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H28.10.9大根の表記を蕪に変更それに伴い文章を一部改稿

 堀づくりと並行して行っていたのが、村の出入り口である門の修理だ。

 これは村の大工を中心に作り直しをお願いしている。

 

「何とも痛々しいデザインだな」

 

 これは村唯一の大工であるバリーの言葉だが、確かに的を射ている。

 なぜなら、今のままでは恐らく打ち破られる可能性があるので、門には刃物を飛び出させ、容易に登れない様にしてもらっているからだ。

 

「敵に登って打ち破られるよりはるかにマシさ。後、門の裏には開かない様にこんな形で三角のストッパーを……」

 

 本来なら閂は門が開かないようにするものだが、今のままだと、魔物の勢いと重さで壊されてしまう可能性がある。

 なので、門の裏に可動式のストッパーを付けてもらい、閂と併用することで、後ろに倒れにくくする工夫をしてもらう事にした。

 

「なるほど、こんな門は見た事ねぇが、確かにこれなら打ち破られる事は少ないな」

 

「あぁ、だが過信は禁物だから出来る限りここに近づけない、近づかれても敵を一掃できる手段を作らなければならない」

 

「まぁ、その辺は村長であるロイドに任せる。儂はこの門の完成に全力を注ぐさ」

 

 防衛強化の方針を告げた俺は、次の作業を見て回った。

 

 俺が次に見に行ったのは、保存食作りのチームだ。

 このチームは力の無い老婆やそこそこ歳のいった主婦が中心となって活動している。

 

「おぉ~村長。これを見ておくれ、こんな感じで良いのかの?」

 

 一人の老婆が俺を呼び止めて瓶をみせてきた。

 

「うん、そんな感じで綺麗にしておいてくれたら良いですよ。後は塩をかき集めておいてください」

 

「それはもう少し足の動くのが、行ってくれてるから大丈夫じゃろ、どれくらいの塩が要るんじゃ?」

 

「そうですね。無事な野菜の量にもよりますが、恐らく村中の塩の殆どが必要でしょう」

 

 この村は近くに大規模な岩塩の採掘所があるらしく、行商の行き来が多かったので、内陸部にありながら塩にだけはあまり困る事が無かった。

 そしてその岩塩は、この村の近くからも少量だが採掘できる事が最近分かり、村でも塩を少しだけだが作っていたので、各家庭に大量の塩が置いてあると聞いたのだ。

 そこで、俺はこの塩を大量に使って漬物を作る事にした。

 漬物は塩分濃度が高ければ高い程腐りにくく保存がきく。

 また、蕪についても薄切りにして塩をしっかりと振りかけて壺に入れておけば調味料が少し少ないが千枚漬けモドキの出来上がりだ。。

 

「そんなに大量の塩が要るのかい?こりゃ失敗したらただではすまんの」

 

 そんな事を言いながらも老婆の顔は笑っていた。

 それはまるで、秘密を教えてもらった子どもの様な笑顔だった。

 

「……しかし、腕が鳴るわい。齢60越えて初めての事がこんなに起こるとは、長生きはしてみるもんじゃて」

 

「ははは、それじゃ、保存食作り頼みましたよ。」


 俺はそう言うと、保存食作りの横で作業している武器作りのチームを視察した。

 

 ここは、若い女性が中心になってライズに教えてもらいながら作っていた。

 

「あ、ロイド~」

 

 武器作りチームに入っているマリーが俺を見つけて声をかけてきた。

 彼女が手に持っているのは、槍だ。

 ただ、槍と言っても穂先は刃物ではなく細く尖らせた木だ。

 

「見て見て、こんな感じで良いのかな?」

 

 そう言って彼女は持っている槍の穂先を見える様に持ってきた。

 見た感じ彼女自身は一昨日の事を引きずっている様子は無かったので、まずは一安心してよいだろう。

 

 そんな事を考えながら彼女の作った穂先をチェックし、特に問題が無かったので大丈夫だと伝えると、ほっと一安心したのか、笑顔がみられた。

 

「武器作りチームは、今回の中でもかなり重要だから頑張って作ってくださいね。特に槍と弓矢はこちらにとっての一番の武器ですから、大量に作ってください」

 

 俺が全員に声をかけると、彼女らは黙って頷いてから作業に集中しだした。

 

「ライズもすまないがよろしく頼む、後できたらなんだが、手を空けられる様なら近くで鳥を狩って、食料を増やしてもらって良いか?」

 

「そんなに食料は足りないのですか?」

 

「正直言って厳しいと思う。奴ら散々奪っていきやがったからな。特に麦の備蓄の大半が無くなっているのは痛かった。お陰で今年の税は払えるが、かなり困窮する可能性が高い」

 

「わかりました。この調子なら明日にも手は空くと思うので、鳥等を狙って食料を取って来ましょう」


「あぁ、頼んだぞ」

 

 俺はそう言って最後の視察場所に向かった。

 それは応援要請をする村民の激励だ。

 

「ゴードン、すまないが援軍要請頼んだぞ」

 

「えぇ任せておいてください。絶対に援軍を連れてきますから」

 

 彼はこの村で俺とベクターさんを除いて、唯一字の読み書きができる村民なのだ。

 なので、援軍要請を決定した時点で、彼が派遣される事はほぼ決定していたと言って良い。


 こうして俺は視察をしながら、準備を整え1週間余りが経過した頃、奴らが動き出したという知らせが届いた。


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