あら、お疲れ様
サニーの態度が引っ掛かっていたのですが、僕は気持ちを切り替えることにしました。
お昼からの練習に入りました。
初日ほどではないにしろ、ボクは周りが見えないくらいに一生懸命でした。
「あっ!!」
そのとき切れたのでした。
勿論、緊張の糸が切れたわけではありません・・・。
テニスラケットのガットが切れたのでした。
ちなみに、ガットとはテニスラケットに張る細い糸なのです。
(そうゆう意味で言えば、緊張の糸とも言えなくもないのですが・・・。)
うんちくを、語らせていただくとガット(GUT)とは腸という意味です。
何故なら、元々は羊の腸から作った糸をテニスラケットに張っていたからなのです。
そして今では、牛の腸が使われているです。
この種類のガットを、ナチュラルガットといいます。
どうして種類と言うのかって?
実はガットには、様々な種類があるのです。
最近では、化学素材・・・・、ポリガット・ナイロンガットというモノがあるのです。
いずれも主に、石油が主な原料となっており、天然素材のナチュラルガットよりも安価に手にはいるのです。
日本では、ガットと呼ばれているのですが、海外では主にストリングと呼ばれています。
「おい、何をブツブツ言っているんだ・・・!」
サンダー・ライトコーチが、低い声で僕に注意をしてきました。
「あっ!?
は、はい!
すいません!」
いけない、イケナイ・・・・・。
ついつい、読者さんへの説明に夢中になってしまいした。
僕は再び、練習に対して本気モードに突入しました。
しかし・・。
バチッ!!!
(ああ・・・・・・)
またしても、緊張の・・・いやガットが切れてしまいました。
アカデミーの面々の放つ打球は、今までの僕の環境の中では、もっとも強力なモノでした。
彼らのスペックは間違いなくプロに近い、それなのではないでしょうか・・・。
高校生でも、ハードヒッターは毎日の様にガットを切ってしまいます。
学生の頃の僕は、それほどガットを切る方では無かったのですが・・・・。
それでも・・・・。
目まぐるしく動き回っていた本日の練習が、なんとか終了しました。
僕はクタクタだったのですが・・・・。
テニスラケットは、もっとクタクタだったのでした・・・。
結局この日は激しいヒッティングで、3本のガットを切ってしまったのでした。
僕が持っているラケットは、高校時代から使っている2本、そして刻露さんからいただいた2本(※37話参照)・・・、計4本なのでした。
つまり今現在、ガットが切れていないラケットは、もう1本しか残っていないのでした。
「ガット張らなきゃいけないなあ・・・。」
僕は呟きました。
そんな僕の肩を、背後からポンと叩く人がいました。
「ガット張りに行こうよ。」
サニーが僕にとって、渡りに船、といえる発言をしてきました。
「ああ、ちょうどガット張りたかったんだよ。」
僕は彼のタイミングの良い誘いを、とても有り難いと感じていました。
「んじゃ、行こう。」
サニーに導かれて、僕はガット張りの旅に出るのでした。
(ん?
この方向は・・・。)
その建物は、アカデミーのレストランの隣にありました。
ガチャ
(おお・・・・・)
そこには、何台もの機械が置いてありました。
その機械は、ガット張り機でした。
その名の通り、これはテニスガットを張るための機械です。
見回していると、何人か先客がいました。
先ほどの練習で、見かけた顔もいます。
「ふーん。」
僕はその中でも特に手際が良さそうな人に、視線が行きました。
実は、その理由はその人が手際が良さそうなのだけではなく・・・・。
その人は、キビキビとガットを張り上げていました。
ガット張りの経験の浅い僕の目から見てですが、かなりの腕前ではないのかと思われます。
しかも・・・、若い女の子・・・・。
しかもスカートを履いている・・・・。
僕の視線は、彼女の後ろ姿に釘付けでした。
「あら、お疲れ様。」
その時、彼女は後ろ姿では無くなっていました。
彼女とは、テニスをプレイしたことは無いはずなのですが・・・・。




