村人達の支え
ソータは、左腕でゴブリンキングの斧をガードした。
カーーーーン!!
まるで巨大な岩でも叩いたかのような音がして、ゴブリン・キングの両腕に衝撃が伝わった。
ゴブリン・キング「ぐわああ!!両腕が痺れる!!なんだ、コイツは!!」
七色に輝くソータの左腕には、かすり傷一つつかず、次の瞬間、ゴブリン・キングの顔面をソータの右ストレートが捕らえた。
ソータ「スパーク・ナックル!!」
ゴブリン・キング「ホゲーーーーーーーー!!」
ゴブリン・キングは100m程吹っ飛んで、山道を転がり落ちていった。勝利を確信したソータは、金髪が黒髪に戻り、体から七色の光の輝きが消えた。しかし、足元がふらついて、その場に座り込んだ。それを見た村人の男達は、あらかじめ準備していた担架を持って、ソータの元へ駆け寄った。
村人の男達「ソータ、大丈夫か?みんなでソータを担架へ。」
「いいか?せええの!!」
ソータの上半身と下半身を4人の男達が抱えて担架に乗せた。そして、10人ぐらいの男達が、担架を持つのを交代しながら、ソータを寺まで運んだ。
寺に着くと、おばちゃんの数が少し増えて5人ぐらいになっており、ユナに晩ご飯を食べさせていた。おばちゃん達は、敷いてある布団まで男達にソータを運ばせ、ソータの汗を拭き、着替えをさせて、ソータを寝かせた。
おばちゃん達「少し熱があるけど、今回はそれほどでもないわね。」
「明日の晩ぐらいには、元気になりそうね。」
ユナ「お兄ちゃん、いつもこんなんで、長生きできるの?」
おばちゃん達「できるに決まってるじゃないの。」
「そうよ。ソータは、普段は元気だから大丈夫。」
「ユナちゃん、明日学校でしょ?さっさと寝なさい。ちゃんと宿題はした?」
幼い頃から、そして毎回闘う度にソータの看病をして来たおばちゃん達は馴れていて、手際が良かったが、ソータを心配して村人の男達が持ってくる物に、いつも困惑した。
村人で、林業をしている男がナイロン袋いっぱいに、雀蜂の幼虫を詰め込んで持って来た。
林業の男「コイツをソータに食わしてやってくれ。これは、たんぱく質の固まりだ。」
おばちゃん達「なにそれ、気持ち悪い!!」
「せめて調理して持って来なさいよ!!」
林業の男「男は台所に入るなって、俺は子供の頃に、お袋に言われて育った。」
おばちゃん「とりあえず、フライパンで揚げてみようか。」
そうこう話をしていると、今度は漁師の男が、5m程の変な生物を持ってやって来た。
漁師の男「コイツをソータに食わしてやってくれ。珍しく、今日に限って浜にうち上がっていてな。リュウグウノツカイだ。」
おばちゃん達「あんた、そんなのより普通の魚持って来なさいよ!!」
「これって食べれるの?」
漁師の男「リュウグウノツカイだぞ!!名前からして、コイツは神の魚に違いない!!コイツを食べたソータは、たぶん不老不死になるだろうよ。」
おばちゃん「とりあえず、刺身にしてみようか。」
そうこう話していると、今度は大工の男がやって来た。
大工の男「コイツをソータに食わしてやってくれ。また、熱が出て、例の風邪みたいな症状だろ?なら、卵酒だ。俺はこれで風邪を毎回撃退してるんだ。コイツで明日の朝には、ソータは元気になってるはずだ。」
大工の男は、ダチョウの卵と日本酒を置いた。
おばちゃん達「あんた、馬鹿じゃないの?なんでダチョウの卵なの?」
「そこは普通の卵でしょ。」
大工の男「ダチョウの卵は、普通の卵の25倍だぞ!!つまり、こいつを食べれば、25倍速くソータの風邪も治るというわけよ。」
おばちゃん「とりあえず、卵酒作るわね。」
「この村の男達って、馬鹿ばっかり。」
「でも、馬鹿はいいわよ。ずる賢いこと考えないし、いつだって正直だもん。」
「確かに。それに素直だしね。」
それからも、村の男達は、珍しい茸や果物、野菜等を持って来て、ソータの部屋は食材でいっぱいになった。
ソータはおばちゃん達に起こされて、少し食物を食べさされ、また寝始めた。おばちゃん達は、ソータの氷枕を変えたり、度々、汗をかいたソータを着替えさし、一晩中、ソータを交代で看病した。その結果、次の日の朝、ソータの熱は下がり、自分でご飯を食べれるようになるまで回復した。
世界を支えているのは、おばちゃん達です。
続きが気になる方、よかったと思う方はブックマークをよろしくお願いします。