名を、その異名(?)と共に
◎全米オープン(英語:US Open)
アメリカ・ニューヨーク市郊外にあるフラッシング・メドウのUSTAナショナル・テニス・センターを会場として、毎年8月の最終月曜日から2週間の日程で行われる4大国際大会の一つである。
観客動員数や賞金総額はテニス競技大会で最大である。主催および運営は全米テニス協会(USTA)。
数日が経過して、全米オープンの開催日になったのです。
しかもその大会は、僕が修行しているアカデミーと同じ、アメリカ・ニューヨークでの開催なのです。
とはいえ、ボクはアカデミーで練習していて、リアルタイムで試合を見ることは、ほぼ不可能なのでしたが・・・。
今日の朝食は、アカデミー内のレストランでとっていました。
「気になる?」
ウェイトレスのムーンが、食事を運んできました。
「うーん、そりゃあ・・・知っている人がいるから・・・。」
先日の状況からして、今回の全米オープンには、雪乃さん、折夫さんが間違いなく出場しているでしょう。
「気になるよね!」
気持ちを察しているのか、ムーンはニッコリと笑っていました。
ボクはトーストとベーコンエッグを食べながら、気になっているものの少々モヤモヤしてものを持っていました。
食事は終わりました。
「ちょっと待っててね!」
会計はもう済ませたのですが、ムーンは何か用事があるのでしょうか。
彼女はボクに背中を向けて、何やらゴソゴソとしていました。
(ん・・・、渡し物かな・・・?)
「うーん・・・、どこかなー。」
ムーンは、どうやら探すのに手こずっている様子でした。
そんな彼女を見ている僕は思わず、ちょっと目をそらしてしまいました。
だって・・・、露骨にお尻を突き出しているから・・・・。
(・・・大きな、お尻だなあ・・・・。)
「あった!
あったあ!!」
「うっ!?」
ムーンが大きな声を出したので、ふと我に返りました。
「はい!」
彼女は全く、危機感のない表情でした。
そして僕が何を考えているのかも、おそらく気が付いていないムーンは、冊子のような物を差しだしていたのでした。
「こ、これは・・・。」
自分に差し出された冊子は、今回の全米オープンのパンフレットでした。
「知りたかったんだよね!」
そうです・・・、満面の笑みを浮かべる彼女の言う通りでした。
この全米オープンのパンプレットには、出場する全選手の名前が紹介されているようでした。
これはまさにボクの抱いている疑問に対して、答えてくれる存在なのでした。
疑問でモヤモヤしていた僕は、レジの前でいることも気にせずに、パラパラッとパンフレットをめくっていきました。
折尾さん・・・、雪乃さん・・・・。
確実に出場していると思われる名前は、発見しました。
(勿論、出場してるんだよな・・・。)
でも確認は、それだけでは終わらないのでした。
そして再びパンフレットをめくってみると・・・・。
(・・・・・・・・・・・・!!)
オウバー・キャスト・・・・・。
(この人、やっぱり・・・・!)
「あー!
オウバーね!」
「こ、この人、プロのテニス選手だったんだ・・・。」
薄々、ボクは気が付いていたのですが、腑に落ちない点もあったのでした。
だって、テニスのレベルが高いのは分かるのですが、あれでは完全に酔っ払いのオジサン・・・。
「ん?」
ムーンがパンっと、僕の肩を叩いてきました。
「信じられないんだね!」
「い、いや・・・・。」
彼女は、どうやらボクが何を考えているのか、お見通しの様子なのでした。
「でも!
あのオッサン、凄いんだからね!」
そう言いながら、ムーンは人差し指を軽く左右に振って、ボクに納得させようとしているのでした。
(そういえば、ムーンはオウバーさんと知り合いのような感じだったなあ・・・。)
そしてさらに、ボクはページをめくっていきました。
「あ!」
ボクは、丁度中ぐらいの驚きの声をあげました。
と、いうのも、これは十分に予想できていたからなのでした。
(や、やっぱり、この女は、プロ選手だったんだ・・・。)
自分のパンプレットを握る手が、少しだけ固くなっていました。
「ふーん!」
(のわっ!!
ち、近い・・・!)
気が付くと、ムーンの大きな瞳が、僕の顔を至近距離で覗き込んできました。
そして・・・。
何故かムーンは、右手を天井に向かって伸ばして、左の拳を腰に当てていました。
「レイ・スプリンクル!!
ブダペストの悪魔!!」
彼女はレイさんの名を、その異名(?)と共に、声高々にコールしたのでした。




