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幕間 「バー『花道』の会話」

ヒロイン回です。

ウィンザー国 バー『花道』 マリー


 今日は、ドローナの商会の打ち上げに来ている。

 なぜ私が参加しているのかというと、ここ最近私はスフォルツァ商会のウィンザー店の店員のアルバイトをしているのだ。

 

 元は小さな村だったが、今や2千人規模の大きな街となり、いつの間にか商店の建ち並ぶ一角ができ上がった。

 そして、商店の中でも一際大きく、大通りに面した場所にあるのが、私が手伝っているスフォルツァ商会『ウィンザー一番店』なのだ。

 

「さぁ! 昨日はでっかいヤマを当てたからね! 全部私のおごりで飲み食いしちゃって!」


 そう、上機嫌で乾杯の音頭を取ったのは、スフォルツァ商会の女番頭である、ドローナだ。

 彼女とは、王女襲来の時に手を組んでから、歳が近い事、同じ人が好きな事があってとても仲良くしてもらっている。

 まぁ、もちろんロイドを譲る気は無いけど。

 けど、もし叶うなら二人ともってのも良いかな? なんて、最近は思っている。


「ほらほら、マリー。飲んでる?」


「うん、美味しい料理もお酒も飲んでるよ」


 私が皆から少し離れた場所で飲んでいると、ドローナがお酒を片手に近づいてきた。

 ドローナにとって、ここに居る男の人たちは家族同然だと聞いているのだけど。

 流石にお父さんの様な筋骨隆々とした人たちが、何十人も居ると……ちょっとだけ怖い。


「……でさ、マリー。聞きたい事があるんだけど良い?」


「ん? なに?」


「ロイドさんがここに来た時、連れて来たのって貴女なのよね? やっぱりお父さんが運んだの?」


「ううん、私よ」


 ドローナの質問に私は何でもないといった感じで返すと、彼女は目を丸くしていた。

 あれ? そんなに不思議な話だったかな?


「え? ちょっとまって、話を整理するけど……流石に引きずって、よね?」


「ううん、そんな事したらロイド傷だらけになっちゃうじゃない。ちゃんと持ち上げて運んだよ?」


「……え? ほんとに?」


「だって、ロイド軽かったよ」


 あれ? なんか微妙なというか、周りの目が痛いのだけど……変、なのかな?

 だって、お父さんだって普通に持ち上げているし……。


「へ、へぇ~そう、なんだ~。それより、なんでロイドさんの事好きになったの?」


「え? あ、その……、優しかったところかな?」


 私は、それからドローナに2年前にあった事を事細かに話した。

 

「……という事で、私としてはその、気になるな~から好きだなに変わったんだと思う」


「なるほど、という事は、私と好きになった時期はあまり変わらなかったのね」


 そうか、あの日の事は、ドローナと会う2週間ちょっと前の話だから、そんなに変わらないんだ。


「そういえば、ドローナはどうしてロイドだったの?」


「ん~最初は、この人に着いて行けば、私の店が持てると思ったのけど、その為には彼に気に入られなければならない。で、アピールしている内に好きになっちゃったって感じかな?」


「それだと、ロイドがここを捨てて出て行ったり、もし負けたらドローナもどこかに行くの?」


「……それは無い、かな。いつの間にか、私が稼ぐ目標は、彼の為になったし、彼がどうなろうと私は彼に付き従うし、添い遂げたいと思っているわ。もちろん彼も同じ気持ちなら、だけど……」


 そういって、ドローナは少し顔を俯かせていた。

 彼女としては、恐らくこれが最後の相手になるだろう年齢だ。

 これ以上歳を取れば、どれだけ美しい容姿を持っていても貰い手が無くなる。

 ただ、ロイドは余りその辺を気にしてない感じが私にはする。


「それよりも、不安なのは、メリアね……」


「後10年もしたら、多分綺麗な女の子になりそうだもんね……」


 メリアは、もうすでに心に決めているのだろう。

 幼いながらもすでにアピールを始めているのだ。

 ロイドが変態だったら、イチコロだっただろうけど……。


「ノーマル朴念仁には、甘えてくる幼い妹って感じなんだろうね……」


「けど、あの子みたいに積極的にアピールしないと、あの人には通用しないんじゃないかな?」


 ちなみに、これまで私たちがただ指をくわえて、ただみていた訳では無い。

 ドローナはその肉付きの良い体を惜しげもなく晒し、際どい恰好で誘惑していたし、私は私で、彼の視界に常に入るように心がけ、さりげなく腕を組んだりしていた。

 

 していたのだが、彼は顔を赤くすることはあっても、私たちのどちらかに告白をしてくるとか、襲い掛かってくるようなことは無く。

 いつまで経っても手も口も出されないまま放置されるという状況だけが続いていた。


「ねぇ、マリーさん。この際だから……二人で襲いませんか?」


「え? えぇ! それは女としてどうなんですか?」

「だって、このままロイドさんに任せていたら、私、大年増になってしまいますわ! 既成事実を作らないと……」


 あ、ダメだ。

 眼が本気で餌を探す狼の眼だ。

 ただ、ここで彼女の提案に乗らなかったら、私は置いて行かれてしまう。


「う、うぅ~。わかりました! 私も一緒に襲います!」


 と、私が答えたのと同時に、ドローナがもんどりうって倒れてしまった。


「え? え? ドローナ? 大丈夫?」


 私が1人あたふたと彼女の体をゆすったり、息を確かめていると、隊商のオジサンが寄ってきて、ドローナを診はじめた。


「あぁ~、いつもの寝落ちだな。おい! 野郎ども今日はお開きだ! 姐さんが酔いつぶれて寝ちまった」


「あぁ~そりゃしゃあねぇな。おい! 誰かマリーちゃんを家に送ってやれ、今日は終わりだ!」


 え、えぇ~。

 って事は、あの話は無しって事?

 


 翌日、ドローナと昨夜のことを話していたが、彼女は最後の方の記憶がなく、ロイドを襲うという話は、結局流れてしまう事になった。




ウィンザー国 ロイド


「――――という話が、すぐそこのバー『花道』でされておりました」


 律儀にも俺に知らせを持ってきたのは、爺さんの部下である諜報員だ。

 神妙な面して話したいんだろうが、口元が笑いたくて震えており、台無しだ。


「とりあえず、一言だけ言うぞ。こんなくだらん報告は捨てておいてくれ……まったく」


 俺がそう呟くと、後ろからコーナーが笑いながら話しかけてきた。


「ぷ……、ロイド、さん。そろそろ、嫁を、決めては……クククク、どうですか?」


 こいつ、絶対楽しんでやがるな。

 ただ、確かに女性陣にこんな思いつめた事をさせるのは、どうなんだと自分でも思うが……。


 こういう時どうしたら良いのか、全く知らないからどうしようにもできない。


 誰か、助けてくれないかな……。


「ロイド! 聞いたぞ! 俺がどうしたら良いのか教えてやろう! ここはだ――」

「ワルター、参考にならないから止めてくれ」


 はぁ、どうして俺の周りはこう、参考にならない奴ばかりなのだろう……。


え? ヒロインと主人公のからみ? それは本編で。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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