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5-6

 次の日、ボリスとワルターと俺の3人で話し合いの場を持つことになった。


「さて、それでは、ボリスはこの国には何の用があって来たんだ?」


「私は、今俗に言う反乱軍の実質的作戦参謀をさせて頂いています。その反乱軍の事でお願いがあってここに参上したのです」


「お願いとは?」


 俺がそういうと、彼は持ってきた荷物の中から、手紙を一通取り出し、渡してきた。


「これは、貴方の御父上であるマルボルク伯からの手紙です。内容はまとめるなら、反乱の為の作戦に参加してほしいという事です」


 俺は、手渡された手紙を開いて見ると、そこにはいかにも堅苦しそうな、キッチリとした字が並んでいた。


――私は、ニュールンベルク解放軍司令官、アルフォンス・フォン・マルボルクです。突然の手紙で失礼しております。今回お願いしたき儀があり、筆をとらせて頂いております。そのお願いとは、帝国軍をできる限り引き付けて頂きたいのです。先の戦乱にて貴国が、数倍する帝国軍を撃退したという事を耳にし、そちらに向かわせましたボリスと謀り、さる計画を立てております。

 ですが、その計画には、帝国軍の殆どが戦線に投入されるもしくは、意識がこちらに無い状態を作り出さなければなりません。

 そこで、貴国にはハイデルベルク王国と共に、帝国の目を逸らす役割を担って頂きたいのです。我らに頼る味方はもはや貴国とハイデルベルク王国しかございません。

 検討の程、よろしくお願い申し上げます。

 ニュールンベルク解放軍司令官 アルフォンス・フォン・マルボルク――


「……ボリス、作戦と言うのはどういったものなのだ?」


 俺と一緒に手紙を読み終えたワルターが彼に尋ねると、彼は少し周囲を警戒して声を落として話しかけてきた。


「詳細は、明かせませんが、実は……皇帝暗殺を計画しているのです」


「な!? そんな事できるのか?」


 皇帝の暗殺とは、大きく出たものだ。

 敵もそれは最大限警戒しているだろうし、何よりも少数で近づかなければならない。

 そんな事をしようとするなら、それこそ背中に鬼を持つ様な武の化身が必要だろう。

 

「……それを成す人物は居るのか?」


「居ます。双璧と言えばお判りでしょう?」


 双璧って、まさかあれか?

 ハンニバルの同僚のニャスビィシュとかいう人か?

 

「アスレイ・ニャスビィシュか? しかし、彼は行方不明では無かったのか?」


「えぇ、私もそう聞いていましたし、諦めていました。ですが、生きていたのです。とある村が保護をしていて、それを解放軍の諜報員がたまたま見つけたのです」


 そんな偶然、あるんだな。

 しかし、彼が手を貸す理由は何だろうか?

 いくら何でも義理も無い隣国の解放軍に命を張るとは思えない。


「ニャスビィシュ将軍は何を見返りに引き入れたんだ?」


 俺がそう聞くと、ボリスは首を振って話し始めた。


「いいえ、私たちは何も取引をしていません。彼が自分から参加してくれたのです。君主の仇を討つために」


 なるほど、士は己を知る者のために死すという奴だな。

 余程の忠誠心が無ければそんな事できないだろう。


「なるほど、先代のハイデルベルク王は、幸せ者だな」


「えぇ、そのお陰で、我らにはありがたい味方が増えましたよ」


「で、具体的に俺たちは何をしたらいいんだ?」


「確かに、敵を引き付けると言っても、どれくらい引き付ければ良いのかもわからんかったら、兵も動きにくいだろうからな」


「我々のお願いは、できうる限りです。敵の目が完全にそれるまで、必死に耐えて頂きたいのです」


「……となると、市街戦も考えないといけないか」


 市街戦、それは自国に敵兵を引き寄せ、地の利を生かして戦う方法。

 ただし、敵を入れれば荒らされる。

 敵が誘いに乗って来なければ意味がない。

 どうやって市街戦を展開するか、それも考えなければならないだろう。


「えぇ、苦しい選択だと思いますが、よろしくお願いします」


 ボリスは、俺達に深々と頭を下げてきた。

 確かにこの作戦が上手くいけば、一気に戦況が好転し、ニュールンベルクも解放されるだろう。

 ただ、彼らの命は、成功しても失敗しても恐らくない。

 

「……ボリス、死ぬつもりなのか?」


 俺の抱いた疑問をワルターも感じたのか、彼に尋ねた。

 彼は、頭を下げたまま、その問いに答えた。


「若……、いえ、陛下。私は、私の意思でこの事を成そうとしています。反乱軍に参加している兵達もそうです。陛下に一日も早くニュールンベルクに帰ってきていただき、王として差配を振るって頂きたいのです。我らの命でそれを成す事ができるのであれば、安いものです」


「それは……、いや、ありがとうボリス。お前たちの思いはしっかりとこの胸に刻み込んだ。お前たちは、安心して烈士となってくれ。私は、その思いを無駄にはしない事を誓おう」


「はっ! ありがたき幸せにございます。これで我ら有志千名、なにも思い残す事無く散り花を咲かせる事ができます」


 彼はそういうと、もう一度深く一礼してから顔を挙げた。

 その顔には、昨日までの教育係として心配する顔ではなく、1人の戦士としての顔だった。


「では、私は明日にはここを出発して、解放軍に戻ります」


「あぁ、みんなによろしく伝えてくれ」


「えぇ、陛下のお言葉しっかりと伝えます。ついでにどんなことをしてたかも」


 彼はそういうと、ニヤリと笑ってきた。

 それを見て、ワルターも「ボリスにはかなわないな……」と言いながらも笑っていた。


「ロイド、貴方の父上である司令官にも今の状況をお伝えしておきますね。何か言伝があれば、一緒に伝えますが?」


「ありがとうございます。ですが、私は正直記憶がなく、父の顔すら思い浮かびません。ですので、何も……。いえ、1つだけお願いしても良いですか?」


「えぇ、大丈夫ですよ」


「では、お互い無事であったなら、一緒に酒を飲みましょう。とお伝えください」


 俺がそういうと、彼は「わかりました」と笑って言ってくれた。

 まぁ、多分、会ったら会ったで、何を話したら良いのか分からないだろうけどね。


 そして、翌日。

 ボリスは、自分の任務が完了したので、解放軍へと戻っていったのだった。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m


※複数同じ内容の質問、感想が寄せられていたので、解説をします。

 まず、ロイドがなぜ解放軍の話を受けたのかですが、帝国軍が来ることは確定しております。

 そして、その帝国軍を相手に戦う事はできますが、現状の戦力では、どちらかが滅びるまで戦う事になります。

 そうならない為にどうすべきか、となると少ない確率ながらも解放軍の一手に賭ける他ありません。

(解放軍の賭けが成功すれば、少なくとも敵は混乱し、撤退などを始めます。詳しい内容は今後のネタになりますので割愛します。)


 こういった状況から、ロイドは即答で作戦に乗っております。


上記の描写が少なく分かりにくくなっていた事申し訳ないです。

何とか伝えられるよう、描写の追加については、後日考えさせて頂きます。m(__)m

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