僕のワクワクした気持ちは、そこでストップをかけられる事になるのでした。
「来たようね!」
ムーンの言葉に、僕はハッとしました。
彼女は、誰かを待ちわびていたのでしょうか。
どうして・・・・・?
僕はムーンと顔の向きを、同じくしました。
「あっ!!」
と僕は驚きました。
何故かというと、全く予想もしない事が起こったからなのです。
今回は、どうやら三名で出発するようでした。
「サ、サニー・・・。」




