表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/134

4‐2

ついに、あれ登場です。

 ワルター達が着て次の日には、俺はエリシアに手紙を送った。

 現状の俺達の関係は、簡単に表すなら日米同盟と言ったところだ。

 経済と言う名の農業技術支援を行う代わりに、武力で守ってもらう関係なので、街で起こった事は、できる限り教えて行く予定だ。

 

「まぁ、一番大事な武器技術の共有はしない予定ですけどね」


 横で手紙を持ってきたコーナーが俺の呟きに返してきた。


「あれは、扱いが難しいし、何よりも硝石の取り方が分からなければ、どうしようにもない代物だからな」


「確かに、まさか人の死体と糞と尿で出来ているなんて、思いもよりませんからね……」


「で、エリシア女王からの返事はなんときた?」


 話を区切って、手紙の事を聞くと、コーナーは渋い顔をして手紙を渡してきた。


「当面の間は、彼をこちらに留めておいて欲しいそうです。何せ内戦後すぐで、かなり混乱している様で、今すぐ迎えに行ける状態ではないとの事です」


「まぁ、そうだよな……。はぁ、あれの面倒をまだ見続けなければならないのか……」


 ワルターは、基本的に嫌な奴と言う印象はない。

 むしろ、王族としてはかなり気さくな部類の人だろう。

 彼は農民だろうと、流民だろうと、乞食だろうと分け隔てなく接している。

 そして、それと同じように、分け隔てなく美人を口説いている。

 もちろんそこには、人妻だろうが、未亡人だろうが、未婚だろうが関係ない。

 一応彼の中で線引きとしては、15歳以下の未成年と40代以上と思われる女性には手を出そうとしていない。

 

 まぁ幼女や少女まで彼の守備範囲に入っていたら、迷わず街から叩き出していただろう。


「しかも連れていた女性たちが、全員どこかしらで拾ってきた娘達だろ? 逃亡中に良くもまぁ助けたもんだよ」


「ですが、良い様に見ればそれだけ民への愛情も深い方なのでは? その証拠にあれだけ破天荒な振る舞いをしているのに家臣に見限られていませんし、街の住人にも受け入れられつつありますよ」


「まぁ、一部既婚者の男などからは、非難されているけどな……」


「それは、まぁ……仕方ないのでは?」


 俺はため息を思いっきり吐いてから、コーナーに今後の事を指示した。

 まずは、王子様にこの手紙の事をぼかして伝えないと。




 コーナーが出て行ってから1時間ほどして、ワルターはやって来た。


「我が友よ! 女王から手紙が来たと聞いたが、私はいつ王都へといける?」


「残念だが、王都行きは暫く無理だそうだ。もちろん、その間はこの街で過ごしてもらう事になるが、現状何か不都合はあるか?」


 彼の中では王都行きが決定していたのか、心底意外そうな顔をしてから俺の方を見てきた。


「今のところは、無い。強いて言うなら家臣とは別の家をもう一軒欲しいくらいだな。あれではあいつらに遠慮して女性を連れ込まねばならない」


 うん、何言ってるんだ、こいつ?

 どっちにしても連れ込むんだったら一緒だろうに。


「それについては、申し訳ないが却下だ。この街は拡張を続けていると言っても、まだまだ狭い。そこに二軒も家を君に与えては、流民たちから文句が出てしまうから、申し訳ないがそこは我慢してくれ」


 主に家臣の人たちに言ってあげたいが。


「ん? 何か言ったか?」


「いや、何にも。それ以外には何かあるか?」


「ん~。現状そんな所だな」


「なら、何かあったら教えてくれ。あ~あと、人妻には手を出すなよ。既婚男性からかなり文句が来ている。あまりトラブルを抱えるようなら、迎えが来る前に追い出すからな」


「……うっ! 追い出されるのは、困るな。分かった控えるとしよう」


 まぁ、この言葉が何日持つか、だな。

 彼はどうもお頭がひよこちゃんみたいで、3歩とは言わないが、三日経てば忘れている事がある。

 その点を心配しても仕方が無いので、後で爺やにでも告げ口しておこう。

 

 どうやら彼には、ワルターも頭が上がらないらしいので、丁度良いストッパーだ。




 硝石丘だが、最初に死体などを混ぜ合わせてから、約2年が経過した。

 それを考えると、時間が経つのは、早い。


 帝国が攻めてくる可能性があるのは、早くて今度の秋。

 今が晩春くらいなので、後3~5か月程度しか時間は残されていない。


 硝石丘の状況は、どうにか硝石を取れるようになってきた、と言ったところだ。

 まだまだ産出量は少ないが、その辺は今後の課題だろう。

 

 ただ、この硝石が取れるようになったことで、1つの物が完成した。

 そう、火薬である。

 

 火薬の作り方は、木炭と硫黄と硝石を混ぜるだけだ。

 ただし、混ぜる時は、細心の注意をして、ゆっくり混ぜなければ……ドカン! だ。


 火薬の材料のうち、硫黄は、スフォルツァ商会経由で輸入している。

 硫黄自体の使い道が限られている事もあって、かなり安い値段での取引となった。

 

 そして、木炭だが、完全に炭化させたものだと黒色火薬になる。

 だが、今回俺が作るのは、褐色火薬である。

 これは、木炭を完全に炭化させず、半分くらいの燃焼で止めて使う。

 ライフリングをした銃の気密性などの関係で、燃焼速度の遅い火薬が必要になった時に開発されたものだ。

 

 もちろん褐色火薬だけでなく、黒色火薬も作るが、今製造している銃身は、全てライフリングしてあるので、褐色火薬を先に製造する。


「できる事なら、これを使わずに終われると良いんだけどな……」


 俺が呟きながら銃を覗き込むと、視線の先にアンドレアの目があった。

 

「…………。アンドレア、気持ち悪いからそういう登場の仕方は止めてくれ」


「いえ、たまたまロイドさんを見かけましたので、覗き込んでみました」


 全くもって悪びれないな、こいつ。


「で、何か用か?」


 俺が銃を下げながら話しかけると、彼はニッコリと笑いながら、銃を指さしてきた。


「これはなんですか? 私はこのようなもの知りません。教えてください。教えてくれるまで、離れませんよ」


 あぁ~、色んな意味で気持ち悪いスイッチが入ってしまったみたいだ。

 こうなったら、アンドレアが止まらないのを知っている俺は、仕方なく話し始めた。


「これは、銃といって、この先っぽの穴に火薬と弾を込めて、火縄で点火して、爆発させて弾をはじき出す」


「爆、発? それはまたかなり(本人が)危なそうな武器ですね」


「そりゃ危ないさ、下手を打てば、(敵が)死ぬ」


 俺の言葉を聞いたアンドレアは、かなり驚いたのか、声を失っていた。

 少しして、彼は俺の事を軽蔑する様な目で見ながら非難してきた。


「……。私は、ロイドさんは街の人たちが好きだと思っていましたが、勘違いだったようですね……」


「え? 街の人たちは好きだぞ? ちょっとまて、アンドレア。なにを勘違いしている?」


「何をって、ロイドさん。あなたはこれで街の人たちを爆発に巻き込むのでしょう?」


 なるほど、彼は爆発がかなり大規模なものだと思っていたらしい。

 俺は、それを聞いた一瞬は唖然としたが、気を取り直してもう一度説明をした。


「アンドレア、それは勘違いだ。爆発するのは、筒の中だけだ。その爆発の力で、この鉛玉を真直ぐに飛ばすんだ」

 

「え? これで鉛玉を出すのですか?」


 俺の説明にやっと理解が追いついたのか、彼は意外そうな表情で見てきた。


「こんな筒で本当にできるのですか?」


「それについては、大丈夫だ。まぁ見ていろ」


 俺はそう言うと、銃身に火薬を入れ、奥まで詰めてから、弾を入れて、構えた。

 銃床を肩に付け、頬を寝かせ、左目を閉じて引き金に指をかけ、引く。

 

 次の瞬間、轟音と共に、約30メートル離れた的の端っこを掠って、後ろの藁山に弾は突っ込んで行った。


「な、なんという……。とんでもない轟音ですね」


「まぁ、それが銃の強みだからな。この音と弾で敵を脅かし、敵を殺し、敵を混乱させる」


 そう、銃とはその音による迫力と、無慈悲な死によって、敵を壊乱させ、軍事行動を辞めさせるという効果がある。


 確かに効果は絶大なのだが、俺自身は、本当にこれで良かったのか、今になって不安になってくるのだった。


年末年始の活動予定を、昨日の活動報告にて上げさせていただきました。

年末は、執筆時間が取れるか微妙ですので、隔日でこれまで上げていましたが、年越しまでは、不定期とさせて頂きます。

なお、年始は、1月2日から更新を再開し、隔日で更新できるようにしていきますので、よろしくお願いします。


では、今後も日本式城郭をよろしくお願いします。m(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ