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5-2

帝国 アレハンドロ皇帝


 余が自国に引き上げ始めて2ヶ月。

 歩兵を率いていたこともあって時間がかかったが、やっと帰国する事ができた。

 最初連れていたのは、総勢5万、内2万が船での迂回突撃を行い、3万で敵主力を駆逐して勝利を得たが、その次が拙かった。

 ニュールンベルクの隣にあるハイデルベルク。

 ここに我が兵2万と降伏兵約2万の合計4万で攻めたが、途中にある小国に迂回部隊1万が止められ、主力3万が鷹に喰われてしまった。


「鷹をどうにかしない事には、敵を崩せん。敵を崩そうと思うと、迂回路が必要。そして、迂回路にはこの小国か……」


 地理的にはほぼ必要ない場所。

 だが、後ろを取られると鬱陶しいこと、この上ない。

 しかも、ハイデルベルクと防衛同盟を結んでいる。

 こうなると、補給部隊の安全が確保できない可能性が高い。

 補給が無ければ略奪という手段もあるが、荒れ地を手に入れても正直仕方が無い。

 豊かな土地を手に入れて、我が帝国の民を住まわせるのがこの戦争の意義なのだ。


「となると、やはりこの小国は潰すべきか……。どうにかして取り込めないものか……」


 ただ、奴らは良く見えている。

 我らに従った後、どうなるか、これから先自分たちが自治独立を保つにはどう動くべきかが。

 それだけに惜しいと思ってしまっている自分も居る。

 

「なんとか、手に入れてみたい人材ではあるな……。おい、居るのだろう?」


 誰も居ないはずの部屋に余が声をかけると、部屋の角から一人の男がスーッと姿を現した。

 その男は、余の近くまで来ると跪いて頭を垂れた。


「……お呼びにより参上いたしました。如何なるご用でしょう?」


「うむ、余の軍の迂回を阻んだ小国の王について知りたい。また、手に入れる為どうにか裏工作をせよ。手段は問わない」


 余がそう言うと、男は一瞬口元を歪めてから「御意のままに」と言ってまた消えて行った。


「さてはて、上手くいくかどうか……まぁ、それを待ちながら準備するのも一興よ」





ウィンザー国 ロイド


 とりあえず、コーナーに水車設置の案を話し、予算がどれくらい出るのか聞いてみたところ、2台分くらいの予算ならどうにかなるという話だった。

 まずは、1台作って稼働状況を確認するか、2台一気に作って稼働するかと考えている。

 だが、問題もある。

 それは、この水車の設計を任せられるような人物がいるかという所が問題なのだ。

 

「どこかに良い人材は居ないか? アンドレア」

 

「そうですね、その水車式の石臼がどういった仕組みなのかが分かりませんので、何とも言えませんが、技術職の変わり者でしたら知り合いに居ますよ」


 アンドレアに変わり者と言われる奴か……。

 それ、かなり変な奴じゃないのだろうか。

 という不安もあるが、今現在技術者が居ないのは確かなので、とりあえずそいつを招集する事にした。


「で、そいつはどこに居るんだ?」


「場所は、ここからそこまで離れていない村の外れに住んでいますが、ロイドさん自身が行くべきだと思います」


「それは何か理由があるのか?」


「えぇ、彼はかなりの偏屈でも有名でして、誠心誠意こちらが頼まない限り了承しません」


「…………」


 どうしよう、もの凄く嫌な気配しかしないんだけど。


「まぁ、礼を持ってしても従うか知りませんが……」


 なんか最後の方に嫌な事をボソッと言いやがったな。

 だが、アンドレアが言う事もわかる。

 所謂三顧の礼だな。

 賢者などを迎えるなら相応の礼を尽くせという事か。


「だが、可能性があるならその人物に会わねばならないな。なんという名前なんだ?」


「彼の名前は、知りません。というか聞こうと思っても全く人の話を聞いてくれないので……」


 それ、かなり重症な奴だな。

 そんな奴迎えて大丈夫なんだろうか?


「ただ、話を聞く限り知識、技術については折り紙付きです」


「わかった。では今度、会いに行くとしよう。道案内を頼んでも良いか?」


「えぇ、それくらいなら大丈夫ですよ」


 こうして俺は、偏屈な技術者を国に迎えるために会いに行くことになった。



 数日後、やっと仕事の段取りが付き、暇な時間が出来たので会いに行く事になった。


「で、ここからどれくらいの距離に住んでいるんだ?」


「ここからだと、1日で往復できる距離ですね。ただ、彼に捕まって1日で済めばの話ですが……」


「えぇ~っと、そんなに話しまくる奴なのか?」


「それはもう、私が静かに観察する方だとしたら、彼は対象に話しかけ続けて反応を見ながら観察するタイプです」


「……どっちも限度があるだろうけど、お前がそういうって事はかなりの変人なんだろうな」


 ダメだ、帰りたくなってきたぞ。

 けど、ここで帰ったら技術者が手に入らなくなってしまうからな……。


 それから半日馬に揺られると、例の人物の家が見えてきた。

 その家は、控えめに言ってボロ屋、普通に言えば廃墟と言って良い状態の家だ。

 無事な部分は屋根くらいで、壁はボロボロで所々剝れており、扉は建付けが悪くなったのか、半開きになっている。

 そして、極めつけは、所々に血痕らしきどす黒い跡がついている事だ。

 まるでホラー映画やパニック系映画に出てきそうな見た目である。


「お、おい、アンドレア。本当にここであっているのか?」


「えぇ、ここ以外彼の住んでいる場所は無いので、あっています。というか、彼未だに壁とか直してなかったんですね。あ、あんまり私から離れないでくださいね。あちこち罠だらけなんで」


「罠!? なんでまた罠なんか作ってあるんだ?」


 どう考えても盗人が入る家ではない。

 どちらかというと、盗人がねぐらにしそうな家なのだ。


「なにやら貴重な研究資料などがあるから、防衛の為に必要だそうです」


「それは、またあれな人だな……」


「えぇ、私が言うのもなんですが、あれな人です」


 そう言いながら、彼はスタスタと器用に罠を避けながら歩いて行った。


「というか、お前なら罠を解除していけるんじゃないか? 魔術とか使って」


「出来ない事は無いのですが、以前それをやったら、彼に怒られまして……、出て行けとすごい剣幕でしたので、それ以来ここでは魔術は使っていません」


「……そうか、お前も苦労してるんだな」


 なんだろう、目から少し塩水が出た気がするぞ。

 

「さぁ、そんな事を話して居たら、玄関前に着きましたよ」


 彼にそう言われて前を見ると、半開きのドアの近くに来ていた。

 俺は、ドアを2,3度叩いて声をかけるのだった。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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