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5-10

 敵に逃げられた俺たちは、できる限り情報を集める事にした。

 しかし、敵もあれ以降出てきてない事もあり、一体どこに行ったのか皆目見当もつかない状況が続いていた。


「……で、今後の事だが一度捜査の規模を縮小しようと思うんだがどうだろう?」


 俺の提案にバリス、アンドレアの2人が少し考えてから、首肯した。


「現状では、致し方ないですね。我々の身辺警護までさせては、過労で倒れてしまいますから」


「ですな。また敵が動き出したらと言うことになりますか……」


 まぁ、敵が動き出してからでは、正直遅い。

 できる限り敵の情報を集めつつ、相手を追い込んで行かないといけない。


「情報収集を諜報部に依頼して、続けさせながら……だな」


「了解しました。自警団から依頼を出しておきます」


「では私の方ですが、エレーナと一緒に考えてみた結果、1つの結論に行きつきました」


 そう言ってアンドレアが切り出してきたのは、奴が消えた理由についてだ。


「まず、前提として人は消えませんし、透過もできません。この事を念頭に置いて考えた結果、動物の体の特徴を利用した可能性があります。それについて仮説として――」


 そう言って彼が話し始めたのは、カメレオン等の体の色を変化させる生き物の事だ。

 背景色に同化し、見分けがつきにくい状態にすることで、見えなくなったという事だ。


 確かにそれならどこに行ったのか分からなくなったとしても不思議ではない。

 ただ、あの包囲網の中を脱出するとなると、相当な腕利きでないと不可能な事だ。


「その前提で考えるなら、帝国諜報部が有力でしょうな」


 そう後ろから声をかけてきたのは、爺さんだ。

 あの時の負傷で足を怪我して以来一線を退いているが、未だに諜報部の長として情報を整理している。

 

 お陰でワルターが放し飼いだが、最近は声をかけても手を出さないように自制しているらしい。

 なんでも「爺やの体調が、俺のせいで悪くなったら大変だ」とかなんとか言っている。

 まぁ、大人しくしてくれる分には特に問題は無いので、俺は放置している。


「で、その帝国諜報部は相当なのか?」


「えぇ、彼らは一人一人が達人級の腕前を持っており、特に逃げる事に関しては一流の者ばかり揃っております。私も何度か対峙しましたが、未だに一人も捕まえられていません」


 爺さんはびっこを引きながら椅子に腰かけ、俺達の話に加わった。


「爺さんが捕まえられないとなると、相当面倒な奴らなんだな?」


「えぇ、かなり面倒ですね。特に彼我の戦力差を計る目が中々でして、過去数度対峙しましたが、そのほとんどは一度も剣を交えず撤退されましたからね」


 うん、達人級の相手が一瞬で踵を返すって、爺さん化け物過ぎるだろ。

 俺がそんな事を思っていると、爺さんは相変わらず俺の心が読めるのか、「なに、儂なんてまだまだですよ」と笑いながら言って来た。

 本当に底の知れない爺さんだよ。


「で、そんな奴ら相手にどうすれば良い?」


「とりあえず、先程おっしゃっていた擬態する生物だと思って敵を追いかけましょう。なに簡単ですよ。ちょっと贅沢な方法を取るだけでね」


 そう言って爺さんは事前に用意していたリストを俺に渡してきた。

 そのリストを見た瞬間、確かにこれなら次に出てきた時が奴の最後になるだろうことがわかる内容だった。


「では、よろしくお願いします」


「あぁ、こっちとしてもよろしく頼んだよ」




 

 話し合いが終わって、みんなが帰ったあと、コーナーが俺に書類を持ってきた。

 間諜が居ようが居まいが、俺の仕事は相変わらず減る様子が無い……、いや増えているな、確実に。


「ロイド様の肝いり事業である小麦の製粉業ですが、稼働を始めてから順調に売り上げを伸ばしています」


 そう言って出してきた書類を見ながら話を聞いた。


「まず、製粉施設の使用状況ですが、稼働率200%です。次の水車工場を早めに作らないと大変なことになりますね。で利用料ですが、1回利用で銅10枚、3回利用で銅25枚となっております。こちらの売り上げが、稼働から5日で金1枚分の利益にはなりました。製粉した麦粉の売れ行きですが、こちらも製粉する前の麦が20k銀1枚だったのに対して、3回挽きの麦粉が10kで銀2枚になっております。これもハイデルベルク国の貴族を中心に飛ぶように売れており、2日で金1枚分になっております」


 かなり順調だ。

 いや順調過ぎるくらいだ。

 ちなみに、小麦粉を使った料理も街の商店を中心に開発が進んでいる。

 食パン、うどん、ほうとう、クッキー、ピザなど、俺が知る限りのメニューを提供している。

 まぁ、この辺りの商品については今後の観光資源になれば良いな、程度なので現在そこまで売り上げは上がっていない。


「製粉業、始めて正解だったな。新しい水車工場をどんどん作らせてくれ。多少郊外でも大丈夫だという事が分かったんだ。街を拡大するつもりでいってくれ。都市計画は任せる」


「わかりました。こちらで差配します」


 これで、うどんなどの日本食が少しずつ食えるな。

 ただ、まぁ海が遠いせいで、海洋性の出汁が取れないのだけが難点なんだがな……。





 それから数日後、噂を流した犯人逮捕の一報が、俺の元に届いた。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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