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Alternative Earth Online

作者: ホビット

筆初めですw

2018年最初の投稿。

 AnRI(アンリ)、それは人類が見つけ出した究極の叡智の一つだろう。AnRIとは、生命根元情報(Anima Rootage Information: AnRI)とも訳される、科学的な魂の定義だ。

 魂とはなんであろうか。それは数千年、ともすれば数万年におよび人類の好奇心を刺激し、数々の宗教を産み出してきた人類の究極の問いの一つであった。あるものはそれをエネルギーの塊と言い、別のものは眉唾であると言う。

 しかし、長らくの論争はAnRIの登場によってある程度結論付けられた。魂は「存在する」と。


 ◇◇◇


 半年も前、新しいゲームのリリースが告知された。そのゲーム、「Alternative Earth Online」は今日満を持してリリースされる。開発情報が公開されたときの世間の反応は様々だった。何せ、AnRIを活用したゲームだ、そこら辺の「VR」とは一線を画す。

 AnRIを活用するということはそれ即ちプレーヤーは映像ではなく、「視覚」を含んだ五感―人によってはそれ以上―をもって世界を感じることができるということだ。それは「情報の世界」に「魂」を送り込むからだ。もちろん、「魂」を送り込むことになるこの技術は賛否両論があった。それはAnRIがその個人そのものを指す情報だからだ。

 AnRI利用技術はAnRI読込技術(リード)AnRI書込技術(ライトイン)AnRI編集技術(エディット)の三つの基本技術によって成り立っている。このうち書き込み技術は危険な職に就く人のAnRIをヒューマノイドに移したり、ペット用の動物型オートマトンを作ったりするのにつかわれている。

 そして医療分野や精神転送型VRに使われているのが編集技術だ。この技術の登場により、人は事実上不老不死へと至った。身体年齢を記憶や意識を変えず、変化させることができるようになったためだ。AnRIはそう、言うなれば生命の定義そのものだからである。

 言い換えれば、AnRIが同一の生命は完全に同一だということだ。AnRIの情報には勿論病気かどうかなどの情報もある。それによって従来の検査や治療法は全て過去のものとなった。

 閑話休題。感覚もAnRIで定義できる以上、その技術がゲームに応用されるような流れは自然なものだろう。人間はいつでも娯楽を求む生き物だからだ。なにはともあれ、全く新しいVRゲーム「Alternative Earth Online」は下馬評通り多くのユーザーを得ることとなった。


 ◇◇◇


 俺、桃木仁也(ももき きみや)は今日午後1時にサービスが開始されるAEOことAlternative Earth Onlineの世界を想像して浮かれていた。と言うのも、倍率1200倍と言う高倍率―これでも増産されたお陰で10分の1以下になっている―の抽選があったなか、AEOの初期ロット一万台の内の一つを手に入れた極めて幸運な人間だからだ。

 今は12時半過ぎ。あと30分もしない内にサービスが始まる。と、ロビーサーバーが先行公開されたことを知らせるメールが来た。

 それに気付いた俺は、従来のHMDヘッドマウントディスプレイではなく、ブレスレットのような洗練されたデザインの機械を付け、スイッチを入れる。


『VDAシステムバージョン1.0.11.3起動完了。AnRIデータリンカ正常。』


 っ!! 一瞬俺の耳がおかしくなったかと思った。聞いていないはずの声が聞こえる、何とも言えない感覚。


『リンクシステムのチュートリアルを開始します。まずは、あなたの名前を入力してみてください。目の前に浮かんだボックスに名前が表示されているところを思い浮かべると良いでしょう。では、やってみましょう。』


 また声が聞こえたかと思うと、今度は目の前にウインドウが浮かんできた。そのウインドウは、テキストボックスがあるだけのシンプルなものだ。

 声の指示通り、テキストボックスに桃木仁也と表示されているところを思い浮かべる。すると目の前のボックスに思い浮かべたように名前が表示された!

「うおっ、すっげぇ!」


『素晴らしい! このようにVDAインターフェースは、想起することによって操作できます。慣れれば手足のように操作できるでしょう。』


 その後もいくつか簡単な解説を経てマシンのチュートリアルが終わった。


『これより、Alternative Earth Online エントランスサーバーに接続します。座る・寝転がるなど安全な姿勢をとってください。完了したら、HUDの接続ボタンを押してください。』


 俺は指示通りベッドに寝転がると、接続ボタンを押した。


『接続します。』


 その言葉が聞こえたかと思うと視界が一瞬暗転し、次の瞬間壮大な音楽と共に「ようこそ、AEOへ!」という女性NPCの声が聞こえた。


「キャラクターを作ります。性別はAnRIから取得されたものとなります。ご了承下さい。」


 俺はネカマをするつもりはないのでまあ別にどうでもよい。このご時世、性的少数者などAnRIで実際の性別を弄ればどうとでもなる話。別に非難されることもないだろう。


「身長178cmですので、カスタマイズ範囲は168cmから188cmの範囲となります。」


 そんなこんなでキャラクリ完了。蒼銀色の髪に紫っぽい色の目のキャラになった。色は個人的な好みだ。


「それでは、キャラクターに名前を付けましょう。このキャラクターはあなた自身のオルタです。名前は変更不可能ですので、慎重に決めた方がよいでしょう。」


 ニトウ、と。


「ニトウさんで宜しいですか?」


 勿論、はい。


「初期ステータスを振りましょう。」


[Status]

―――――――――――――――――

Name: ニトウ

Gender: Male

Old: 16

Job: Unemployed

Money: 1200シル

―――

CON: 5

AGI: 5

STR: 5

VIT: 5

DEX: 5

INT: 5

MND: 5

LUK: 10


Status Point: 20

―――

○Active Skill

None


○Passive Skill

None


Skill Point: 200

―――――――――――――――――


 これがこうなります! ○的ビ○ォーア○ターもびっくり!


[Status]

―――――――――――――――――

Name: ニトウ

Gender: Male

Old: 16

Job: 魔法錬成士(Lv.1)

Money: 1200シル

―――

CON: 5

AGI: 5

STR: 5

VIT: 5

DEX: 10

INT: 15

MND: 10

LUK: 10


Status Point: 0

―――

○Active Skill

属性魔法(Lv.1)

錬成術(Lv.1)

調合術(Lv.1)

鑑定(Lv.1)


○Passive Skill

杖術(Lv.1)

言語理解(Lv.1)

気配察知(Lv.1)

魔力操作(Lv.1)

魔力感知(Lv.1)

地図作成(Lv.1)


Skill Point: 30

―――――――――――――――――


 このゲーム、ミニマップ使うにもスキルがいるようで。地図作成取っとかないと地獄を見るに違いない。

 あとはレベルが無いことは意外だった。スキルポイントやステータスポイントを得て強化する仕組みのようだ。

 一応スキルの説明をすると、属性魔法は火・水・地・風の四大元素と光・闇の陰陽を合わせた6つの魔法を扱えるようにするスキルだ。バラバラでも取得できるが、スキルポイントを何に振るか迷ったので取り敢えず。

 錬成術、調合術は魔法錬成士のジョブスキルだ。錬成術は錬金術の下位互換で、いくつかのアイテムを合成して新しいアイテムを作れるスキルだ。錬金術との違いは、アイテムの上位変換、下位変換、分解ができないこと。調合術はポーションなどを作るスキル。鑑定は文字通り物を鑑定するスキルで、下位のスキルには目利き・解析などがある。上位のスキルだと情報開示などがあるそうだが、スキルポイントが300とかになっていて取得不可能だった。杖術は杖を使った行動時に補正がかかる。あとは言うまでもないだろう。

 さてちょうど時間になったことだし、早速AEOの世界へ行くとしますか!


「それでは、ワールドに接続します! AEOを楽しんで!」


 ◇◇◇


 目を開けると、そこは...森の中!?


『クエスト・初心者の森! エインヘラーの森から、シュタルツまでたどり着こう!』


 え゛、早速クエストですか、そうですか...。


『オルタはあなたの現実の体のように動かすことができます。光の珠に触れてください。』


 言われた通り、目の前に現れた光の珠に触れる。うわっ、狼が三体も出てきた!? どう考えても敵ですありがとうございました。


『心配は要りません。戦ってみましょう。メニューを開いてインベントリを見てください。武器があるはずです。手にとってみましょう。』


 メニューを開いてインベントリから「初心者の短杖」を取り出す。そしてそれを狼に向けると、不思議とどうすればいいかが頭に浮かんできた。


『道具を持つと適合スキルを持っている場合、補助を受けることができます。意識すると補助を切ることもできます。』


 俺は一匹の狼に向けて、頭に浮かんだ呪文を紡ぐ。


氷の矢(アイスファイエル)!」


 すると短杖の先から一つの氷の矢が放たれ、狙った狼を打ち砕いた。そしてその狼のHPは0になり、光と共に消えた。俺は初めて使った魔法に高揚し、すっかり調子に乗って残りの二体も倒した。

 その後もチュートリアルなクエストはさくさくと進み、気づけば街が見えていた。


 ◇◇◇


「ようこそ、シュタルツへ! 身分証はシュタルツ執政庁か、各種ギルドで取ることが出来ますよ。 街へ入ったらすぐに身分証を作ることです。 冒険者ギルドなら特別なスキルがなくても登録できるのでおすすめですよ!」


 シュタルツの門番は俺から20シルを受けとると、笑顔でそういった。まぁ、身分証はあとでもいいか、何て思っていると。


『クエスト・身分証を作成! 身分証を発行する』


 クエストを受けてしまったようだ。こういうクエストを後回しにするのは気が引けるので取り敢えず錬金術師ギルドへいくことにした。錬金術師ギルドに登録していると安く素材などを売ってくれるようだ。

 錬金術師ギルドはメインストリートから逸れた裏通りに構えていた。建物のデザインも俺の厨二ゴゴロを擽るいいデザイン。気に入った。


「ごめんくださーい。」

「あ、はい! 素材の納品ですか?」


 受付のカウンターにいた若い女性が答えた。受付の意味があるのか、とか思ったなんて事実は別に無い。


「あ、いえ。登録したいと思いまして。」


そう言って俺はボードに書いてあった登録料100シルをだす。


「そうですか! 少しお待ちください!」


 そういうと受付の女性は奥へ行き、何かを出してきた。それを不思議そうに見ていたのがばれたのか、受付の女性は


「これは神定器です。ギルド会員証を発行するのに使うんですよ。何でも500年前に賢者が作って世界中に広めたアーティファクトだとか。真偽は分からないんですけれどね。」


 という風に説明してくれた。賢者という気になるワード。


「早速発行しますからここに魔力を流すか血を垂らして下さい。スキルを持っていないかジョブが違う場合は発行できないんですけどね。」

「あ、はい。」


 血は嫌なので素直に魔力を流す。魔力操作先生マジパネェっす。


「ニトウさんは駆け出しの魔法錬成士さんなんですか?」

「はい。つい最近。」


 というかつい数十分まえです。


「そうなんですか! ジョブレベルが30になると転職出来るようになるので頑張ってくださいね。 最近錬金術師系のジョブは新人が少ないので期待してます! あ、そうだ。そういえば自己紹介してませんでしたね。 私は錬金術師ギルドで受付嬢をしておりますフィリスです。 よろしくお願いしますね?」

「は、はい」


 こうして俺は無事シュタルツ錬金術師ギルドに登録し、身分証を手に入れたのだった。これが俺の始まりだった。しかしまさかあんなことになるとはこのときはこれっぽっちも思っていなかったのだった。


『クエスト・身分証を作成を達成し、報酬20スキルポイントが与えられました。』

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