魔王がいた世界
一 西暦5002030年 地球 一
太陽が照りつける砂漠で、身長3mほどで全身茶色のザラザラした肌、頭部は機械化されて、台形のモニターになっている何人かの未来の運搬人間達が、巨大な直系5mぐらいの肉の塊を運んでいた。その肉の塊は、食物用の肉人間達だ。運搬人間達は、銀色の特殊なスーツを着た小柄な1人の人間の指示に従って、肉人間達を運んでいた。その銀色のスーツを着た小柄な人間が、後にソータ達の世界にやって来る魔王となる男である。
魔王となる男は、痩せ細った茶色の馬のような人間に乗っていたが、指定されたブルーシートのある場所に着くと、馬人間から下りて、シートの上に運搬人間達に肉人間達を置くように指示した。しかし、照りつける太陽の下で頭部がイカれたのか、運搬人間達は、肉人間達を魔王となる男に向かって投げ始めた。
魔王となる男「うわっ一体どうしたというんだ!!トラブルか!!」
魔王となる男がそう叫ぶと同時に、重さ200キロからある幾つもの肉人間達が当たり、特殊なスーツは壊れ、魔王は倒れて気を失った。
気が付くと、魔王となる男は小型の宇宙船に乗せられ、宇宙にいた。奇跡的に命が助かったようだったが、身長1mほどしかなかった身体は1.8mほどになり、細くて足より長かった腕は縮み、短かった足は伸びて、灰色の肌は橙色で、頭部には無かった黒い髪の毛が生えていた。いわゆる旧人類の男の姿になっていた。宇宙船は、発見されているワームホールを幾つも拡げて通り、太陽に到達した。そして、シールドを張って太陽に近づくと、太陽に黒い穴が開き、その中を一瞬で通り抜けた。
太陽から出ると、そこは別の宇宙だった。
魔王「宇宙の色が緑色になった!!」
宇宙船で眠っている間に、旧人類の記憶を植えつけられると同時に、幾つものワームホールを通り続けた影響で、魔王となる男は、敵となる者に出会った時に、その敵の弱点となる武器を空間から取り出せるという、チートスキルを手に入れた。
科学者達は、再び植民者として、人類を宇宙へ送り出す計画を立てた。過去に何度も人間を送り出し、帰還した子孫達の情報を集めた結果、ソータ達が住んでいる惑星の座標を予測し、魔王となる男を宇宙へ送り出したのだった。
ソータ達の住む惑星は、地球よりも少し大きく、魔王となる男は到着して1ヶ月も経つと、チートスキルで富を手に入れた。勇者と呼ばれる人間達を数えきれないぐらい倒し、魔物達から魔王と呼ばれるようになった。
魔王の他にも、何人か送り出されたようだが、どこで何をしているのかは分からない。
しかし、いくら魔王と呼ばれる男でも、人間である以上、いつかは死んでしまう。この世界が気に入った魔王は、永遠の命が手に入るという賢者の石の噂を聞きつけ、それが有りそうな村や街へ魔物を送り出すようになった。
たまに、街の裏山に置いてある宇宙船を見に行くと、宇宙船は魔王に美しい女の声で語りかけてくる。
宇宙船「そろそろ地球へ帰る気になりましたか?」
魔王「絶対いや!!無理!!あんな砂漠で人間を食べる世界なんて、まっぴらごめんだ!!俺はずっとここにいる!!」
宇宙船「そうですか・・・・。」
宇宙船は残念そうな声で答えた。
魔王「それよりも、せっかく会いに来たんだ。なんか歌ってくれよ。」
魔王がそう言うと、宇宙船は歌い始めた。
魔王「相変わらずいい歌声だ。さすが、元宝ジェンヌだな。」




