うーん、初めての・・・・
「さ・て・と。」
ムーンは仕切り直しと言わんばかりに、腕を組んで仁王立ちをしていました。
今の僕たちは、アカデミーから唯一に徒歩で訪れる事が可能な繁華街に、足を踏み入れたところなのでした。
(うわっ。)
彼女は急に僕の腕を引っ張って歩き始めたのでした。
それにしても、うち解けてくると女の子の性格がだんだんと分かってきたかと感じています。
正直に言って、ムーンは強引な態度の女性だと感じてきました。
それでも、自分の心のモヤモヤを無くすには、彼女について行くしかないのでした。
気がついたら、僕たちはバーの様な所に入店していました。
「座ろうよ!」
僕と彼女は、カウンター席に落ち着きました。
(トンッ!)
誰かが僕の肩を叩いてきました。
方向的に、ムーンが叩いてきたのではない様でした。
(だ、誰なんだろうか・・・。)
「ういー・・・・。」
野暮ったい感じの帽子を深々と被った男性が、ボクにもたれかかって来たのでした。
(あわわっ・・・。)
僕は酔っぱらいに絡まれるのは、人生で初めての体験でした。
もっとも自分は未成年で、そもそも、お酒を飲んだことがないし、お酒を飲むお店にも入店したことはほとんど無かったのです。
「あら!
来てたんだ!」
なんとムーンは、よりによって、この酔っぱらいに話しかけたのでした。
(はわわ・・・・。)
ボクは、ドキドキしながら彼女を見つめていました。
「大丈夫なの!?
こんなにグデングデンになっちゃって!!」
なんと、女の子は酔っぱらっている男性の背中をバンッ!!、と叩いたのでした。
(な、なな・・・・・・。)
さらに自分は、ムーンの大胆な態度に動揺を隠せ得なかったのです。
一体なんなのでしょうか・・・、この女性は・・・・。
でも自分にとって、これから全く予想のつかない展開となるのでした。
「ういー、やってるか?」
酔っぱらっている男性は、僕の肩をポンッと叩いてきたのでした。
(!!!!!!!!!!!!!!!!!)
なんなのでしょうか、この男性は・・・。
「・・・・デミ・・・-はどうだ・・・?」
男性の言葉に、僕はハッとしました。
(この人ひょっとして・・・・!)
その時、ボクは気がついてしまったのでした。
(この人は・・・・。)
「アカデミーはどうだ?」
今度は、ハッキリと言葉が聞き取れました。
しかも男性は、深く被った帽子からも表情を確認できるくらいに、顔を上げていました。
「は、はい、なんとかいけてますよ・・・。」
この酔っぱらいの男性は、オウバー・キャストさんでした。
ニューヨークに着いた当日、刻露さんに連れられてアカデミーに向かう途中に立ち寄ったクラブハウスにて、一緒にテニスをプレイした人なのです。(※86話参照)
それにしても、初対面の時も砕けた感じの人だとは思っていましたが・・・・。
今は崩壊していると言っても良いくらいに、グダグダに僕に絡んでくるのでした。
「まあ、よいよい・・・・。」
さらにオウバーさんは、ボクの両肩を掴んでコクッコクッと頷きながら、何故か一人で納得しているのでした。
(うーん、どうしたものかなあ・・・。)
彼に対して、対処する術を知らない自分は困ってしまい、完全に手詰まりの状況でした。
「あんたは、本番が近いんだから、もうほどほどにね!!」
今度は横から、ムーンがオウバーさんの背中をバンッと両手で叩きました。
「ぐへっ!!」
彼女の攻撃(?)を受け、オウバーさんは急にグッタリとなって、カウンターのテーブルにうつ伏せになりグッタリとなってしまいました。
「さあ!
いくよ!」
まてしても、ムーンは僕の腕を引っ張りました。
そして僕たちは、来て間もないバーを後にするのでした。
(オ、オウバーさん、大丈夫かなあ・・・・。)
ボクはグッタリとなった、酔っぱらいのオウバーさんが心配でした。
「あー!
心配しないで!
あの、おっさん、しぶといから!」
自分の戸惑いをよそに彼女は、まるでいつも通りと言った感じで、案じてはいない様子でした。
そして少しして、ムーンの脚が止まりました。
どうやら、ここが次の入店先の様でした。
「ここに入ろうよ!」
ムーンは今度は、アクセサリーショップに入ろうとしていました。
「あ、あの当初の目的は・・・?」
このコースは明らかに脱線していると、彼女の雰囲気から感じられるのです。
僕は不安になり、彼女に問いただしたのでした。
「モクテキ?」
女の子は全く持って、アッケラカンとしていました。
「そう、もくてきだよ・・・。」
ムーンがとぼけていると感じた僕は、少々イラッとした感じになっていました。
それでも、彼女は右手で頭を軽く押さえて、左手で腰に軽く手を当てました。
そして少しだけ顔を傾けて、何故かウインクをしながら・・・・
「うーん、初めてのデートとしては大人しめかな!?」
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(な、何を言っているんだ!?
この女は!!)
女の子の悪びれもない態度に、僕の欠陥はぶち切れ寸前なのでした。
まさに沸点に達する寸前で、次回に続きます。




