ミヤモト
村の大通りで、ジャッカル団長を先頭に、ソータと1000人ほどの騎士達が向かい合った。
ジャッカル団長(おいおい、このガキ強すぎないか。そうだ、ここはミヤモトと差しで勝負をさせよう。)
ミヤモトは入隊してまだ2週間余りだが、剣の腕が立ち、正義感ぶった態度がジャッカル団長は気に入らなかった。騎士団の中では一番新人のくせに、態度がでかく、多くの騎士達が嫌っていた。
ジャッカル団長(このガキにボコボコにされるミヤモトを、俺は見たい。ミヤモトが万が一勝ったとしても、この際、俺の手でミヤモトを斬ってやる。ミヤモトが圧勝で勝つことは、まず有りえない。勝ったとしても、その時にはミヤモトに闘う力はないはずだ。)
ジャッカル団長「ここは騎士らしく、1対1の対決といこう。ミヤモト!!前へ出ろ!!」
そう言われてミヤモトは、隊の後ろの方からゆっくり歩きながら出て来た。
ジャッカル団長「頼んだぞ、ミヤモト。」
騎士達「ミヤモト!!お前強いんだろ?」
「頑張れ、ミヤモト!!」
「死ね!!ミヤモト!!普段から偉そうにしやがって!!」
「殴り殺されろ!!」
「骨は拾ってやる!!だけど、燃えるゴミと一緒に出しといてやるよ!!」
さまざまな応援が飛び交い、ミヤモトは改めて自分がかなり嫌われていると確信した。
ミヤモト「薄々気づいてはいたが、俺って意外と人気ないんだな。」
ミヤモトはソータに近づき向かい合った。ソータの方が少し背が高かった。
ソータ「なんでこんなことをするんだ!!あんた達は騎士だろ!!騎士は無抵抗な者を傷つけたりしないんじゃないのか!!」
ミヤモト「騎士はどうだか知らないが、侍はお前の言う通り、無抵抗な者を傷つけたりはしない。因みに俺は侍だ。」
そう言うと、ミヤモトはソータに回れ右をして背を向け、ジャッカル団長に向かって叫んだ。
ミヤモト「ジャッカル団長!!俺はあんたの荒行にはもう、うんざりだ!!俺はたった今、騎士団をやめた。そして、ジャッカル団長、俺はあんたに決闘を申し込む。騎士らしく、1対1で勝負しろ!!」
ジャッカル団長率いる騎士団は、ポナ村へ来るまでに2つの村へ寄り、同じように荒らして村人達を苦しめた。
仕事がないミヤモトは、そこそこ給料の良い騎士団の募集を見て騎士団に応募し、剣の腕を見込まれて採用された。そして早速、遠征軍第1部隊として、ポナ村までやって来たわけだが、ソータの闘いぶりを見て、自分らしく生きるより、金を選んだ自分が恥ずかしく思った。
この少年は、村を守るために闘っている。自分より明らかに年下だ。それに比べて自分は、金のために闘っている。騎士達が、店に金を払わなかったり、物を盗んだりするのを見てみぬふりをして、金のために騎士をやっていると思うと、そんな自分に腹が立った。人として、すでにミヤモトはソータに負けていた。
ジャッカル団長「まさかの裏切りかよ。ミヤモト!!考え直せ!!騎士の給料は25万!!こんないい仕事は、なかなかないぞ!!うおっ!!」
ジャッカル団長が叫ぶや否や、ミヤモトは素早くジャッカル団長に駆け寄り、二刀流の刀でジャッカル団長の盾を斬りつけた。
ミヤモト「二天一流・十文字斬り(じゅうもんじぎり)!!」
ジャッカル団長のラメラーシールドが4つに分かれて地面に落ち、左手に持ち手だけが残った。
ジャッカル団長「な、ラメラーシールドが!!」
騎士達「ラメラーシールドを斬りやがった!!」
「狂犬ミヤモト、アイツの剣は狂ってる!!」
「アイツに防具は無意味だ!!」
ミヤモト「悪いな、団長!!俺の剣はファンタジーだ!!」
ジャッカル団長「この野郎!!みんな!!かかれ!!ミヤモトを殴り殺せ!!」
ジャッカル団長は、逃げるように後ろ歩きで下がりながら、騎士団の中へ紛れ込んだ。




