ぜひ、お試しください!
「いろんなのがありますよ!
ハードなのから、ソフトなのまで!」
彼女は意図的(?)に、不適切な想像をかき立てる様な言葉遣いで、僕に迫ってきました。
「張ってもらいなよ。」
サニーは軽く肘で、僕の腕をつっついてきました。
「う、うーん。」
ボクはスグには返事が、出てきませんでした。
まだ彼女に対して、今ひとつ腑に落ちないところがあるのでした。
確かに、この女性のガット張りの腕前は、先ほど見た感じからも、明らかに手慣れている様子でした。
間違いなく彼女は、上級のストリンガーでありましょう。
でも、この女性が外見的にも、最初のイメージ的にも、テニスとはかけ離れているのです。
いわゆるギャップを感じるのでした。
「どんなのが、よろしいでしょうか!」
「うああああ!!!」
彼女の顔が、ズイっと僕の顔に接近してきたのです。
そこでボクは、思わず尻もちをついてしまったのでした。
「お勧めのモノがありますよ!」
さらに女性は、僕を見下ろしていました。
(うう・・・・、なんだかこれは・・・。)
ボクは、彼女に対して完全にタジタジでした。
そして尻もちをついている自分の視線は、どうしても、この女の子の・・・・。
「どこ見てるんですかあ!」
彼女は満面の笑顔で、僕の肩をバシン!と叩いてきました。
「い、いや・・・っ。」
悪びれもなく、この女の子は、ボクを責め続けて来るのでした。
どうやら僕に選択の余地は、全く無さそうなのでした。
「お、お願いできますか・・・。」
「任せてください!」
彼女は、右手でトンっと胸を軽く叩きました。
「では、こちらのストリングなんかがお勧めですよっ!」
女の子は僕の目の前に、黄色いストリングを見せつけてきました。
「これは?」
ボクは見た目では、このストリングがどんな種類であるのか、よくわかりませんでした。
「これは、ポリのストリングなんですよ!」
彼女、両手でストリングとビシッと伸ばしていました。
その感じは、まるで「あやとり」の様でした。
それと共に、何故か女の子は脚も開いていました。
全身に力が入っているのでしょうか・・・・。
(いや・・・目の前で、そんなポーズとられたら・・・。)
実は僕は、まだ尻もちをついたままなのでした。
僕の視線はストリングではなく・・・・
・・・・・自分の思考は、だんだんと鈍ってきたのでした。
「これで、よろしいですね!」
「はっ・・・!はい!」
ボクは彼女の元気な言葉で、目が覚めたように思い切った返事をしました。
「いいですよ!
これは丈夫で、コストパフォーマンスいいんですよ!」
まだ、このポーズを維持しています・・・・。
どんだけ、このストリングを推しているのでしょうか・・・。
「いいんですけど・・・。
僕は、いままでナイロンのストリングしか、使ったことが無いんですよ。
ポリのストリングは、なんせ堅いので肘に負担がかかるから・・・。」
正直な気持ちを、僕は彼女に伝えたのでした。
たぶん女の子は、ガッカリするのだろう、と思っていたのですが・・・。
「大丈夫ですよ!」
「えっ?」
彼女は、まったくめげない態度をとってきたのでした。
「このポリのストリングは、なめらかな感触なんですよ!」
「は、はあ・・・・。」
「まあ、ナイロンほどの、まめらかさではないですけど!」
「え、ええ・・・・。」
「ぜひ、お試しください!」
「は、はい・・・・。」
(なんでこの娘は、こんなにこのストリングを推してくるのだろう?
そしてなんで、ストリングを引っ張って、脚を開いているの??)
数々の疑問を抱きつつも、女の子のセールストーク(?)に、僕は完璧に押し切られてしまったのでした。




