忍び寄る魔の手
魔王は、カサブランカ市の裏山に待機している、青いカブトガニのような形をした宇宙船・シスカの中のリビングルームにいた。
リビングルームには、巨大な600インチ程の画面と、何人もの人が寝そべれる、白い巨大なソファがあり、魔王は、画面に映されたショートカットの茶髪の女・シスカに向かって話しかけていた。
魔王「というわけでシスカ、ノヴァって奴を捜して欲しいんだが。」
シスカ「ノヴァ。この星の天候や季節、気温などを調整している、この星の支配者のことですね。」
魔王「そうだ。そいつが勇者を生産して、俺の所へ向かわせてるみたいなんだ。」
シスカ「あなたの他にも300人程、この星に地球から植民者が送られて来ましたが、魔物に襲われたり病気になったりして、生き残っているのは、あなた一人です。しかも、あなたの場合は、異空間を移動することによって、奇跡的に手に入れた能力で生き延びているだけであって、この星は、地球人には不適切なのです。」
魔王「そのノヴァって奴をどうにかすれば、地球人が住めるようになるって話だろ。」
シスカ「あなたは、今すぐ地球へ帰るべきです。私は、この星は地球人には向いていないと判断しました。ノヴァを殺せば、この星の天候は崩れ、生物は住めなくなってしまいます。つまり、あなたも死ぬってことです。」
魔王「俺は、地球には帰りたくないんだ。人間の肉なんか食べたくないし、あんなスーツを着ないと生きていけない地球なんてごめんだ。なんならシスカ、お前だけ帰ってもいいぞ。俺は、この星が気に入った。」
シスカ「分かりました。しかし、私は、あなたがこの星で何をするのか、もう少し見ていたいです。この世界を飛び回ってみて、ポナ村の森友神社から、世界一巨大なパワーを感じました。ノヴァがいるとしたら、たぶんそこです。」
魔王「確かサダが、巨大な賢者の石みたいなのがあるとか言ってたが、たぶんそれだな。よし、早速行ってみよう。情報ありがとう、シスカ。」
シスカ「気をつけて。あなたは、この星に愛されていないのだから。」
魔王「分かってるよ。」
魔王は、シスカの中から出て山を下り、カサブランカの街へと向かった。
一 夕方 カサブランカ市 bar・トアル 一
ショートカットの赤い髪に、黒のレザーライダースーツを着たスタイルのいい若い女・エルダと、黒の着物に羽織、白と黒のストライプの袴を履いた侍風の男・キサラギが、カウンターでカクテルを飲みながら並んで座り、話をしていた。
エルダ「あんた、侍のくせにマダムロシャス?ちょっと勘弁してよ。侍と言えば、芋焼酎とか日本酒でしょ。」
キサラギ「別にいいだろ、俺は甘党なんだ。それに、そういうお前はカル酎じゃないか。で、本当にその村に、ミヤモトがいるのか?」
エルダ「魔王様の情報よ、間違いないわ。ドラゴンライダーの私は、ブルードラゴンを引きつけ、あなたは、そのミヤモトという男を斬る!!で、その間に魔王様とサダが、賢者の石の元へ向かうという段取りよ。」
キサラギ「厄介な七色の男が寝ている今が、チャンスという訳か。いいだろう、俺はミヤモトさえ斬れればそれでいい。」
エルダ「じゃあ、明日の昼に、この街の裏手の山に集合ね。そこから、私のレッドドラゴン・ヴィクトリーに乗って、ポナ村へ行くわよ。」
キサラギ「分かった、ご馳走さま。」
エルダ「ちょっと、あんた男でしょ!!普通、男が出すものよ。」
キサラギ「俺には金がない。」
キサラギは、そういうと走ってbarから外へ出て行った。
エルダ「なんなのアイツ!!最低!!」
エルダはカル酎を再び注文し、ゴクゴクと飲み始めた。




