黒が好きなの!?
(とりあえず来たけど、どうなるんだろうなあ・・・・。)
ボクはサニーの事が、変わらず気になっていました。
「お待たせ!!」
「わわっ!!」
背後からの大きな声に、僕はびっくりしてしまいました。
勿論そこに立っていたのは、先ほど約束(?)を交わした相手、ムーンでした。
彼女は、インディゴ生地の上着に、インディゴ生地のミニスカートでした。
今は夏とはいえ、夜に外出するには少々無防備なのでは・・・、と思うのでした。
「いきなり背中から、大声で呼ばれるとビックリするよ。」
「だって、驚かそうと思ったんだもん。」
「・・・・・・・・・。」
その女の子は、全く悪びれもする様子は微塵もありませんでした。
「さあ、いこうよ!」
間髪も入れずにムーンは、僕の腕をグイッと引っ張りました。
「わっ!」
不意を突かれた僕は、またもビックリしてしまったのです。
意外と見た目よりも、彼女の腕力は強かったのでした。
しかしながら、よく見てみると、その女の子の腕は、まあまあ太かったのです・・・。
そうして僕たちは、アカデミーの門の外に出たのでした。
(どこに連れて行かれるんだろうか?)
自分の頭から生まれてくる一抹の不安は、拭い去ることは到底、無理な感じでした。
アカデミーを出てから少々歩く間は、街灯の明かりが頼りの寂しい夜景でした。
建物の灯がまばらではなく、一塊となっているのが特徴的でした。
ここはニューヨーク市街に近いとはいえ、混み合った場所ではないのです。
だから自然と目的の方向は、限られてくるのが分かってきていました。
やはり僕たちの脚は、初日に刻露さんと行ったスーパーマーケットのある辺りへと向かっているようでした。
「この辺りが、アカデミーの外では街なのよ。」
ムーンが僕の顔を振り返り、大きな瞳をパチッとさせながら言いました。
(そうか・・・、彼女はボクがここに来たことがあるのを多分知らないんだ・・・。)
「そうなんだね。」
僕なりに女の子に気を遣ったつもりで、知らなかったフリをしたのでした。
でもここで自分は、あることに気がついたのでした。
(そうか、そうゆう事だったんだ!)
恐らくムーンは、サニーがこの辺りにいる確率が高いと思って、ここにボクを連れて来たのでしょう。
何故なら歩いて行ける距離と言えば、この辺りしか賑やかな場所は無いのですから・・・。
(なんだ、彼女は良く考えてくれているじゃないか。)
僕は安心して、女の子の横顔をチラッと見やりました。
この分なら、ひょっとしたらサニーとは、簡単に会えて話が出来るかもしません。
自分の推測では、彼は迷いを抱きながら、どこかを彷徨っているのではないのか、と思うのです。
だから、そう遠くには行っていないのでは無いのだろうか、と分析しています。
サニーはバスなどの交通機関を使用して、実家に返ったりしてはいないのではないかと・・・。
そうこう考えながら歩いていると・・・
(あれなんだろう??)
なんだか見慣れないモノが、道端に存在している事が確認できたのでした。
なんだか黒い機械・・・・、それはひょっとして・・・・
これは、日本では見慣れているアレなのでは・・・?
アメリカでは黒いのでしょうか?
「何をジロジロ見ているの?」
「う、うん・・・・。」
「そんなに公衆電話が珍しいの?」
(やっぱりそうだったのか・・・。
アメリカの公衆電話は黒いのか・・・・。)
しかし、電話があるからと言ってサニーに繋がる訳ではないのです。
だって、彼が重たい電話を持ち歩いているわけ無いのですから・・・・・。
(もしポケットに入る位の小さな電話があれば、とても便利な世の中になるのになあ。
待ち合わせですれ違ったり、迷子になることもないのになあ・・・。)
黒い公衆電話を眺めながら、ボクは勝手な想像をしているのでした。
「ねえ、どうしたの?」
「うわ!」
気がついたら、ムーンの大きな瞳が、ボクの顔に迫ってきていたのでした。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない。」
(ち、近いよ・・・・!)
考察から現実へと引き戻された僕は、彼女のアッケラカンとした態度に圧倒されていました。
「いや、ボクの国の公衆電話はウグイス色とかがポピュラーだから、黒いのは珍しかったんだよ。」
良く分からない状況を打破する為に、とりあえず僕はしゃべりました。
「ふうん・・・・。」
この女の子の呟くような言い方は、ボクの知るところでは初めてでした。
「黒が好きなの!?」
「えっ?」
何故かムーンは、食い入るような感じで僕に迫ってきました。
一体なんなのでしょうか?
「ま、まあ嫌いじゃないけど・・・。」
困ってしまった自分としては、半分誤魔化すような返答をしたのでした。
「そうかあ・・・・。
好きじゃないのかあ・・・。」
何故だか、彼女は右手で自分のデニムのスカートをクイクイと軽く引っ張って、残念がっていたのでした。
ボクは女の子の考えていることが、分からないのか気がついているのか・・・。
ただ僕は、冷や汗をかくことしかできなかったのでした。




