空手家とミーナ(その2)
ジーザスは、馬車で3時間かけて街に戻り、山賊達20人程がたむろしている家に着いた。その家の主は、出張で何処かへ行っているらしく、山賊達が勝手に上がり込んで住んでいた。ジーザスは、山賊のリーダー・ワルドに、早速七色の男・ソータが倒れて戦えない状態であることを話した。ワルドは、色黒の大柄な身長3m程の男で、巨大なバスタードソードを持っている。
ワルド「夜まで待ってられるか。今すぐ行って、まずは七色の男を始末してやる。」
ジーザス「しかし、ここから村まで3時間かかるので、着く頃には夜になるかと。」
ワルド「サダ!!」
ワルドがそう言うと、奥の部屋から、黒のVネックのリビニットチュニックに、薄い紺のデニムを履いた、髪がブラウンのいい女が現れた。
ジーザス「そのいい女は?まさか、リーダーの彼女ですか?」
サダ「サンダーボルト!!」
ジーザスの少し手前の足元に、稲妻が落ちた。
サダ「冗談はやめて。私はジャニーズ系が好きなの。次、つまらないこと言ったら殺すわよ。」
ジーザス「ヒッヒイイイイ!!リーダー、何なんですか、この狂った女は!!」
ワルド「おいおい、サダ。そこまで俺を否定しなくてもいいだろ。ちょっとそこのbarで知り合ってな。話を聞くと、ポナ村に用があって行きたいらしいんだが、七色の男が邪魔みたいでな。で、俺達と一緒にポナ村へ行くということになったんだ。」
ジーザス「用って?」
サダ「それは聞かない約束。私は攻撃型の魔法使い。ポナ村には何回か行ったことがあるから、一瞬で魔法で行けるわ。さあ、今すぐ出かけましょう。私は毎晩、8時になると眠たくなるの。」
ジーザス「8時って、夜はこれからって時間だ。お前は人生損してるぞ。」
サダ「うるさいわね!!さあ、行くわよ!!早く全員揃えて!!」
山賊達は、サダの回りに集まった。
サダ「じゃあ、行くわよ!!ポナ村・ムーブメント!!」
山賊達は一瞬消えて、ポナ村の入口に着いた。
村の入口で監視をしている中年の男が叫んだ。
男「みんな!!山賊が来たぞ!!」
ワルド「な、なんでいきなりバレたんだ?」
サダ「あの男は、たぶん職業が見えるのよ。」
ジーザス「俺は、すんなり入れたけど・・・・。」
サダ「あんたは弱いから、村人でいけるんじゃないの?」
ワルド「おい、いったん引き上げるぞ!!まさか、こんなに速効でバレるとは。」
サダ「待って!!今、七色の男は寝ているのよ!!このチャンスを逃す手はないわ!!私が魔法で援護してあげる!!強引にこのまま行きましょう!!」
ワルド「そ、そうだな。村人相手なら楽勝だ。俺一人でも無双ができる。」
サダ「まずは、寝ている七色の男を殺しましょう。」
ジーザス「アイツなら、この村の奥の寺にいる。」
山賊達とサダは、堂々と村へ入り、ソータのいる寺へと進んだ。村人達は恐くて、ただただ見守っているだけだった。
村人達「ユナちゃんは?こうなったらギズモに頼もう。」
「ユナちゃんは、まだ学校で授業中だ。」
「勉強は大事よね。私はもっと勉強して、医者になれば良かったと、今になって思うわ。」
「今は勉強どころじゃないだろ。だいたいアイツら、どこへ向かってるんだ?もしかして寺か?まさか、ソータ狙いか?」
「有りえる。寝込んでるソータなら、赤子の手を捻るようなもんだ。」
「俺、学校へ行って、ユナちゃん呼んでくる!!」
若い村人の男が、ユナのいる学校へと走って行った。
その頃、寺ではチャンコとミーナが寺へ上がり、ソータの側に座っていた。
ミーナ「あんた、ここへ上がるからには、何かソータに捧げる品物があるんでしょうね?だいたい初対面なのに、図々しいったらありゃしない。」
チャンコは、道着の胸元から袋を出した。
チャンコ「これは、俺がいつも持ち歩いているワラビ餅だ。栄養があって腹持ちも良く、長持ちするぞ。」
ミーナ「あんたね、ソータのこの状況を見て、餅なんか食べれると思う?あんたは、風邪ひいたら餅食べるの?」
チャンコ「俺は、風邪をひいたことが無いんだ。風邪ってやっぱり、しんどいのか?」
ミーナは大きな深いため息をハアアアアッとついた。
そんな中、村人の一人の男がソータの部屋に上がり込んで来た。
村人・男「どうしよう、山賊がこの寺へ向かって来ている。たぶん、ソータ狙いだ!!ユナちゃんはまだ学校にいるから、ギズモは来れない!!」
チャンコ「山賊だと?よし。俺に任せろ!!」
ミーナは、気合いの入ったチャンコの眼差しを見て言った。
ミーナ「OK。私も手伝うわ。あんた、今までに人を5人ぐらい殺してるでしょ?今の顔は、極悪人の顔よ。」
チャンコ「殺してないわ!!」