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4-11

少し視点変更多いです。

 敵は、当初予想していた通り幅広く攻め寄せてくる構えを見せた。

 もちろん、正面にも兵を配置して、そいつらが石の盾を持ってジリジリと滲み寄ってくるので、アンドレアを他に移す事も、堀の兵に対処させることもできない。

 

「当初考えていた通りに戦線が広がっているな……。となると、やはり子ども達に全てがかかってくるか……」


 俺は両側の端に配置した子ども達6人に、作戦の要を託している。


「後は、敵が上手く動いてくれるかだな……」


 敵兵は堀を登る為、石の盾は捨てている。

 だが、全く防具を持っていない訳では無く、取り回しの良い鉄製のラウンドシールドの様な盾を持って頭を防御している。

 製鉄技術ではこちらに分があるものの、流石に盾は突き抜けないのか、中途半端に刺さって貫通している様子が無い。


「敵が頭を見せた瞬間、盾を横にずらした瞬間に狙えるものは狙え! 無理な者は弾幕を張れ!」


 弓隊にライズが大声で指示を飛ばしながら、狙撃を行っている。

 というか、あいつ話ながら良くヘッドスナイプ決められるな。

 

「敵兵! 逆茂木まで達しました!」


 流石に逆茂木では、盾を横に払うかと思ったが、奴ら盾で守りながら突っ込んでいやがる。

 もちろんスピードはかなり落ちているが、それでも擦り傷を気にせず登ってくる様は、威圧感がある。

 しかも、一人二人では無く、それが数千人規模で来るのだ。

 よく農民兵が恐慌を起こさず反撃しているものだ。

 さて、そろそろ敵に両側から攻撃が加わるはずだが……。





堀西部部隊 フラム


 先生や村長……じゃなかった、ロイド様? に認められて、僕は今端の堀を守る為に居る。

 外からは、悪い奴らが僕らの事を困らせようと、堀を登ってきている。


 ロイド様からは、魔法の制限をしなくて良いと言われた。

 倒れないギリギリまで魔力を高めて敵をやっつけて良いんだって。

 ただ、魔法だけはどんなのにするか言われたんだ。

 えっと……確か僕は、雷だっけ?

 他の子は火と水で熱湯を作れって言われてたのに、なんで僕だけ雷なんだろう?

 しかも、他の子が魔法を放ってから使えって言われたから、僕だけが一番最後だ。


「フラム、準備は良いか? 俺達が火と水を撃ったら、お前が3つ数えてから雷を討つんだぞ」


「ぶー、ちゃんと覚えているよ。ロイド様の指示だから」


 僕が頬を膨らませながら言うと、お兄さんたちは微妙な笑いをしながら「なら良いんだ」と言っていた。


 敵がだいぶ近づいてきた。

 木のトゲトゲ痛いはずなのに、どんどん前に進んでくる。

 痛くないのかな……?


 僕がそんな事を思っていると、お兄さんたちが火と水の魔法を、敵の頭の上に合体させて落とした。

 火と水を合体させたお湯は、頭の上でボコボコと沸騰しながら敵の頭の上に落ちたのと同時に絶叫が響いてきた。


「あ、あつぃ!」

「ぎゃー!」

「ひぃぃ! 痛いぃぃ!」


 うわぁ、確かに熱いお湯に指ツッコんじゃったら痛いもんね。

 けど、それよりも痛いのをもう一発。


「ありったけの力を込めて……サンダーウォール!」


 僕が空に向かって魔力を込めて叫ぶと、敵の頭の上に数え切れない雷が落ち、た……。

 あ、れ? フラフラする。

 あぁ……これが、先生の言っていた、魔、力……ぎ、れ、か……。


 僕は、ありたっけの力を込めて魔法を撃ったのと同時に、気を失うのだった。


 


帝国軍 第二軍 ベルナンド・ヴィ・ジョルジェ


「ぐぅぅ……、計算違いだったか……」


 帝国軍に入って早20年。

 こんなに頭を抱える様な失敗をした事は、正直数えるほどしかない。

 というか、数えるほどでもわが国では、多いくらいだ。

 お陰で、未だに前線指揮官という役職から離れられないのだが……。

 しかし拙い、非常に拙い。

 敵に魔術師は少ないと考えていたのだが、まさか、正面以外に両側にあれだけの魔術を使える者が居るなんて……。

 これでは、広がった分だけ敵を利してしまうのではないか?

 

「報告します! 敵軍からまたしても魔術攻撃! 両側の端を攻めていた部隊約2千は、壊滅的打撃を受けたとの事です! また、それに伴って後退を乞うています!」


 な……2千!?

 たった2度の攻撃で2千だと!?

 あり得ない……、既に損害3割近くに達してしまっただと?

 こうなると作戦を変えざるを得ないか……。


「作戦は一時中止! 各部隊には、軍を引き上げる様に命令しろ!」


「はっ!」


 私の命令を聞いた伝令兵は、すぐさま各方面に散り、撤退を通達した。

 この戦いで、両側の兵2千のうち、死者8百、重軽症者1千の大きな損害を被ってしまった。


 その日の夜、各部隊の隊長級を集めて作戦会議を開いた。


「今日一日、敵の砦を攻めて感じた事を、全員忌憚なく言ってくれ」


 私がそう言うと、肩幅の広い男が手を挙げて発言した。


「では、城門前の私から……。敵の兵力が少ないという事ですが、今回城門前を攻めてみたところ、敵兵はそれなりに居るのではないか、と考えております」


「ふむ、その理由は?」


「はっ! 理由としましては、矢の飛来数です。敵の撃ってくる矢の量がどの場所もあまり変わらないように中央からは見えました」


 なるほど、確かに矢の飛来する量は、敵兵の多寡の目安になる。

 量が変わらないという事は、敵は魔術師を左右に配置して、真ん中を手薄にした可能性もある……か。


「いや、その意見には少し訂正すべき箇所がある」


 今度は、やや細身の神経質そうな男が訂正意見を出してきた。

 

「私は正面から少し離れた凹地を攻めていたのだが、敵から飛来する矢の量は、そこだけ極端に少なかった、という事は、敵は両端と中央に兵力を固め、凹地を手薄にしているのかもしれん」


 なるほど、それも一理ある。

 凹地は凹んでいる関係で、防御がしやすいと言われている。

 誘い込んで槍を突き出すなり、矢を放っても良い。

 

「なるほど、確かにそうかもしれんが、それが敵の罠である可能性は無いか?」


 今度は、冷たい感じの表情をした男が発言をした。

 確かに、彼の言う様に罠の可能性もある。


「いや、その可能性は低いのではないか? 敵はどうやら素人に毛が生えた程度の者たちらしい。となると、凹地の地理的優位に頼って、兵力を少なく配置している可能性が高いと思うが?」


「だが、絶対ではあるまい。そんな不確定な話に部下を突っ込ませられん」


 さてはて、どうしたものか。

 どちらの意見も尤もというべき部分がある。

 どちらの意見を採用したものか……。

 いや、これはどちらの意見も正しいかもしれないし、間違っているかもしれない。

 罠でない可能性は、低い。

 だが、その罠を食い破るだけの兵力は、こちらにある。

 となると、敵を食い破るには、多少の犠牲を覚悟せねばならないか……。


「諸君の意見は、良く分かった。他に意見が無いのならば、ここは私が預かり、判断して、明日の朝作戦を通達する。それで良いかな?」


 私の問いかけに、それまで激しく議論していた二人も含めて、全員が頷いて満場一致で決定した。

 さぁて、これはどちらを選ぶ方が鬼なのか、蛇なのか。

 どっちも鬼は勘弁してほしい所だな。


三連投無事終了。

次回更新からは、隔日になります。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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