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マロの夢

作者: 零
掲載日:2017/02/21

ボクの名前はマロ。

柴犬の子供だ。

半年くらい前に、今の家にもらわれて来た。

お母さんや兄弟たちと別れるのは辛かったけれど、タクトが優しくしてくれるから寂しくても頑張れる。

タクトはボクがもらわれて来た家の男の子だ。

小学五年生だ。

毎日ランドセルを背負って走っていく。

ボクは学校がどんなところか知らない。

でも、タクトは帰ってくるといつもボクに学校の話をしてくれる。

だから、ボクはタクトの友達の名前も知ってる。

タクトの好きなものも知ってる。

でも、タクトのお父さんとお母さんは知らないみたいだ。

だって、タクトのお父さんもお母さんも、タクトが帰ってきた時、家に居ない。

タクトが学校のあと、塾に行って、ボクの散歩に行って、それから帰ってくる。

二人とも遅くまで仕事をしているのだって、いつかタクトが言ってた。

それを話しているタクトは何だか寂しそうだった。

ボクの家はタクトの家の庭にある。

だから、家の中のことはよく分からない。

でも、タクトの笑い声が聞こえないんだ。

いつも、ボクに学校の話をする時は、楽しそうに笑っているのに…


ボクはお母さんが大好きだ。

兄弟たちも大好きだ。

今は離れているけど、今でも大好きだ。

お父さんはいなかったけど、お母さんはあったかくて、優しくて、時々厳しかった。

兄弟たちとは、喧嘩もしたけど仲良しだった。

いつも皆でくっついてお乳をもらったり、眠ったりしてた。

お母さんも、兄弟たちも、きっとボクの好きな遊びを知っている。

好きなものを知っている。

でも、タクトのお父さんとお母さんは、タクトの好きなものを知らない。

タクトにはきょうだいもいない。

ボクはなんだか変な感じがした。


それから、どれくらい日が過ぎたのか、ボクには分からないけれど、ある夜、家の中から大きな声が聞こえた。

ボクはうとうとしていたからびっくりした。

いつもなら電気が消えている時間に、リビングの電気が点いている。

そこには黒い影がいくつか見えた。

その中のひとつが端のほうへ移動すると、ばたん、と、ドアの音がした。

続いて玄関のドアが開く音。

タクトだ。

タクトは散歩用のリードを持っている。

いつもなら思いっきり尻尾を振って出迎えるけど、今日はもう夜だ。

でも、タクトはボクにそれをつけると家の門から外へ出た。

タクトは泣いていた。

それは分かった。

でも、ボクにはどうしようもなくて、黙ってタクトの横を歩いた。

タクトは何度も何度も涙を拭きながら歩いていた。


タクトはどんどん歩いていった。

いつもの散歩コースじゃない事はすぐに分かった。

見たことの無い風景がどんどん過ぎていく。

ボクは不安になってタクトを見上げた。

タクトは止まらなかった。

真っ赤に泣きはらした目をして、歩いていた。


どれくらい、歩いたろう。

タクトは川辺の草に座り込んだ。

ボクもタクトの横に座った。

タクトは膝を立てて、顔を埋めている。

泣いてるのかな、とボクは思った。


ふいに、何かの影がボク達の上に被さってきた。

頼りない外灯の光は、遮られると、変に明るさを感じた。

そこにいたのは大柄な男の子たちだった。

ボクは直感で思った。

タクトから聞いた事がある。

タクトの通う塾に、いじめっ子がいるって。

前にタクトがその子たちが他の子をいじめているところに助けに入った事があるって。


仕返しに来たんだ!


ボクはとっさにそう思った。

ボクはその子らに向かって唸った。

なんだこいつ、と、一番大きな子が言った。

そして、僕に向かって足を蹴り上げてきた。


瞬間、ボクは、痛さを感じなかった。

代わりに暖かいものに包まれていた。

タクトだ!

タクトがボクを庇った!

ボクを庇ったタクトの額から血が流れ出していた。

ボクは吠えた。

力の限り、大きな声で吠えた。

誰か来て!

早く!

早く!

早く!


その後、近くに居たおまわりさんがボク達を見つけてくれた。

タクトを蹴飛ばしたヤツは、靴に血がついていた事が証拠になって、こっぴどく叱られたらしい。

タクトが助けた子や他の塾の子も皆がタクトの味方についてくれた。

タクトは一躍ヒーローになった。

でも、タクトは変わらない。

タクトは威張ったりせず、ボクを褒めてくれた。

ボクがタクトを守ろうとしたこと。

ボクが吠えたから、おまわりさんが来てくれたと。

そんなタクトがボクは大好きだ。


あの日、タクトはいじめのことをお父さんとお母さんに相談したみたいだった。

でも、お父さんとお母さんは騒ぎを起こすことを怖がって何もしなかった。

タクトの話も聞こうとしなかった。

だからタクトは怒ったんだ。

哀しかったんだ。

タクトはそれから塾をやめて道場に通うようになった。

実は、ボクもそれについていっている。

ちょっと遠くにある道場は、ちょうどいい散歩コースだった。

いつか、本物のヒーローになったタクトの傍に、ボクが居られたらって思う。

それがボクの夢なんだ。


お付き合いくださいましてありがとうございます。

この作品は、以前北日本児童文学賞に投稿して選外だったものです。

私が書くものとしては、珍しく犬が登場します(笑)

……大体猫なのですが(笑)

ちょっとだけですが、いじめという重たい話を絡めてしまいました。

でも、実際はきっと、もっと大変ですよね。

私が真っ向から取り組むには難しすぎて、技量が足りなさ過ぎて手が出せない部分ではあります。

力量不足で申し訳ない。

この作品は、実は投稿したものとは違います。

実は、その原稿を紛失してしまいました(笑)

あるいは、手書きで書いたのかもしれません。短いですし……

なので、下書きをそのままです。


重ね重ね、お付き合いくださいましたことに感謝いたします。

精進してまいりたいと思いますので、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

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