どこよりも速くー!
いよいよ、全米オープンが開催されたのでした。
とはいっても、僕はいつも通りにアカデミーで練習をしています。
だから試合会場に行くことは勿論、生放送で試合を観戦することも叶いません。
自分に出来ることは、新聞やテレビニュースで試合結果を確認するだけになってしまうでしょう。
先日に、ムーンから見せてもらった全米オープンのパンフレットをみて、僕のよく知っている人の名前を知ることができました。
四季折夫、冬木雪乃、オウバー・キャスト、レイ・スプリンクルの四選手です。
僕は午前の練習を終えて、昼食をアカデミーのレストランにいました。
たしか雪乃さん以外は、(※)ノーシードの選手でした。
※ノーシード・・・予選を免除されて、決勝トーナメントから出場する選手。実績が高い選手(世界ランキングが上位)が優先的に選ばれる。
と、言うことは3選手は、世界でもトップレベルの選手と言うことになります。
断っておきますが、雪乃さんもレベルの高い選手です。
世界中の選手が待つ待ってくる大きな大会で、予選を免除されるということは、それだけ凄い実績を持っていると言うことなのです。
(凄い選手・・・・・。)
実際に彼らと関わった僕は、思いを張り巡られていました。
(折夫さん・・・。)
男子シングルス世界ランキング10位以内にも入る強豪選手、四季折夫さん・・・。
彼に関する走馬燈が、僕の脳裏をよぎります。
(・・・・・・・。)
いつしか、折夫さんが紅葉さんのオッパイを突っついて、平手打ちを食らっていた光景が浮かんできました。(※33話参照)
(・・・・・・・。)
さらに情景が現れてきました。
試合中に紅葉さんの袖口からブラジャーを覗き込んで、胸ぐらを捕まれて持ち上げられたことを・・・・。(※49話参照)
(お、折夫さん・・・・。)
(オウバーさん・・・。)
南米アルゼンチン出身、オウバー・キャストさん・・・・。
彼に関する記憶が、僕の脳裏をよぎります。
(・・・・・・・。)
バーで、酔っ払いに絡まれた事を・・・・、勿論その酔っ払いはオウバーさん・・・。
そしてムーンに背中をバンッと叩かれて、酔いつぶれていた事を・・・・。
(お、オウバーさん・・・・。)
(レイさん・・・・。)
東欧ハンガリー出身、レイ・スプリンクルさん・・・・。
僕の頭の中に、彼女の姿が現れつつありました。
(・・・・・・・、やっぱり考えるのはやめよう・・・・。)
ボクはレイさんの事を、妄想(?)するのを寸前でストップさせました。
(れ、レイさん・・・・。)
ひょっとしたら自分のイメージの中で、まとも(!?)なのは雪乃さん、だけなのかも知れません。
「ふうっ・・・・・。」
僕は何ともいえない、ため息をついていたのでした。
「やっぱり、気になっているんだね!」
「わっ!?」
その元気の良い大きな声に、ボクはビックリしてしまいました。
今日も、ウェイトレスのムーンが注文した料理を持ってきました。
「うーん、まあ・・・。」
「うふふ・・・。」
彼女は、よく分からない含み笑いのような表情をしながら、厨房にいきました。
そして昼食を終え、会計も終えようとしていました。
「今日も有り難うございます!」
チーン!とレジの音が鳴り、おつりをムーンが手渡してきました。
「ごちそうさま。」
ボクがレストランを去ろうとした、そのとき。
「教えてあげようか!」
ガバッと、彼女はレジから身を乗り出してきました。
「わわっ。」
ムーンの急な行動には、いつも焦らされます。
「アンタが気になる人の、試合の結果を教えてあげようか!」
「は、はい・・・。」
僕は彼女の迫力に、完全に圧倒されていました。
「どこよりも速くー!」
突然、ムーンはガバッと、両手を高々とあげました。
(な、なんだ・・・、この野戦動物の威嚇のようなポーズは・・・)
しかもウェイトレスは、何故か得意げな表情なのでした。
僕は彼女の行動に、若干の戸惑いと危険(?)に近いものを感じたのでした。
「貴方の気になる人の、情報をお届けしますー!!」
そういってムーンは、バンッ(!)と両腕を大きく広げたのでした。
・・・・ついでに、大きく脚も広げていました・・・・。
(・・・・なんて、あられもない格好なんだ・・・。)
今の僕はムーンに対して、呆れつつも見とれていました。




