ノヴァ
日曜日の昼過ぎ、天気はよく快晴で、ポナ村に魔王の手下達が襲って来る気配はなく、ブルードラゴン・ギズモとドラゴンライダー・ユナは、空の散歩に出かけた。
ギズモ『ユナ!!前方に何か飛んでるわ!!』
ギズモが、いつものようにテレパシーでユナに話しかけた。
ユナ『何あれ?なんかカブトガニみたいな・・・・宇宙船?』
光輝く黄金のカブトガニのような、全長100mほどある巨大な宇宙船が、ギズモとユナの数十m前を、物凄い速さで横切って行った。
ギズモ『魔王の武器は、この世界には無いものらしいの。噂では、魔王は遠い文明の発達した星からやって来たとか。もしかしたら、今のは魔王の宇宙船かも。』
ユナ『そうかもね。武器だけでなく、あんな凄い宇宙船まで持ってるとなると、私達に勝ち目はあるの?』
ギズモ『勇者達もかなり殺されてるみたいだし・・・・でも、この世界は魔王を受け入れていないみたい。それだけが救いね。』
ギズモは星海草原に降りてユナを下ろし、星草を食べ始めた。ユナは、ビニールシートを敷いて、ギズモが星草を食べているのを見ながら仰向けになり、青空を眺めた。
一 とある島の魔王の別荘 一
魔王は、エメラルドに輝く海で、若い数人の女達と泳いだりバーベキューをしたりして、日曜日を満喫していた。若い女達は美人揃いで、一人を除いて、みんな魔王の金を愛していた。魔王と一緒になることで、仕事を辞めて人生楽勝モードを手に入れようとしていたのだった。
肉を少し食べた魔王は、何人かの女達を連れて円になり、砂浜でビーチバレーを始めた。笑顔で浮かれている魔王の目に、バーベキューの近くでビキニ姿が黄金の鎧に変化し、黄金のバックルを右肘に装着し、黄金の弓を持って立っている一人の女が映った。
魔王「ま、マジか!!ビキニの水着が黄金の鎧に変化した!!まさか、女の勇者?」
その女は黄金の弓を弾き、魔王の近くにいた金髪の女の頭を撃ち抜いた。
女達「キャアアアア!!」
女達は悲鳴を上げ、魔王の後ろへ下がった。
弓を放った女が叫んだ。
女「魔王!!私の名は勇者・ヴァルキリー!!さあ、武器を召喚させて、私と勝負しなさい!!私は貴方を倒すためなら、どんな手段も選ばない!!女達を人質にしたって無駄よ!!」
魔王「マジか!!女の勇者って怖いな。てか、今のこの状況、はっきり言ってお前の方が悪者だぞ!!」
ヴァルキリー「貴方はこの世界には要らないと
ノヴァが言っている!!例え貴方が正しいことをしても、貴方はこの世界には受け入れられない!!」
魔王「誰だ!!そのノヴァって奴は!!」
魔王は目の前に現れた画面を触りながら叫んだ。魔王が画面を触っている間も、光輝く弓矢が魔王の頭をすり抜けて行った。
ヴァルキリー「ノヴァはこの世界では絶対的な存在!!」
魔王の右掌に、小さな丸い白のボトルが握られていた。
魔王「これ?これがコイツの天敵の武器?」
10㎝程の白のプラスティックボトルのような武器の名前はウィリアム・キラーと表示されていた。魔王がウィリアム・キラーのキャップを開けると、ヴァルキリーの放つ弓矢をことごとく吸い込んだ。
ヴァルキリー「クッ私の弓が、あの未知の武器に封じ込まれている!!」
ヴァルキリーは弓を放つのを止め、黄金の弓をレイピアに変形させて、魔王に突進して来た。
魔王「うおおおお!!あの女、接近戦に持ち込んで来やがった!!」
魔王は、慌てて逃げ始めたが、ヴァルキリーの足の方が速く、追いつかれるのも時間の問題だった。
そして、ヴァルキリーがついに追いつき、魔王の背中に斬りかかった。
ヴァルキリー「もらったわ!!死ね!!魔王!!」
その時、魔王も振り返った。
魔王「死ぬのはお前だ!!」
ヴァルキリー「な、そんな・・・・いつの間に・・・・。」
魔王は左手に小銃・グングニルを持っており、グングニルから発射されたレーザーが、ヴァルキリーの胸を、黄金の鎧ごと撃ち抜いた。
魔王「ハアッハアッハアッハアッ。今回はマジやばかった。ハアッハアッハアッハアッ。」
ヴァルキリーは仰向けに倒れた。
ヴァルキリー「さすが魔王ね・・・・走りながら・・・・その武器を・・・・召喚させるとは・・・・。」
魔王「ハアッハアッハアッハアッ。その通り。ハアッハアッハアッハアッ。ところで、そのノヴァってのは誰だ!!ハアッハアッハアッハアッ。」
ヴァルキリー「勇者は・・・・ノヴァに生産されている・・・・お前が幾ら勇者を倒しても・・・・勇者は必ずお前の前に現れる・・・・お前は、ノヴァからは逃れられない・・・・・・・・。」
魔王「おい!!おい!!だから、そのノヴァってのは誰なんだ!!おい!!」
魔王はヴァルキリーに向かって叫んだが、ヴァルキリーは死んで返事は返って来なかった。
魔王「ノヴァって一体何者なんだ?勇者を生産するって。てか、自分が倒しに来いっていう話だよ。」
魔王は、バーベキューをしていた場所に歩いて戻ったが、女達は誰一人残っておらず、みんな何処かへ逃げて行っていた。
魔王「あ~あ。せっかくの日曜日が台無しだ。ったく、これだから勇者は嫌いなんだよ。」
魔王は肩を落とし、別荘の中へ入って荷物をまとめ、帰る準備を始めた。
夕方になり、コバルトブルーの海は夕日に照らされていた。




