3-27
本日は、短めです。
王都から帰還した俺は、街の開発状況の視察に追われていた。
特に、城の石垣部分については、ほぼでき上がっており、後は上に建物を建てるだけという状況だった。
石垣の積み方は、算木積みで角を出し、交互に積み重ね、約10段となっている。
石の間には、土と砂利を敷き固め、溝を掘って排水性を良くしてある。
これは、後世の城主たちが、石垣の修理をあまりしなくても良い様にする為の工夫だ。
これによって、石垣は耐震性、耐久性、排水性が格段に上がっている。
また、街の方だが、俺の留守中にも流民が流れ込んでいて、現在の住民は1500人に迫る勢いだ。
そのお陰なのか、街はかなり活気づいている。
元々村の在った辺りを中心として、主要街道に向かって一直線に田畑と家が建ち並んでいる。
そして、それだけでは足りなくなってきたのか、街は水路沿いにも広がりをみせ始め、少しずつ森を切り崩している状態だ。
その為、街道沿いの堀は、ジグザグに延長を始め、ライン川の近くまで来ている。
このジグザグは、こちらの計画には無かったもので、掘り始めたら一直線に進めなくてジグザグになったらしい。
まぁ防衛施設としては、ジグザグの方が敵を誘い込んで倒しやすいので、少し手を加えて凹凸になる様に整備しなおしている。
さて、俺がなぜ、これほどまでに熱心に開発経過を視察しているかと言うとだな。
俺が連れ帰ってきた孤児「メリア」と「マリー」の関係があまりよろしくなく、逃げているのだ。
メリアはまだ、6歳程度の女の子なので、俺の背中や肩によじ登っては遊んでいる。
そして、それに対して何故かマリーが嫉妬しているのだ。
特に、メリアが俺にくっついている時に、マリーに何かちょっかいをかけている様で、くっつく度にマリーが怒っている。
昨日なんかは、メリアが俺にくっついて、マリーに笑っただけで、マリーが怒っていた。
正直、俺には何の事だか全く分からないし、どうやって対処したら良いのかもわからず、戸惑うばかりの日々だ。
ちなみに、他の孤児たちは今の所、エリシアが建てた家で、集団生活をしてもらっている。
管理人はゴードンと近所のおば様、お婆様方だ。
ゴードンは農地を流民に託して、官僚になる事が決定している。
その為、今現在手空きで子ども達に勉強を教えられるのは、ゴードンだけなので、彼に生活習慣から指導する様にお願いしている。
近所のおば様、お婆様は、子ども達に炊事・洗濯・掃除の3つの仕事を指導してもらう為に来ている。
もちろん最初から上手く行くはずもなく、俺が居なくなった途端、言うことを聞かないと文句を言っていたので、次の日から俺からの罰を設ける事にした。
それから、2日間。
今の所問題は出てないので、後は彼らの努力と教えられたことをどれだけ覚えられるかだろう。
ちなみに、10歳を越えた男の子たちは、午前中勉強、午後から家事学習、夕方から武術訓練とハードな毎日を過ごしている。
彼らは、将来の自警団の団員候補になるので、しっかりと腕を磨いてもらいたい。
エリシアからは、石碑が送られてきた。
そこまで大きいものでは無いので、すぐに作らせていたのだろう。
俺が街に帰った次の日には、運ばれてきたのだから、相当急がせたのだろう。
石碑は、現在孤児たちが暮らしている屋敷の庭に建てられている。
彼らは、その石碑だけは何があっても、毎日花を替え、手を合わせて拝んでいる。
この手を合わせて拝む動作は、俺が無意識にやったのを真似ているので、宗教的な意味は多分理解していない。
そのエリシアだが、石碑と一緒に手紙が来ていた。
まぁ主な内容は、今後の技術者派遣日程など業務連絡だが、最後に一文、こう書かれていた。
「私、エリシア・ハイデルベルクは、王国と添い遂げるつもりである」
まぁ、あれだな、俺は振られたという事だろう。
そして、裏書にはこうも書かれていた。
「王となる前に、人を好きになるという事、恋愛というものを体験でき、また同年代の子と親しく話せたことを嬉しく思う」
だそうだ。
多分だが、彼女は自分が選んだ人と結婚できないと分かっていたのだろう。
女王となれば、国家の為に結婚し、国家の為に子を成し、国家の為に死ぬ。
そういう覚悟があり、その覚悟を決める前の一時を楽しみたかったのかもしれない。
「それにしても、あのやり取りを親しく話せたと言うか。流石は王女、いや女王様だな……」
俺がそんな事を思い出しながら、堀を視察していると、遠くからボロボロになった一団が近づいてくるのが見えた。
彼らが、今後、俺たちの街に災厄を持ってくるとは、この時は知る由も無かった。
これにて、第三部終了です。
次回から第4部のスタートです。
ですが、第4部の章の題名が決まってないので、もしかしたら名無しでスタートかもしれません(^^;)
今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m




