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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
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紅葉シアター

 いつも通り、僕はテニススクールで業務をこなしていました。残り少ないここでの仕事も、だんだん名残惜しくなってきました。(やっぱりここは、僕にあっていたんだなあ・・・・。)

「みーなーみーくーん。」背後から、紅葉さんが背後から若干猫なで声で呼びかけてきました。


 「はい、なんでしょう。」僕は、だいたい何を言われるのか想像がついていました。

「明日の、休み映画に行こう!」紅葉さんは、ワクワクしている感じでした。

「はい、わかりました。」僕は、断る理由はないし、紅葉さんにはお世話になっているので行くことにしました。それに、上機嫌の紅葉さんの誘いを断るのは、なんだか可愛そうだし・・・。


 その夜、僕は雪乃に電話をしました。僕は、女性と映画を観に行ったことは一度もありません。だから、僕と紅葉さんの共通の知り合いです。だから、僕の悩みを相談できるのは雪乃しかいません。雪乃さんに、僕は率直にどうしたらよいのかアドバイスをお願いしました。


 「紅葉も一応女の子だからね。巳波くんとは恋愛ものを見るのを期待しているんじゃないかな。紅葉は、あれでとても寂しがり屋だし。」雪乃さんは、僕を安心させるように答えてくれました。(そうか、あまり心配しなくてもよさそうだ。)


 さらに雪乃さんは、今上映中のおすすめの映画を教えてもくれました。一つは洋画の恋愛もの、それとアニメの恋愛ものでした。(うーん。紅葉さんのイメージからして、アニメの恋愛ものがいいかも。)

 近い世代の女性に話を聞いてもらって、僕の不安はほぼなくなりました。

 

 そして翌日に、紅葉さんと待ち合わせの場所で会いました。

 「おはよう!巳波くん。」低血圧で朝に弱い僕に対し、紅葉さんは元気に朝の挨拶をかけてきました。

 その日の紅葉さんは、黒のレザーのミニスカートと、黒革のブーツ、白地に赤の模様のポロシャツ、何故かカウボーイハットをかぶっていました。なんだか、アクション映画のヒロインの様な雰囲気の格好ですが、何故そうなのかその後に分かることになります。


 映画館にたどり着きました。この映画館は複数の映画を上映しており、今上映中の主要なタイトルは大体網羅しております。

「紅葉さん、今回見る映画ですけどこれなんかどうかなあ・・・・。」僕は紅葉さんに、アニメの恋愛ものをお勧めしようとしました。

「巳波くん、これこれ!!」紅葉さんは、僕の言っていることがまるで耳にはいっていません。

紅葉さんが指さした映画のタイトルを見て、僕は愕然とした。

映画のタイトルは、<燃えよ!サラマンダー>。


※注釈 

<燃えよ!サラマンダー>・・・香港の有名アクションスター、ジャッカー・チンの最新カンフーアクション映画である。


 (雪乃さん、違うじゃないですか・・・。紅葉さん、ちっとも女の子じゃないじゃないですか・・・・。)

前日の雪乃さんのもっともな講釈を思い出して、僕はうなっていました。

「さ!巳波くん、いこういこう!」僕は紅葉さんに強く手を引っ張られていきました。(でも、紅葉さんの手は柔らかいなあ・・・。)僕はちょっとだけ、ホッとしました。


 紅葉さんは手早く、入場券を2人分買いました。

 「あ、僕の分は自分で払いますから。」僕は財布と取り出して、言いました。

 「あたしが誘ったんだから、あたしがだすよ。」紅葉さんは、僕の頭を軽くポンポンと叩きました。入場窓口のおばさんが笑っています。そして、さらにおばさんは、2つの物を紅葉さんに手渡しました。

(こ、これは・・・!)


 その2つの物は、主人公の使用するヌンチャク、ヒロインが着用しているヘアピンでした。

 このアイテムは、この映画をアベックで入場した場合にもらえる、映画鑑賞特典でした。

 「わたし、ヌンチャクね。巳波くんはヘアピン。」(紅葉さんは、これが目的だったのか・・・・。)

 「いや、両方とも紅葉さんのものでいいです。」僕は、テンションが下がり気味に答えました。


 ついに映画が上映開始されました。左に座る紅葉さんをみました。とても、目が輝いています。

 映画のストーリーが進行し、ついにクライマックスのアクションシーンが始まりました。ここからが、大変でした。

 

 紅葉さんはヌンチャクをクネクネさせ、脚を上げたり、腕を振ったりじっとしていませんでした。

(ああ、そんなにバタバタしたらパンツ見える。)


 僕は、他の人の迷惑になったらと、気が気でありませんでした。

「彼氏くん、大変ね。」右隣の女性が、僕にねぎらいの言葉をかけてきました。

そして、反対側の親子連れは僕たちを見て笑っています。(うう、さらし者だ・・・。)


 なんとか映画は終わり、僕は疲れ果てていました。紅葉さんはとても元気です。

しかし、僕と紅葉さんの映画鑑賞はこれで終わりではありませんでした。クライマックス映画館の通路で起こりました。紅葉さんは急に、立ち止まりました。


 紅葉さんは、ご機嫌でいきなりヌンチャクをズバッ、ビュンビュンッ、シュバッ、と振り回し、バシッと映画の主人公と同じポーズを決めました。

 「おねーちゃん、かっこいい!!」近くにいた、ちいさな男の子が、大喜びしていました。

 紅葉さんはとても得意そうでした。


 (紅葉さん、無邪気・・・・。)

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