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4-9

 火攻めの後始末は、凄惨な場面の連続だった。

 まずは、遺体。

 壁際の兵達が削ったのだろう、所々指の跡が見えるし、指の跡にはどす黒い物がついていた。

 恐らく爪が剝がれて出血した跡だろう。

 そして、壁が近くに無い場所では、地面の土を必死になって被ったのか、土まみれの遺体も散見された。

 中には少し消火する事ができたのか、所々生焼けの状態の遺体もあったくらいだ。

 

「予想はしてましたが、これはもはや虐殺ですね」


「あぁ……だが、これからやる事はもっと悲惨な事だからな……」


 俺の傍で、バリスとアンドレアの二人が話し合っているのを聞いたが、確かにこれからが最も悲惨だ。

 敵の死体をこれから傷つけ、集め、敵に向かって送るのだから。

 これほど悲惨な事は無い。

 

「兵達の中には、嫌がっている者も居ますがどうしますか?」


「降伏したニュールンベルク王国の兵と、帝国兵を使って分担させよう。帝国兵は、確か10名程度捕まえたよな?」


 アドルフに追いかけられる時に、こちらに降伏してきた帝国兵が少数だが居た。

 彼らは逃げ道を失っていたことと、武器を捨てていた事から捕虜として扱っているが、今回の仕事の一端を彼らに任せようと考えている。


「では、捕虜の帝国兵には耳・鼻削がせて行きます。足りない人手をニュールンベルクの兵に手伝わせると言うことで宜しいですか?」


「あぁ、それからこちらの兵からも少し出して、荷馬車に積む仕事をさせてくれ」


「希望者が出ない可能性がありますが?」


「その場合は、予備兵力として待機していた者たちに、優先的に仕事を振ってくれ」


 俺がそう言うと、彼らはそれぞれに命令を伝達した。

 耳・鼻を削ぐという行為自体は、戦国時代に一般的に行われていた。

 まぁ理由が、戦国時代の場合は戦功で揉めない為だが、俺は相手の兵に恐怖を植え付けるためだ。

 本当なら、どこかの串刺し公よろしく、遺体を全て杭に刺して街道沿いに並べるという方法もあるが……。

 

 いや、止めておこう。

 そんな事をして、後世の作家に吸血鬼にされたくはない。


「首を載せた荷車はどうしますか?」


「そうだな……馬でとも思ったが、捕虜が居るなら彼らに引いて帰らせよう。その方が向うの信ぴょう性が上がるだろう。あと、ついでに立て看板も立てておいてくれ」


 その後、俺は作業をずっと見守っていた。

 途中何度か胃の中の物を吐き出したが、最後まで見守る事ができたのは、素直に自分を褒めてやりたい気分だ。


「後は、敵がこれで厭戦気分になってくれればいいが……」


 手押しで引かれていく荷車を見送りながら、俺は1人そう呟いていた。




帝国軍 第二軍 ベルナンド・ヴィ・ジョルジェ


 帝国軍第一軍が負けたという一報は、元ニュールンベルクとハイデルベルクの国境を越えてすぐの事だった。

 

「な! 第一軍は帝国兵4千の精鋭が居たんだぞ!? なのに負けたというのか?」


「はっ! 逃げてきた兵達によれば、敵は我が軍の兵約3千を生きながら燃やしたとの事です!」


 い、生きながら燃やすだと!?

 壊滅したというだけでも信じられんのに、生きながら燃やされるとはどういうことだ?


「どのようにしてそうなったのか、詳しく聞き出したか?」


「いえ、それが、兵達がかなり怯えておりまして、うわ言の様に言っている言葉から類推しただけでして……」


 う~む。

 敵の砦の図などは、第一軍を任されていたゲイルから送られていたが、一体どこでどうなったのかが分からねば、対策の打ちようがない。

 しかし、ゲイルが敗れるか……。

 彼は少々浅慮な所があるものの、帝国軍の将だ。

 馬鹿では務まらないし、能力自体は他の将に劣るとは思えない。

 

「……となると、余程油断していたのかもしれないな」


 これは、小規模な国と侮ってはならない。

 報告では、悪魔の術を使うとも言っていたからな。

 はぁ、しかし魔術を悪魔の術とか言い出した神には恨み言を言いたい気分だ。

 私個人としては、魔術がどうのとか、悪魔がどうのなんて事は信じていない。

 そりゃ、神は偉大だし、敬っているが。

 魔術が使えれば、どれだけ早くこの侵攻軍が起こせたか……。

 まぁ愚痴っていても始まらない。

 今は目の前の砦攻略を目指すのが最優先だ。


「敵の砦はかなり小規模だ! 気にせず進軍を続けるぞ!」


 それから暫くの間は何もなかったが、数日行軍を続けると、またとんでもない物が向うからやって来た。


「報告します! 前方に友軍の兵らしき者が荷車を引いています!」


「荷車を? よし、その者たちをここに連れてこい」


 私がそう命令すると、伝令の男はやや視線を泳がしてから、付け足す様に報告を続けてきた。


「あの、申し訳ありません。伝え忘れていたのですが、荷車の中身が、その、生首なのです。それも耳と鼻を削ぎ落した……」


 彼はそこまで話すと、その光景を思い出したのか、気持ち悪そうな顔をしていた。

 

 は、鼻と耳を削いだ生首だと?

 敵は一体何なんだ?

 魔物でも、もう少しマシな殺し方をするぞ。


「わかった、私が直接見に行く」


 そう言って、私は自分の馬の腹を蹴って、軍団の先頭に向けて走らせた。


 先頭に近づくにつれ、徐々に肉の焼けた様な、腐ったような何とも言えない匂いがしてきた。

 かなり不快な臭いだったこともあり、途中で馬を走らせるのを躊躇って止めて問いかけた。


「そこにあるのが耳と鼻の無い首達か?」


「…………」


 ん? 問いかけに応える様子が無い。

 私が帝国軍の将であるのは、服装からも分かるはずなのだが。

 いったいどうしたのだろう?


「おい、奴らはさっきからあんな状態なのか?」


 私が近くに居た兵卒に話しかけると、彼は黙って頷いてきた。

 まぁ、話せば嫌でもこの不快な臭いを嗅ぐことになるから、わからないでもないが。

 せめて声に出して欲しいものだ。


「…………ん? 立て札が立っているな。誰かあの札を取ってきてくれ」


 私がそう命令すると、一番前の男が嫌そうな顔をしながら荷馬車に近づいて、立て札を引き抜いて、私に渡してきた。

 軽く礼を言いながら、それを受け取って読み始めて、私は正直声を失ってしまった。

 そこには、こう書かれていた。

 

「仁義なき戦を始める帝国に災いあれ」


「これは、呪いの類か? いや流石に直接的すぎる感じがするが……。とりあえず、見てしまった兵達は、首を埋める穴を作らせ、かん口令を敷くとしよう」


 私は手近にいた兵達に穴を掘らせて埋めさせた。

 この様な惨いことができる敵とは、いったい何なのだろうか?


先日は、投稿を忘れすみませんでした。m(__)m

以後同じことが無いよう気を付けてまいります。

少し頑張って、連日更新します。(3回できたら良いな……)


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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