空手家とミーナ(その1)
天気がいい昼過ぎ、空手着を着た大柄で、少し色黒の男・チャンコが、隣の国へ行くため、ソータ達の住むポナ村に立ち寄ろうとすると、村の入口で、5人の身長5m程の巨人達と、七色に輝く男・ソータが向かい合っていた。
巨人達は、巨大な剣を利き腕に持ち、茶色の革の鎧に革の帽子を被っていた。その中のリーダーらしき巨人が叫んだ。
巨人・リーダー「賢者の石はどこにあるんだ!!さっさと持って来い!!」
ソータの背後にいる村人達は、ざわつき始めた。
村人達「賢者の石って、この村にあるのか?」
「あの地下にある大きな青い石のことよ。」
「たまに、お婆様が見に行ったりしてるなあ。」
「あげてもいいんじゃない?」
「いや、それはお婆様が許さないだろう。」
巨人・リーダー「さっさと賢者の石をここに持って来い!!」
ソータ「そんな物はないし、もしあったとしても、お前らなんかには渡さない。」
巨人・リーダー「ほう、面白いことを言うガキだな。俺達は別に賢者の石なんかいらないんだ。本当は、お前ら人間を殺して食べたいだけなんだ。」
巨人・1「フフフッお前ら人間の肉は上手いからな。」
巨人・2「ただ魔王様が、この村にある賢者の石を取って来いってうるさくてな。」
巨人・3「フフフフッ。要は、その賢者の石を探す手間を省きたいだけだ。お前らは、俺達にあった時点で死んだも同じだ。」
ソータ「スパーク・ナックル!!」
いきなりソータは高く飛び、光輝く右ストレートが、5人の真ん中に立っている巨人のリーダーの顔面に炸裂した。リーダーは100m程吹っ飛んで、坂道を転がり落ちて行った。
巨人・1「な、いきなり!!しかもリーダーが一撃で!!」
巨人・2「このガキ!!」
ソータ「ボサッとしてる方が悪い!!スパーク・ナックル!!」
ソータは、素早い動きで高く飛び、巨人1と巨人2の顔面に右ストレートと左ストレートを叩き込んだ。リーダーと同じように巨人1と巨人2は吹っ飛んで、坂道を転がり落ちて行った。
チャンコ「おお!!凄い!!巨人達3人をあっという間に!!七色に輝く男の話は、本当だったんだ!!」
チャンコは、転がり落ちて行く巨人達を見ながら関心した。
巨人・3「水鳥剣!!」
巨人・4「水鳥剣!!」
巨人達の剣の斬撃が、幾つも上空からソータを襲ったが、カンカンと音がして弾かれた。集まった村人達の中には、魔法使いのミーナもいた。
ミーナ「グラサー!!」
ミーナが呪文を唱えると、巨人達の足下から草が生えて延び、絡みついた。
ミーナ「今よ!!ソータ!!」
ソータ「ありがとうございます、ミーナさん。スパーク・ナックル!!」
ミーナの草が絡みつく魔法で動けなくなった巨人・3・4は、ソータのスパーク・ナックルを顔面に食らって、やはり吹っ飛んで坂道を転がり落ちて行った。
5人の巨人達を倒すと、いつもの通りソータは倒れ、担架で寺へと運ばれて行った。
チャンコ「どうしたんだ?なぜ倒れたんだ?あの斬撃が効いたのか?」
チャンコもまた、ソータが運ばれた寺へと向かった。
この村を近々襲おうと計画を立て、下見に来ていた山賊の一味の1人・ジーザスもまた、この様子を見て寺へと向かった。ジーザスは小柄な男で、村の下見係りだが、少し抜けたところがある。ジーザスは、寺へ群がる村人の1人に成り済まして、村人達の会話を聞いた。
村人達「ソータの奴、明日には元気になるみたいだ。」
「巨人達の斬撃が少し強力だったみたいで、明日の夕方ぐらいまで熱が下がらないみたいだ。」
「まあ、熱が下がれば体は楽になるが、起き上がったりするのは、明後日ってところだな。」
この会話を聞いたジーザスは思った。
ジーザス(村を襲うなら、あの七色のガキが寝ている今日の夜だ!!今日の夜しかない!!さっそく、リーダーに連絡だ!!)
ジーザスは、寺を出て馬車を見つけ、運転手に言った。
ジーザス「急いで街まで行ってくれ!!大至急だ!!」