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5-14

元ニュールンベルク首都 サントス ???


 ウィンザー国と言う小さな国に5人の工作員を派遣して早半年。

 その工作員も、1人が処刑され、2人が捕まり、残り2人が何とか情報を持って帰ってきた。

 その情報には、前回負けて処断されたベルナンドの言った通り、火の出る筒が開発されていた。

 工作員曰く、火の出る筒はおおよそ50m離れた的を木っ端微塵に破壊する。

 工作員曰く、作りは簡単なものの、発射する前に詰めている黒い砂のような物が必要である。

 工作員曰く、帝国と徹底抗戦の構えを見せ、軍備拡張と装備の充実を目指している。

 

 そして、報告の中でも厄介なのが、防衛施設の充実だ。

 確かに火の出る筒も危ないが、それを最大限利用するために開発されたと考えられるのが、防衛施設だ。

 

 それもこの国どころか、この大陸全土を見渡しても見た事も、聞いた事も無いような施設ばかりである。

 特に城として作っているであろう、山の施設は、謎の直線状に掘られた道が出来ていた。

 また、「ホリ」と呼ばれる最前線の施設は、そのままなのだが、裏に謎の土壁ができているとの報告があった。


「……もう少し詳しい情報があれば良いのだが……、敵の防諜がここまで整備されているのは、誤算だった」


 私はそう呟きながら、工作員の得た情報を精査していた。

 特に一番の誤算は、「ニュールンベルクの影」と謳われた部隊がほぼ完全な形で敵方に移っている事だ。

 奴らの防諜技術は正直、面倒だ。

 

「さて、これ以上の諜報活動は、正直厳しいな……。アレハンドロからは、最悪殺しても構わないと言われたが……。とりあえず情報を持って帰る事を優先せざるを得んな」


 私は、ため息を一息ついてから工作員に次の指示を出すと、帝都へと戻る事にしたのだった。




元ニュールンベルク首都 サントス ボリス


 どうにか、ウィンザー国とハイデルベルク国の協力を取り付ける事に成功した私は、一先ずサントスの司令部に戻った。

 そんな私を出迎えたのは、もう1人の意外な人物だった。


「お初目にかかる。アニエス・クラックという。瞬炎の魔術師と言った方がわかりやすいかな?」


 そう言って私に手を差し出してきたのは、ハイデルベルク最強の筆頭魔術師を名乗る赤い髪の女性だった。

 一瞬、戸惑いはしたものの、彼女の差し出した手を握り返しながら自己紹介をすると、彼女はニッコリと笑いかけてきた。


「さて、自己紹介も終わった所で、ボリスも状況が聞きたかろう。席につきたまえ」


 解放軍総大将であるマルボルク伯の勧めに応じて、私とアニエス、そして軍の主なメンバーが真剣な面持ちで伯の方を見た。


「今回、我が解放軍に参加してくれることになった、瞬炎の魔術師こと、アニエス・クラックだ。彼女の炎魔術の恐ろしさは皆知っていると思う。これからは頼もしき仲間であるから、仲良くやってくれ」


「おぉぉ」


 その場に居たほとんどの者が感嘆の声を挙げた。


「ニャスビィシュ同様、過去には争った経緯はあるが、今回の作戦に陽動部隊として参加してくれた事をこの場の全員を代表してお礼申し上げる」


「いえ、私も国王を殺され、仇を討たねばなりません。その為にも皆様に協力させて頂きます。過去の諍いをしばしの間忘れ、手を取り合えることを願っております」


 そう言うと、彼女はその場の全員に頭を下げた。

 それを皆がにこやかに見ている中、ニャスビィシュだけが微妙な表情をしていた。


「さて、今回は紹介だけの予定だったが、ボリスも帰って来たので、首尾はどうだったか報告をしてくれるか?」


「……いえ、少し疲れましたのでまた後日でもよろしいでしょうか? 気になる事もありますので……」


 私がそう言ってニャスビィシュの方を見ると、彼も頷いていた。

 何かがおかしいのだ。

 その何かをおそらく彼が知っている。

 彼から話を聞いてからでないと、全てを話す事はできそうにない。






帝国 帝都 アレハンドロ皇帝


 奴をウィンザー国なる小国に派遣してから半年以上が経ったが、成果はかなり限定的だったと言わざるを得ない。

 

「……で? 言い訳はそれだけか?」


「滅相もない。かの小国は存外手ごわかったが、別の成果はあった」


「それは、余の所にいた捕虜を連れて行った成果だろう?」


 全く、余としては〝かの者〟を手駒にして手っ取り早く強化したかったのだがな。


「陛下、それは違いますぞ。かの者は、使い方を変えれば敵にとってのジョーカーとなります。それを傍で買い殺すなど」


「ふん、で? 成果はあったのだろう? 報告せよ」


 余がそう言うと、道中まとめて来たのか紙の束で報告をまとめてきおった。

 余が受け取って報告書を見ていると、なるほど。

 確かにこれは良い。


「よかろう。ウィンザー国での失敗、これで一旦保留としてやろう」


「それは、重畳。ではつながったままの首と次の仕事に向かうとしましょう」


 奴はそう言うと、またスッと消えていった。

 それを見届けた余は、報告書の内容をもう一度精査し始めた。


「ウィンザー国、面白い国じゃ。まさか小麦を綺麗に挽くために水車で工場を造るとはな。そして、〝火縄銃〟か、……とんでもない兵器を作り出す奴でもあるな、何かしらの対策を考えねば危ないやもしれんな……」


 それから、諸将を集め、件の報告書を元に対応策を考えるよう指示するのだった。


前回はお休み頂きすみませんでした。

今後、不安定な日が続くと思いますが、頑張ってまいりますので宜しくお願い致します。m(__)m

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