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4‐4

H28.12.27致命的な人名ミスをしていたので修正しました。

旧ニュールンベルク王国 首都サントス アレハンドロ皇帝

 

 余が敵首都に入って早半年、ようやくニュールンベルク王国のほぼ全土が、手中に入った。

 しかし、まだ地方都市では、抵抗勢力もあるようで、未だに占領できていない土地もある。

 特にハイデルベルク王国へ逃げようとしていた一団の退路は断ったものの、敵は山岳地帯に逃げ込んでから、一歩も出てこようとしない。

 このままでは、後方に敵勢力がある状態で進軍せねばならず、そうなっては兵達が落ち着かなくなる。

 

「陛下、ご報告が」


 余が考え事をしていると、伝令からの報告を携えて一人の男が入ってきた。

 その男は、見た目は優男であるが、体は良く締まっており、無駄な筋肉のない豹や虎の様な体躯の男だ。


「うむ、何があった?」


 余が聞き返すと、男は伝令の報告内容をまとめた紙を手渡してきた。

 その内容を一瞥すると、なるほど、これは面白い情報である。


「して、この男は生きているのだろうな?」


「はっ! しっかりと捕まえ、部屋に軟禁しております。後は陛下のご裁可を待つばかりです」


「その者は、生かしておけ。まぁ精々使い潰してから捨ててやればよい。他に報告は?」


「はっ! 海岸線沿いを航行していた不審船を発見した、との報告がありました。家紋から恐らくは、ニュールンベルク王国の王族かと思われますが、残念ながら撃沈してしまい、誰が乗っていたかは分からないとのことでした」


 ふむ、確かニュールンベルク王には、3人の息子が居たはず。

 第一・第三王子のどちらかは、先の王都攻防戦で死亡が確認されているから、第二王子が濃厚だろう。

 今頃ニュールンベルク王は、バルハラで息子たちと涙の再会かもしれん。


「ふむ、これでニュールンベルク王国はほぼ滅亡したな。王家の関係者は他にはおらぬだろうな?」


「恐らくは、……ですが第一王子が、かなり節操無しに子種を撒いていた様なので、もしかしたら、という事もありますが、いかがいたしますか?」


「……それは、無視してもよかろう。そんなものに一々付き合ってられんし、第一王子の罠かもしれんからな」


「はぁ、かしこまりました。あと、ハイデルベルク王国に放っていた密偵ですが、どうやら国家転覆は失敗したようです。その失敗と共に、1つの国が内部にできたと報告を持ってきました」


「ん? 国家転覆が失敗して独立した国が出来た? どういう意味だ?」


「私もこの報告を持ってきた密偵の言っている意味が、良く分かりませんでしたが、詳しく調べさせると、どうやら別に反乱を起こしていた者が、女王と結託して今回の内戦を制したようで、その報奨として独立を認めたようです」


 ふむ、密偵の方がダメで、全く知らぬところで起こった独立が認められたと。

 全くもって、皮肉なものだ。


「で、その独立した国の事は調べたのか?」


「はっ! 潜入して調べさせたのですが、この国恐ろしく農業技術が発達しておりまして、先の飢饉の折にも誰一人飢え死にをしていないどころか、元々所属していた男爵領内の収穫量とほぼ互角の量を収穫していたそうです」


 そういって差し出された地図を見て、余は驚愕した。

 何せ、かなり小さい村なのだ。

 そんな村から、貴族領と同等の量の収穫が得られるとなると、かなりの技術を持っていることになる。


「おい、その国をどうにか手にする事はできんか?」


「一応密偵は放っておりますが、どうやら最近になって門を閉ざし始めた様なのです。その為、これ以上の情報を得るのは時間がかかるかと……」


 ふむ、革新的な農業技術を持った国か、まぁ今のところは放っておいても問題あるまい。

 いや、むしろこちらに靡かせて、後ほど圧迫して攻略する方が楽か……。

 こちらの要求を飲めば、後回しに、拒否すれば、先に滅ぼして技術を奪える。


「よし、ではその国に使者を送れ。内容は、『こちらの行軍を見過ごせ、さすればお前たちの国を見逃してやろう』で十分だ」


「……なるほど、それならどちらにしても口実を得られますな。畏まりました、すぐさま使者を送ります」


 そう言うと、彼は一礼して部屋から出て行った。

 余はそれを見送ると、窓から街を見下ろすのだった。




独立国 ロイド


 そろそろ、国の名前を考えなければならない。

 そうでないと、市民が言っている「ロイド国」なんて名前になってしまいかねない。

 そんな名前の国作られたら、俺が恥ずかしくて生きていけない!


「コーナー、案はできたか?」


「いくつかの案を考えましたので、ご覧ください」


 彼が差し出した板には、いくつか名前が書いてあった。

 「ウィンザー国」「ファーマーズ国」などだ。


「……流石にウィンザーはどうなんだ?」


「一応どの国も国主の苗字が国名になっていますので……」


「あぁ~、確かにそれはそうなんだが、もうちょっと何かないのか?」


 そこに書かれているのは、ロイド国などとあまり変わらない内容だった。

 まぁ「ファーマーズ国」というのは、確かにこの国の現状を良く表している。

 なんせ、国民の大半がというか、ほぼ全員が農民なのだ。

 農民の国でも良い気がしてきた。


「私としては、ウィンザー国の方が、内外に誰の国かというのがアピールできるので、宜しいかと思うのですが。もし良ければ、会議にかけますか?」


「……そうだな、それが一番無難かもしれん。会議の案件に挙げておいてくれ」


「わかりました」


 コーナーがそう言って、机に向かって仕事を始めると、自警団の団員が1人の人物を連れて家に来た。


「ロイドさん、帝国からの使者と言っている者が来たのですが、どうしましょう?」


 うん、家の前まで連れてきてから、どうしましょうと言われても困るぞ。

 

「あ、あぁ~、入ってもらってくれ」


 俺がそう言うと、赤い髪の男が1人入ってきて、俺に一礼もせずに立ったまま、話し始めた。


「私は、ヴァルトブルグ帝国軍幕僚、ゲイル・フォン・エディンバラである。貴国に対して我らが皇帝アレハンドロ・フォン・ヴァルトブルグ陛下よりのお言葉を伝える。心して聞け」


 随分と上からな物言いだな。

 まぁ確かに俺たちの国は小さいし、帝国に比べたら米粒以下だろうが、だからって礼儀すら無しとは、あまりにも馬鹿にしている。


「我が帝国は、貴国に対して害意は無い。よって、この先ハイデルベルク王国との間でいかなる争いが起ころうと、貴国は中立の立場を保たれよ。さすれば、我が国は、貴国に対して寛大な処置を与えよう」


 ん? この言い草だと、ハイデルベルク王国の後はお前らだぞと、遠回しに宣戦布告しているよな?

 というか、中立だろうが、そうでなかろうが、帝国の領地にされる事が既に決定されているのは、面白くない。


「寛大な処置とおっしゃるが、いかなる処置で?」


「それについては、言伝を預かっては居らぬので、貴殿が知る必要はない事である」


「それでは話になりません。そちらが傍観を決めろと言うのであれば、条件を明文化し、こちらに対して提示するのが筋というもの。帝国とはそのような国際的な決まりも守れぬ蛮族の国ではありますまい?」


 俺がそう言うと、先程まで冷徹な目と無表情だった男の顔に、初めて感情と熱が見えた。


「それは、我が帝国を疑うと言うのか?」


「疑うも何も、そちらはニュールンベルク王国に対して難癖をつけて、宣戦布告をし占領している。そのような餓狼の国になんの言質も取らずに約束するなど、どう考えても正気の沙汰とは言えないな」


「では、皇帝陛下には不首尾に終わったとお伝えするが、宜しいな?」


 彼はそう言ってこちらを睨みつけてきたが、俺としてもこいつらの言いなりになりたいとは思えないので、睨みながら言い返してやった。


「あぁ、その通りだ。後、もし今度使者を寄越すなら、礼儀の分かる奴をと付け足しておいて欲しいものだ」


「……ちっ! 後で後悔されても知りませんぞ」


 男はそう言うと、国から出て行った。

 彼の後姿を見送っていると、後ろからコーナーが声をかけてきた。


「宜しかったのですか? ここは中立を宣言しても、間違いでは無かったように思うのですが?……」


「コーナー、それは違うよ。彼らは口約束なんて守らない。彼らは必ずハイデルベルク王国を滅ぼしたら俺たちの国に向かってくる。そうなってからでは太刀打ちができないんだ。今は、帝国をハイデルベルク王国と一緒に防ぐこと、これが大事だ」


 そう、帝国とは戦う以外に道が無いのだ。


次回、次々回の更新が少し怪しいです。

というか、次々回については、現状ほぼ不可能なので、お休みを頂くと思います。

また状況が確定しましたら、割烹もしくは、ツイッターで報告させて頂きます。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] この世界にも豹や虎がいるみたいですね。人間や、牛、馬がいるんだから、当たり前と言えば当たり前ですね。
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