何かあるかもよ!
「うっ・・・」
改めて図星を指されると、僕は返す言葉に窮したのでした。
「悩んでいるって、顔に書いてますよ。」
(なんだか、日本語的な表現だなあ・・・。)
ムーンは、またボクの顔をジッと見つめ直しました。
彼女のその瞳は、とても大きかったのでした。
(これだけ大きな眼だと、ゴミとか入ったりしないのかな・・・。)
いえ、今はこんな事を考えている場合ではありません。
だから、自分は逆らうこともなく、思わず彼の名を漏らしました。
「実はサニーが・・・・」
そこで女の子は、何かを察したように瞬きをしました。
「サニーがどうしたの?」
ムーンは口調を変えて、僕に聞き直してきました。
彼女のそれは、非常に真剣な態度に感じられました。
「彼が、朝から姿が見えないんだ・・・。
しかもサンダー・ライトコーチにも連絡していない様だし・・・。」
どうやらボクも、口調に変化が現れてきた様でした。
「そうなの・・・。」
女の子は少しだけ、首を傾げて考える仕草を見せていましたが、別段に深刻な様子は伺えませんでした。
そう・・・・・、むしろ何かを察しているかの面持ちなのでした。
「実はコーチにも聞いたんだけど、なんだか引っ掛かる事を言うんだ。」
「何て言ったの?」
やはりムーンの口調は、落ち着いています。
「うん・・・、「ここでは、よくあることだな・・・。」って・・・。」
ボクはサンダー・ライトコーチかた言われた通りそのままに、彼女に伝えました。
「・・・・・そう・・・。」
女の子は動じません・・・いえ、むしろ悟りきったかのような雰囲気を醸し出していたのです。
「僕はどうしたら・・・・。」
本当にどうすれば良いのか、全く分かりませんでした。
「どうするって?」
何故かムーンは少しだけ、ンッとした感じの表情を見せました。
「いや・・・、だから自分としては、どのような行動を起こしたら良いのか分からないんだ・・・。」
実はボクもサニーがどの様な状況にあるのか、薄々と気づきはじめていたのでした。
しかし、それをハッキリと、言葉として表現することは成しがたい事であったのでした。
そして彼女も、それ以上この話を続けようとはしませんでした。
だから僕は、ムーンにラケットのガットを張ってもらって、この場を去ったのでした。
自分の部屋に帰る途中道で、ベンチに座りました。
ーーーー予感はありました。
「迷っている友達が気になるのね・・・。」
やはり、桜さんが現れました。
「気になります。」
ボクは普段に戻れたような気分になって、少しホッとしました。
「人の気持ちは変えられないのよ。」
「人の気持ち?」
横を向くと、桜さんはとても優しい表情を見せていました。
「巳波くんだって、自分の事は、自分で決めたいんじゃないの?」
彼女の眼は、柔らかく僕の瞳を見つめていました。
「そ、そうですね・・・。」
なんだか僕は、サニーに対してお節介な気持ちを抱いていたのかも知れない、と思いました。
(無理に自分は、彼のために動くべきでは無いのだろうか・・・・。)
気がつくと、桜さんの姿は無くなっていました。
「いらっしゃい!」
僕は一度自分の部屋に戻ってから、アカデミーの食堂に入ったのでした。
今日は、僕は一人で夕食をしたのでした。
そして、会計を済ませようとした、その時・・・・。
「気になる?」
ウェイトレスさんが、意味深な台詞を出してきました。
「え?」
勿論、ムーンが何を言わんとしているのか、自分には分かっていました。
「はい・・・・、気になっていますけど・・・。」
ポンッ!!
彼女が急に僕の肩を、軽く叩いてきました。
「やーね!
もう敬語を使うのは、やめようよ!」
女の子は、笑顔でした。
どうやら先ほどのガット張りの時の、口調の変化から僕と彼女の距離は縮まったようなのでした。
さらにムーンは、その話を続けました。
「じゃあ、外に行こうよ!」
「え?」
「だから後で、アカデミーの外を歩こうよ!
何かあるかもよ!」
「・・・・・・う・・・。」
僕は彼女の勢いに、圧倒されていました。
「じゃあ、いまか1時間半後にアカデミーの門の前で待ち合わせね!」
「・・・・うん・・・。」
ボクはムーンの積極的な誘いを、OK(?)して、ひとまず寮の部屋に戻りました。
この後、どの様な冒険が待っているのでしょうか・・・。




