犬猿の仲
しかし、騎士達は誰一人ミヤモトに殴りかからなかった。メイスを握りしめてはいるが、誰もがたじろいでいた。
ジャッカル団長「どうした!!相手は一人だ!!大勢で一斉にかかれば倒せるはずだ!!」
騎士達は思った。自分は真っ先に後ろに逃げといて、命令するだけかよと。
ジャッカル団長が叫んでも、誰もミヤモトに向かって行く者はいなかった。狂犬・ミヤモトの迫力に圧倒され、誰一人、一歩たりとも動けなかった。
突然、ジャッカル団長は、自分の目の前にいる騎士の後頭部を思いきり殴り、ボコボコにした。
ジャッカル団長「ミヤモトにかかって行けない奴は、俺がボコボコにする!!俺かミヤモト、どちらか選べ!!」
騎士達「じゃあ、団長で。」
「団長なら、俺でも勝てそうな気がする。」
「確かに。団長は普通の人だしな。」
騎士達は振り返り、最後方にいる団長に向かって歩き始めた。
ジャッカル団長「ちょ、ちょっと待て!!今のは取り消しだ!!お前達に選択の余地はない!!ミヤモトだ!!裏切り者のミヤモトを殴り殺せ!!」
ジャッカル団長がそう叫ぶも、騎士達は歩みをやめない。
ジャッカル団長「う、うぅ・・・・退却!!退却だ!!」
ジャッカル団長は、そう叫ぶと騎士達に背を向けて走り始めた。騎士達は、ジャッカル団長を追いかけて行った。
こうして、遠征軍はポナ村からいなくなった。
一 夕飯時 ソータとユナの住む寺 一
ミヤモト「と言うわけで、今日からこの寺で住まわせてもらうことになったミヤモトだ。よろしく。」
民さんが作ってくれたモツ鍋を囲んで、ミヤモト、ミーナ、ユナの3人は座り、食べ始めた。その隣で、ソータは例の高熱を出して寝込み、おばちゃん達の手当てを受けていた。
ミーナ「ちょっと、お侍さん。さっきからモツ食べすぎ。この中では、あんたが一番下端なんだから、あんたは白菜とか野菜担当よ。」
そう言って、ミーナはミヤモトのモツを取って食べた。
ミヤモト「お前だって、さっきからモツばかり食べてるじゃないか!!ユナちゃんより、お前の方が明らかにモツを食べている!!」
ミーナ「それは、大人と子供の差よ。大人は子供より食べるでしょ?それより、あんた明日から仕事どうするの?騎士やめて無職なんでしょ?まさか、明日から村をフラフラする気?そんなことができるのは、暴れん坊将軍か長七郎だけよ。」
ミヤモト「むむ・・・・とりあえず、明日村長に会ってみよう。ひょっとしたら、ボディーガードで雇ってもらえるかもしれん。」
ミーナ「甘いわね、そのポジションは私が確保済み。この村の求人は、今のところ出てないわよ。」
ミーナは遠征軍が来たとき、村長の付き添いで秘書として、隣の街・カサブランカへ行っていた。ユナは、学校で授業を受けており、ギズモに乗って駆けつけたときには、もう遠征軍はいなかった。
ミヤモト「お前が村長のボディーガードだと?お前に村長を守れるのか?さてはお前、村長の愛人だな?」
ミーナ「このバカ侍!!子供がいる前でなんてこと言うの!!それに私は、村長さんの愛人なんかじゃないわ!!」
ミヤモト「フン!!お前みたいに食い意地がはった女は、何をするか分からん。」
ミーナ「ちょっと、あんた表に出なさい!!私の魔法で、その根性を叩き直してやるわ!!」
ミヤモト「補助魔法でか?攻撃性がないところを買われたんじゃないのか?」
ミーナ「うるさいわね!!とにかく表に出なさい!!このバカ侍!!」
おばちゃん達「あんた達、ちょっとうるさいわよ!!」
「ソータが寝れないじゃない!!」
「侍って、けっこう話すのね。無口なのかと思ってた。」
ミーナ「それは、眠狂四郎だけよ。ちなみにこの人は、狂犬・ミヤモト。犬だから、1日中吠えるのよ。」
ミヤモト「このクソ女!!表へ出ろ!!叩き斬ってやる!!」
ユナ「ちょっと二人ともケンカをやめて下さい。とりあえず今は、ご飯を食べましょう。」
ユナの一声で、ミーナとミヤモトは黙り込み、鍋をつき始めた。
ソータ(うるさくて眠れない。)




