表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第2章 修行
110/317

僕の誕生日

 あのひとは、今どうしているのでしょうか…

 お昼の休憩中、僕はテニスコートの近くのベンチに座って、考えに耽っていました。

 あの女性から頂いた、真っ赤なカニのキーホルダーを眺めていると、故郷の国を思い出してきました。

 

 ===========あれは僕の誕生日でした==================

 

 それは八月の上旬ー。

 ボクはまだ、そのとき日本にいました。

 残り少ない日本での生活を、自分としてはあまり実感できずにいました。

 そして仕事の後、最近毎日通っているところに、足を運んだのでした。

 いつも通りにドアを開けました。

 しかし・・・・・。

 (あれ・・・・?)

 いません・・・!

 あのひとの姿が、見えないのでした。

 (トイレでも行っているのかな・・・。)

 仕方なく僕は、とりあえず待っていることにしました。

 ところがその静寂は、永くは持たなかったのでした。


 =============== バアーーー!!!!!!! ===============


 「どわあああ!!!!!!!!!!!!」

 背後からの不意打ちに、ボクは遠慮無く、驚きの声を上げてしまいました。

 「あっははは!」

 パジャマ姿の女性は、お腹を両手で押さえて、大きく口を開けて笑っていました。

 「驚かさないでくださいよ! 

 紅葉さん!」

 彼女のふざけた行為に、自分としては慣れていたつもりでしたが、まだ十分に理解しきっていなかったのかも知れません。

 「このパジャマ可愛いでしょ。」

 紅葉さんは、右手で襟をピラピラさせていました。

 それにしても彼女には、全く悪びれた様子が感じられません。

 (くっ、本当に紅葉さんは病人なんだろうか?

 しかも完全に、胸元が見えているし・・・・・。)

 

 「う、うーん。」

 紅葉さんは右目をつぶって、ちょっとだけ顔を横に背けました。

 「へ?」

 僕は彼女に取っている態度が、今ひとつ理解しかねていました。

 「あんまり見つめないでよー。

 はずかしいわよー。」

 (は?

 何を言っているんだ、この人は・・・。)

 唐突によく分からない台詞を出されて、自分としては、どの様に対処したら良いのか答えは窮しました。

 ボクは紅葉さんに対して、特に相づちを打ちませんでした。

「んー・・・・。」

 なんか彼女はまだ、不自然な様子でした。

 「どうしたんですか?

 紅葉さん?」

 そこで僕は我慢できずに、彼女から何かを聞き出そうと試みたのです。

 「だって巳波くんが、ずっとアタシの胸を見つめているんだもん・・・。」


 ============ !!!!!!!!!!!!!!!!!! ============


 「そっ!

 それは大きな誤解ですよ!

 紅葉さん!!」

 全く自分が意図していない事なので、誤解を解こうと慌ててしまいました。

 そしてボクは、さらに言葉を続けました。

 「だって、紅葉さんは大きいから!」

 「え!?」

 なんと紅葉さんは、若干僕に対して横気味になり、胸を両手で押さえました。

 しかも慌てた表情で、ちょっと顔が紅葉色なっているように見えます。

 「ちっ、違いますよ!

 紅葉さん!

 紅葉さんの背が高いから、僕の視線がこの高さになっていると言うことなんですよ!!」

 ボクは彼女に対して思う限り、分かるように説明したつもりでした。

 その結果・・・・・


 「そうかあ・・・・。

 巳波君は、アタシのおっぱいに、見とれていたんじゃないんだね・・・・。」

 「いや、まあ仕方なく見ていたというか・・・。」

 うっかりした僕は、言葉を選び間違ってしまいました。

 「え・・・・・・。」

 そこで、紅葉さんの言葉が詰まりました。

 「いや、だから・・・、嫌らしい目で見てた訳じゃないって意味で・・・。」

 焦ったボクは、即言葉を付け加えました。

 そして、彼女はうつむいて黙り込んでいました。

 (ま・・・・、まずいぞ・・・。)

 紅葉さんの性格を有る程度わかってきていたボクは、危機感を覚えていました。

 そして自分の思いつく限りの、なりふり構わない台詞を吐いたのでした。


 「いや、とってもラッキーでしたよ!

 紅葉さん!!」

 何故か自分は、彼女に向けて親指を立てて、引きつった作り笑い(?)をしていました。

 気がつけば、我ながら後戻りの出来ない表現を使用していたのでした。

 「ふ、ふーん・・・。

 そうなの・・・・・。」

 僕の言葉に反応した紅葉さんは、ガバッと顔を上げていました。

 そしてサラサラの髪を右手でなでて、照れ気味の表情を見せていたのです。

 「ま、まあ110話は、サービス回らしいからねー。」

 言葉の意味はよく分からないのですが、とにかく彼女は、まんざらでもない様子でした。

 「ふうっ・・・」

 今度は紅葉さんは、まるで暑さを和らげているかの如く、両手で両襟をパタパタとさせていました。

 (ああ・・・、そんなにさせたら・・・みえちゃう・・・・・。)

 それでもそんな彼女から、ボクは安心感を与えられていたのでした。

 (な、なんとか上手く切り抜けられたな・・・。)

 

 「今日は巳波君の誕生日だよね。」

 そして紅葉さんは、気を取り直した様に、堂々と胸・・・を張っていたのです。

 「は、はあ・・・・。」

 彼女の切り替わりの早さに、僕はついて行きかねていました。

 「これあげる。」

 紅葉さんは、僕の様子など全く気に留めていない感じです。

 いつどこから仕入れたのか、彼女はボクにプレゼントリボンをつけた箱を手渡してきました。

 「こ、これは・・・・。」

 「お誕生日のプレゼントだよ!」

 紅葉さんは、とてもテンションが高かったのでした。


 「あ、ありがとうございます。」

 ボクは軽くお辞儀をして、彼女に対して感謝の意を伝えたのです。

 「知りたい?」

 「え?」

 紅葉さんは、ズイっと僕に顔を近づけてきました。

 「中身だよ!」

 「え、そりゃあまあ・・・。」

 とりあえず、相づちを打ったのですが・・・。


 「うーん・・・。

 教えようかなー・・・・・?」

 そう言いながら、紅葉さんは右手で胸のあたりを、左手で腰のあたりをさすって、怪しげな表情をうかべていたのでした。

 「な、なな、何をしてるんですか!?」

 彼女の行動に、ボクは大あわてでした。

 「だって知りたいんだよね?

 アタシのナ・カ・ミッ!」


================ !!!!!!!!!!!!! ================


 「何を言ってるんですか!!

 これ、これの事でしょう!!」

 僕は持っている、プレゼントをガシッと掴み直して、紅葉さんの眼前に差し出していました。

 「だって、110回記念なんだもーん!

 サービス回なんだもーん!」

 なんと紅葉さんは、パジャマのボタンを外そうとしていました。

 「な、何をやっているんですか!?

 それに110回って、その微妙な数え方は何なんですか!?」

 ボクは焦りと、驚きと、怒りと・・・、喜び・・・が入り交じった、叫びに近い言葉を出していました。

 

 「アハハッ!

 冗談だよ!」

 ニッコリ笑った紅葉さんは、ポンッと僕の肩を叩いてきたのでした。

 ・・・・・ボクはホッと安心したのと、また別の心で・・・、複雑な気持ちでした。

 「これだよー!!」

 「えっ?」

 なんと紅葉さんは、勝手に中身を取り出していたのでした。

 「ね、ここで着てよ!」

 「ええっ!!」

 「サービス!

 サービス!

 110回記念!!」

 (なんか紅葉さんに、そんな言い方をされると恥ずかしいなあ・・・・。)

 

 そして僕はプレゼントを、身につけたのでした。


「似合うよ!

 試合にも使えるよ、これ!」

 「は、はい。」

 紅葉さんが僕にくれた誕生日プレゼントは、白いポロシャツでした。

 しかし、普段なら抵抗ないのですが、この雰囲気でシャツを着替えるのは恥ずかしい気分でした。

 そして、彼女をしばらくの会話をしてから、無事(?)にボクは病室から出ました。

 

 (そう言えば紅葉さんは、当たり前のように、僕の誕生日を知っていたなあ・・・。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ